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怪談集「暗中」  作者: にとろ


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子供が元気になった訳

 その日、眠い目を擦りながらPCに向かって文章を書いていたときだ。いつも通りにメッセージが届いたのかと、眠い目無理矢理開けつつメーラーを開くと住んでいるところで奇妙なことが起きているという話が書かれていた。テキストファイルの添付でもなく本文に直接書かれているので、慣れない人なのかと思った。


 内容は大体以下のようになる。


 息子が生まれ、私立の学校に通わせていたのだが、元々体が弱く、クラスメイトとの折り合いも悪かったのだと妻から就学していくらか経ってから聞いた。


 明らかに悪いのは息子に手を出すクラスメイトだとは思った。だが、そのクラスメイトをどうにかしたところで、息子の体が弱いのをどうにかすることは出来ない。結局いずれ同じ事が起きるのでは無いかと悩んでいたところ、妻が恐る恐ると言った風に、実家の近くに土地と家を用意するので住まないかと申し出が来たと言う。


 始めは夫に悪いからと断っていたのだが、息子のためだからとしきりに両親が言うのだそうだ。息子のトラブルは伝えていないはずなのにどうして知っているのか疑問に思い、聞いてみると、ウチの家系はそう言ったことが分かるのだと言う。そして引っ越せば息子のためにも良いというので私に相談して決めると言っていたらしい。


 悩みはしたのだが、息子が泣きそうな顔で帰ってくるのを見たときに、『引っ越そう』と決めた。本当に解決するのかは分からないが、藁をも掴む気持ちでその提案に乗った。


 本当に一円も出さなくていいから引っ越してくれと言われたと妻が言っていたのだが、まさか本当に一切負担無しで引っ越させてくれるとは思っていなかった。


 そうして都心から随分田舎の公立小学校に息子は転校し、私は転職をして田舎なりに暮らせる程度の収入を得るようになった。


 それから、程なくして義両親が息子を連れて『遊びに連れて行ってくる』と言い、休日に息子を連れてどこかへ行っていた。


 その日から、息子はすっかり体力を付け元気に生活するようになった。体もひ弱だったのががっしりした体型になり、まるでトレーニングをしたような健康的な子供になった。


 不思議に思っていたので、妻に息子の代わりようについて聞くと、『お母さんが石神さんにお願いに行った』という。石上とは誰かと聞くと、『人の名前じゃないの、石の神様なの』という。


 神話にあるように、石のように丈夫な体を授けてくれる神様なのだそうだが、その事は地元に住んでいる人しか知らないのだという。そしてその代償として地域での行事などに参加して徳を積まなければならないのだと申し訳なさそうに言ってきた。


 だが、実際に息子はすっかり体がよくなったようなので、自分が行事に参加することくらいどうということはなかった。


 そうして息子もすっかり元気な立派な子供になったので夫婦揃って人心地ついたのだが、石神さんというのが一体なんなのか分からないことだけが不安だと書いてあった。


 その手の伝承は多いのだが、彼が嘘をついているとも思えないし、実際今不都合はないのでそれでいいとは思う。


 一つ気になるのはわざわざ住所まで書いてあったのにそこについて調べても『石神さん』の伝承を一切見つけられなかったことだ。どうやら本当に地元で市から知られていない信仰の対象なのだろう。


 一応困っていることではないそうなので、それでいいんじゃないでしょうかとしか回答することが出来なかった。

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