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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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夫の実家と義母の想い

 その日は前日にメールをチェックしていなかったので結構な数が貯まっていた。早く消化しようと返事が必要な物は片っ端から書いて、返答不要となっているモノを後から読み返した。


 その中の一つに、『こんな事があるんですね』と書かれていたモノがあった。


 私が田舎に引っ越したのは結婚を機にでした。夫が両親と同居して欲しいと熱心に言うので仕方なく私が折れて引っ越すことにしました。夫は『親が生きてるうちは親孝行したいんだ』と言っていました。


 私は就職してすぐ両親を亡くしていたのでその発言にカチンと来たのと同時に、夫も親孝行をしないまま親が亡くなったら後悔するかもしれないなと思い、同居を決めました。


 始めはとても気が進まなかったんですが、義両親ともに私たちによくしてくれていました。夫だけではなく、私も結構に良い扱いを受けたんですよね。意外ではあったんですけど、それは悪いことではないのでなかなかに住みよい場所となっていきました。


 ただ、夫の兄妹が事業に失敗して田舎に帰ってくるから申し訳ないのだが出て行って欲しい、引っ越し費用は出すから。と言うわけであっけなく私と夫の田舎での生活は終わりました。幸い就職先はすぐに見つかったので都市部に出て生活はすぐに軌道に乗りました。


 それだけであれば嬉しい話なんですが、マンションの部屋で寝ていると、夜中にシクシクという声で目が覚めるんです。目を開けると立っている義母が居ました。『お母さん!?』と声を出したのですが、その声に驚いた夫が目を覚まして『どうした?』と気の抜けた声を出す頃にはお母さんの声は消えていました。


 アレはなんだったのだろうと思いつつも何事もなく日々は過ぎていきました。ただ、お正月に夫の実家に帰省をしようとすると『なんか嫁の実家にも顔を出してのんびりしてきなさい』と夫は言われたらしく、私の実家に帰省することになりました。


 仲違いをして居たわけでもないのに随分と冷たいなあと思っていたんですが、しばらく経ってのことです、夫の兄が実家で暴行を起こして逮捕されたのだそうです。どうやら、事業が上手くいかなかったことからいつもイライラしており、私には心配させないように実家に来させなかったようです。


 結局、実家は別居となって夫が帰ろうかとは言ったようですが、『もう同居はいいよ』と言われてしまったそうです。


 ただ、時々ですが帰るのが遅くなった日に、今日は食材を何も買ってなかったなと思っていたら、冷蔵庫にビニール袋に入った食材が揃っていました。そのスーパーの袋なんですが、夫の実家付近にしかないローカルスーパーなんですよね。


 合鍵なんて渡していないわけで、どうしてそんなものが入っているのかは分かりませんが、義両親も元気なので追求する気は無いんです。ただ、乱暴を働いていた息子と別居になったときに、喜んでいる電話がかかってきたのですが、夫によると『お袋は電話なんてしてないっていってるぞ?』と言っていました。何処までが本当なのかは分かりませんが、私たち家族は平和に暮らしています

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