一章三十三話 『獣人達の入植』
どうも最近冷え込みが酷いですね。冬はこたつむりになりたいパル猫です!
アルビオンの砦が米粒にしか見えない、大分高い所に転移してしまったようだ。
「ひうっ…ふぇっ…」
隣で一緒に落ちているフィーネはもう叫ぶのをやめて泣きながら落ちている。本当に泣き虫なんだなこの姫さん。
地面が段々大きくなっていき近付いてくる。
「そろそろかな?」
そう呟いてフィーネの手を取る、そして魔法名を口にする。
―重力操作―
ゆっくりになっていく速度の中でフィーネをお姫様抱っこで抱く。
「ふぇ…?あ、あぅ…」
現状が理解出来ずに幼児退行をしてしまったのか?魔法は理解が出来る範疇に入るはずなんですがね?
空中に魔力障壁を張ってそれを足場にして降りていく。これも簡易的な浮遊魔法の一部であるはずなんだが。
「え?空を歩いてる!?」
こういう反応を見る限り一万という時の流れで衰退してしまった魔法はいくつかあるようだ。なんてことを考えながら降りていくとすぐに地面に着く。
そこにはヴァレニシア帝国から強制転移で来た獣人達1000人がいた。
「改めて名乗ろう私はファルネシウス王国のルーク=レイン=アルビオン公爵だ。君たちのリーダーと話がしたいのだが。」
そういうと狐耳をもつ優男が一歩前に出る。狐耳?リーリアの知り合いかな?
「私は元ヴァレニシア帝国で防衛大臣の役を承っていたセルジオ=ディルファインと申します。」
そうか貴族だったのか通りで着ている服も少し良いものを着ていたのか。
「率直に話すと君たちはこのアルビオンで領民として暮らしてもらう。」
その一言に獣人達からは歓声が上がる。そりゃあ敗国奴隷としてその一人一人に課せられた金額を働いて返すまで奴隷として生きていかなければならなかったのを一領民として受け入れると言っているのだそれは夢のような話だろう。
「し、しかし良いのでしょうか?仮にも私共はヴァレニシア帝国の国民であり敗北した身であります。」
「他の国から来た者には敗国奴隷として見られるかもしれないが君たちが堂々としていれば何か言ってきたりしないだろう。それでも言って来る者がいるのならば私が仲裁に入ろう。」
まずは身の保証をすることが大切だ。
「そして見てもらうと分かる通りアルビオンはまだ開拓の段階だ君たちにはここでこのアルビオンの開拓を手伝ってもらいたい。ちゃんと働いてくれるのなら君たちの衣食住は責任を持って私がみよう。」
そして安全な衣食住の提供。流石に外でテントでも張って過ごせとか鬼のようなことは言わない。流石にそこまで鬼じゃない。
「え、えっと…私は…」
そう怯えながら発言したのはフィーネだ。
「こ、公爵様…恐れながらフィーネ様は私達獣人が奴隷に落とされると宣言された後も我々強制奴隷の解放を手引きしてもらうなど助けてもらいましたっ!何卒フィーネ様に恩赦をっ!」
「御願いしますっ!」
「私達の身がどうなっても構いませんっ何卒フィーネ様を!」
「どうかお願いしますっ公爵様!」
獣人達は一斉にフィーネを庇おうとする。
「はぁ…君たちは勘違いしている。仮にもフィーネはヴァレニシア帝国の王族だぞ?」
その一言に獣人達は絶望の眼差しを向ける。大体、戦争に敗北した国の王族はその命を持って戦争の終結を宣言する。そんな眼をされると困るだろう…。しかしルークは止まらず続ける。
「まぁフィーネの場合は帝国も滅んだしどこか公爵なり伯爵なり上位貴族に嫁ぐことにはなるだろうな。」
その言葉に獣人達は、ほっと胸を撫で下ろしている。最低でも殺されることはない、それに例え第一夫人でなくとも貴族に嫁ぐ、それはルークが思っている程酷いものではない。
「嫁ぐことは上流階級に生まれた女の宿命なのです…貴方のもとに嫁ぐことが出来なかったのが一番の心残りなのですよ…。」
その言葉は小さくルークには聞こえていなかった、しかし耳の良い獣人達は一言一句聞き漏らさず聞いていたことをフィーネは知らない。
「とりあえずフィーネの身柄はこちらで預かりファルネシウス王からの連絡を待つ。」
「そ、そうなのですか…。」
「セルジオには今まで通り獣人達をまとめてもらおうと思う。まず農業が出来る者、そして店を受け持つことが出来る者、接客が出来る者で別れてもらう。そしてそれぞれの種族の代表を一人選出してくれ。」
「分かりました。種族により偏りがある場合もありますがよろしいのですか?」
「構わない。」
セルジオは頷くと獣人達のもとに戻り説明をする。すると説明通りに種族別で別れてそして種族の中でまた3つに別れる、そして一人前に出ている者が代表ということなのだろう。
「早いな。それじゃぁ説明を…」
説明をしようとした瞬間バァンッと勢いよく砦の詰所の扉が開かれる。
「パパっ!」
「り、リーリアっ!?」
飛び出してきたのは獣人達を助けて欲しいと馬で駆けても一週間掛かるような距離を何も食べずに走って来たのだ。例え身体能力に優れ獣人一早いと言われる狐獣人でも4日は掛かっただろう。その期間リーリアは何も食べてなかっただろうに。
「ど、どうしてお前がここにっ!?」
「わ、私が公爵様に皆を助けてってお願いしたの!」
その一言に全員が沈黙する。そりゃあそうだ少女の一言で国が滅んだのだから。
「私のくにがひとことでほろぼされたのね…あはは、はは…」
「ひ、姫様…」
死んだ魚の目をしながら呪文のように呟くフィーネに獣人達はなんとも言えない複雑な目をしながらもフォローをする。
「それで説明を…」
次はその言葉を書き消すように呼び出しの鈴の音が響く。これは遠距離通信機器に連絡が入った時の呼び出し音だ。
「もしもし、ルークだが。」
「ディルだが、そっちにフィーネ姫はいるよな?」
「は、はいっ居ます!ファルネシウス王お姿がみえませんが、ど、どちらに!?」
「フィーネ落ち着けこれは声を届ける魔道具だ。ファルネシウス王は王城にいる。」
初めてみる遠距離通信機器に戸惑うフィーネだが魔道具と聞いて納得したのか落ち着く。
「それでファルネシウス王どうされたのだ?」
「そんなに畏まらなくてもよい…それでフィーネ姫の処遇が決まってな。」
「そうか。それで?」
獣人達はその言葉に身を震わせる。まるで自分達の処遇のようかのように聞いている。それだけフィーネの人望が厚いということなのだろう。
「フィーネ姫の処遇だが………ルーク、君との所に嫁がせる。」
「かしこま………ん?……んん?」
空気がぴたりと止まった。フィーネも現状を理解していないのかぼーっと明後日の方向を向いている。
「これは王家の決定でな。よろしく頼むぞ、それじゃあ。」
そう言い切ってディルは電話を切ってしまう。
「うぉぉぉぉっ!姫様よかったじゃねぇか!」
「これなら姫様も報われるわ!」
「姫様おめでとう!」
割れんばかりの歓声が一体を包む。獣人達が盛り上がるのも無理はないもう諦めていたフィーネの願いが1つでも叶ったのだ。たった一人の少女の無理な願いを叶えるために国を1つ滅ぼすような心優しい貴族のもとへと嫁ぐことが出来る。
「ふぇっ!?み、皆さんっ!?」
「「「姫様万歳っ!姫様万歳っ!」」」
「はぁ…」
後ろで一人頭を抱えるルークのことを見ているのは誰も居なかった。




