一章十五話 『暗殺者②』
雨で憂鬱なパル猫なのです!
遅くなって申し訳ないのです!
新作との平行がここまで厳しいとはっ!(血涙)
ではでは本編お楽しみ下さい!今回は短いけどね?
ポタポタと漆黒のナイフから滴る血が広場の石畳を濡らす。真っ白で手の込んだその石畳の隙間を大量の血液が川のように流れる。
その広場の真ん中で女はその漆黒のナイフから滴る血を指で掬い口へと運ぶ。
「……」
美味しい…?いや、本当は全然美味しくなんてない。なんでこんなものを口に入れなければならないのか。
「ない…美味しくない…なんだってこんなものっっ!」
そう言って女はナイフを地面に叩き付ける。ナイフは地面を少し削ってカランと音を立てて落ちる。
「私はただ…普通に…」
女は蹲って泣く。彼と二人で楽しく過ごしていたあの頃に戻りたい…その一心で。だけど変わってしまった、私も彼も。
「お兄様…」
女はぽつりと呟く。
女は裕福な下級貴族の娘だった。いつ頃だっただろうか、兄を一人の男性と見ていたのは。それは兄も同じだった。しかしこの国では血縁での結婚は禁止されている。
「お父様っ!わ、私は……!」
現実は無情だった。父は自分のことを出世の道具にかしか思っておらず来週には上位貴族の男との婚約パーティーまで予定されていた。私には一言もなく。その婚約パーティーの事を聞いたのも一週間前の今日でありそれも働いているメイドの噂話と言った形だ。
「父上!流石に急過ぎやしませんか!もっと話を煮詰めてからでもいいのでは!」
「もう決まったことだ。」
そう言って父は席を立ち書斎を後にしようとする。母が亡くなって早三年、父は変わってしまった。昔は笑顔も見せたのに今では一切見せない。出ていこうとする父を引き留めるように声を出す
「私はまだ結婚など…」
「何を言っているんだ?一家の繁栄の為の結婚だぞ?今回で伯爵家と血縁関係を持てば私の立場も確実なものになる。」
「父上…それじゃぁまるで…」
そうまるで道具とでも言うかのような…。
「父様は何もわかってらっしゃらないのですねっ!」
そう叫んで部屋を飛び出す。その目には裏切られた悲しみや変わってしまった父への失望からか涙を浮かべながら。
「父上…あまりに酷すぎます…」
父と二人取り残された兄は吐き捨てて妹の後を追いかける。
「これもお前の幸せの為なのだ……」
誰にも聞こえない呟きが部屋をこだましていた。
兄は妹を探して屋敷の外まで来ていた。自分は妹を愛している、家族という垣根を越えて一人の女性としてである。それもあり妹の婚約には猛反対した。
それだけが理由ではない、今回婚約する相手はなんでも女癖の悪いと評判の男なのだ。金や権力を使い自分の好きなように女性を抱くと言った最低もいいところな男なのだ。
血縁関係があるため結婚出来ないとはいえ、妹の幸せを願っている自分にとってそんな相手は到底許せるものではない。
「やっぱりここにいたか…」
それは屋敷裏の森の中にある古い廃屋だった。もう何年も手の行き届いていない古い廃屋だ。今にも崩れそうなほど傾いている。でもここは兄妹二人の秘密の場所でもある。
「お兄様…私は…」
「大丈夫だ…分かってる。」
そう言って妹を抱き締める。震えている…やはり父のあの態度がかなりショックだったのだろう。
「なぁ…一緒に家を出ないか?」
その兄の言葉はとても魅力的でそれを二つ返事で呑んでしまったからこそ自分達兄妹の運命は狂ってしまったのだろう。
それから私達は走った。
誰にも見つからないように悟られないように。気付いた時には国境を越えていたくらいには。国境はそんなに近い訳ではない、馬でも三週間と言った所か。
「ここまで逃げれば大丈夫だよ。」
兄の言葉はとても安心出来る。ここまで来るまでに盗賊に会うこともあったがそれも兄の魔法で返り討ちにした。
しかしいつからだろう…人の死を見ても何も思わなくなったのは。
――その事に気付いた時には手遅れだった。
私は人を食すことに快楽を兄は人を殺めることに快楽を求める様になっていた。
それからは事あるごとに殺した。
ただ内なる欲求を満たすためだけに盗賊から罪のない一般人まで大人から子供まで全てを手に掛けた。
そうしているといつの間にか暗殺者として名が売れているようになっていた。
その頃には時には依頼で時にはただ快楽の為に人を殺した。何故かそれを止めることが出来ない。
本当に私がしたかったことは…こんなことじゃ…
そこで不意に意識を取り戻した我を忘れて居たようだ。変な事を思い出してしまった。
そう私は人を殺したて食べたい。
「そんなことは…ない」
だって美味しいものね
「違う…美味しく…ない」
いっつもそう言ってる。けど現実は…
「したかった訳じゃ…」
もう手遅れだよ…
「……………まだだよ。」
背後から声がする。
「君はまだ救われる、償えば。」
それは止めを差した筈の人間の声。生きている筈はない。
確かに心臓の鼓動が止まるのを感じた。信じたくはないが恐る恐ると言った風に後ろを振り向く。
「な…なんでぇ?死んでないのぉ?」
――解放――
「……僕は君を救う……」
その言葉はある意味ではその檻から出してあげるとでも言うような優しくそして厳しい死の宣告だった。
次回イヴちゃんの無双です!主人公が無双してないって?さてなんの事かな?




