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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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緑色のもの

 その日はクタクタになったときにメールが届いた。奇妙な話ではあるのだが、それを読んだ後、眠気が急にやって来て、意識が落ちたと思ってから気が付くとPCからメールが消えていた。記憶に基づいて書いてみよう。


 俺がまだ上京していない頃、深夜に勉強をするでもなくマンガを読んでいた。そんな時、窓の方から光が見えた。気にするでもなくマンガを読み続けて、読み終わって本棚に戻すとき、ふと気が付いた。その窓の向こうは隣の家に面している。


 お隣は結構夜早いうちに寝てしまうのか、こんな時間まで明かりが点いているのは珍しい。間に道路は無いので車の光でも無い。


 奇妙な感じがしたのでそろりと窓に近寄ると、音を立てないようにカーテンを開けた。するとその先にあったのは隣の家の窓から出ている明かりだった。


 それだけであればお隣が起きているだけとなるのだが、どうにもおかしいのは向かいの窓のカーテン越しに見える光が緑色だった。部屋のカーテンにさえぎられているときはただの光だと思ったのだが、カーテンを開けて直接隣の窓を見ると光りに色が付いている。


 コレは一体なんなんだ? 疑問は絶えないのだが、そのまま光が明滅を続けてから次第に弱くなっていき、完全に消えた。


 暗くなったお隣の窓を呆然としてみながらも、なんとなく本能が関わるべきでは無いと告げていた。


 そのままベッドに倒れ込むと寝てしまうことにした。隣の窓から変な光が見えたからなんだというのか? 誰かに何かがあったわけでも無いのだから忘れて寝ればいい、そのシンプルな結論に至って目を閉じた。


 翌朝のこと、朝起きてからカバンに荷物をまとめ、学校に向かった。その時お隣さんに挨拶をされた。さわやかに『おはようございます』と言ったので、ついそのまま挨拶を返して登校していたのだが、ふと気が付いた。


 お隣さんは姿こそ間違いなくいつもの人なのだが、ガラが悪いので有名な人だったので、朝に自分から挨拶をしてくるような人ではない。いったい何があったんだ?


 奇妙には思うのだが、まさかお隣に昨日の光派なんで素かなんて聞けるはずもなく、学校での授業を終えて帰宅した。その日からお隣さんは変った、こまめな挨拶どころか、行事や町内会への参加、その他諸々の社会的活動に参加するようになった。


 今まではいつも無視していたのに何でと奇妙に思う人も居たが、悪い方向に変ったわけではないので気にしないことにした。


 それから高校を卒業してさっさと東京に出てくるまでお隣さんは評価をぐんぐんと上げていった。だが、その代わり自分が気づいたものの、口にしなかったこともある。


 自分が観察していた限りでは、隣人の夫婦は一度たりとも食べ物を口にしていない。祭に参加して弁当が出ても、彼らは必ず持ち帰っていたし、行事の時に出る食事も決して口にしていなかった。


 もしかすると偶然見かけなかっただけかもしれないが、年単位で隣人をしていてそんなことがあるのだろうか? 偶然だとは思いたいのだが、あの夜隣の窓から見えた緑色の光と、光合成という言葉がくっつきそうになる事がある。


 結論も何も無い話だったが、記憶の限りこんなことが書かれていた。これが自分の夢が生み出したメールなのかはもう分からないことである。

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