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キムワイプ。






「……なんか……もう一カ所、研究施設があるって?」


溜息と一緒にリュカが吐き出すと、清春も釣られて溜息混じりに答える。


「あー……あるねぇ」


警備の薄さは感じていても特に気にしないようにしていた。残念がったところでどうしようもないんだと自分に言い聞かせる。

小さなガラスの容器ばかりなのも引っかかってはいた。新谷が持ち出した量から考えて、どう甘く見積もってもこれでは少な過ぎる。


「マジか……そっちにも俺の肉があったり……?」

「するだろうねぇ……」

「……そこにも何?ナンバーホルダーっていうの?」

「いるねぇ。俺より面倒なのが……」


がくりと肩が落ちて今日中に帰りたかったのにとリュカがうなだれ、まぁ頑張んなさいよと清春が腰を叩く。


「てことは、だ。ここはこのくらいにして次に行きなさいよ」


そう言われてもひとつも乗り気にはならない。かと言って他にどうしようもないのでとぼとぼと部屋を出ていく。

もう暴れる元気のなくなったリュカの肩を掴んで、清春が力任せに後ろに引いた。



同時に銃声が響く。



倒れたのはふたり。


清春に後ろに吹っ飛ばされたリュカと、銃弾に吹っ飛ばされた清春だった。

リュカは飛ばされた先の手元に転がっていたマグカップを掴み、物陰に隠れ銃を構えていた白衣の男に向かってそれを投げ付けた。

マグカップは男の手元で砂粒の大きさに粉々に砕けただけだった。

銃を弾き飛ばされて、男はその場から逃げようともがき、ひっくり返された昆虫のような動きをしている。


史隆だったら手の先ぐらいは無くなったのにと歯噛みする。


「キヨさん!」


清春の元に瑛人が駆け寄る。

抱え起すとかすかに唸り声を上げた。


「……ってえなぁもぅ……」


自分の手で脇腹を押さえると、確認して傷口から指で弾を取り出した。血が滲み、どんどんシャツを染めていく。

清春の手からころりと小さな鉄の塊が落ちる。


リュカが小さくごめんと絞り出し、掴んで持ってきた柔らかい紙で傷口を押さえた。


両脇に居る瑛人とリュカが顔をくしゃくしゃにさせているのを見て、清春は反対に顔から力が抜けていく。


「……ていうか、ダメだ……」

「……キヨさん?」

「これ……あれ……麻酔が盛ってあるヤツだわ……」

「傷は?!」

「んふふふ……もう塞がるからだぁいじょうぶ〜……でもおっさんはしばらく動けなくなるから、ちょっと休憩ね……」


瑛人の頭をよしよしと撫でていると、少し離れた所から女性の短い悲鳴が聞こえる。

瞬間、飼い主に呼ばれた犬のようにピクリと反応して清春の口角が持ち上がる。


白衣を着た女性は早足でこちらに向かってつかつかと歩き、歩きながら大きな声で周囲に文句を撒き散らしている。


「りんりん〜……撃たれちゃった♡」

「変な呼び方しないで下さい!撃たれちゃった♡じゃないでしょ、何してんですか!」


ていうか男共が揃いも揃って何ですか、と周囲に向かって怒鳴っている。

しゃがみ込んだ女性の元に自ら飛び付いていった清春は、悲鳴と拒絶を同時に喰らう。



「……あぁ……と。大丈夫そうだね、清春さん。その……助けてくれて、ありがとう」


女性の膝の上を独占し、満足そうな顔で血まみれの手をひらひらと振る。汚れていないきれいな方の手は女性の太腿を撫でていた。


「いやぁ、まぁなんか結果オーライな感じだから……痛いよ、りんちゃん……」


太腿にある手をそれよりも小さな手がおかしな方向に捻っている。それでもよっこいしょと起き上がろうとした清春をそっと支えた。


「こっから先は気を付けなさいよ、弾除けはもうないからね……外はあんな素人じゃなくて、黒い服のが何人かいるから……」

「……大丈夫。狙いも付けさせない」


短く笑って血の付いた方の手でもう行けと示した。後ろにいた女性が、立ち上がったリュカを見上げる。


「あなたがゼロナンバー?」

「……そんな名前じゃないよ」

「そう……そうですよね……あの……」

「なに?」


そのまま何かを口にしようとし、それでも言うのを我慢して、俯いた女性の頭を清春がいい子いい子と撫でる。また悲鳴と拒絶を喰らいながら。


「ごめん、キヨさん……俺も行くよ」

「おう……そうか。……元気でな、か?」

「そのうち……連絡する」


立ち上がった瑛人は今までにリュカが見た事がなかった表情をしている。


すっきりと雲の無い空のような、笑顔。





建物の外には清春が忠告した通り、黒服の銃を構えた人間があちこちに潜んでいた。

居ると分かっていて、しかも素人では無いならその方が簡単だ。宣言通り狙いを付けさせるような下手をリュカも、瑛人もしなかった。


施設の裏手に隠してあったバイクでもうひとつの研究所に向かう。




夜通し走り、明け方近くに目的地付近にたどり着いた。


峠を越え、高台の施設を見下ろせる位置でバイクを止める。


夜明けはまだなのに施設の周辺は不自然に明るい。


離れたその場所にも煙の臭いが届いてくる。


「火事だ……」


リュカの後ろに座っていた瑛人がこぼした。

















リュカが清春さんの傷口を押さえた紙ですが。

サブタイにもあります、理系必須アイテム『キムワイプ』です。


理系の施設には確実にある紙です。

吸水性抜群で破れない、色々出来て超便利。かなりしっかりしたキッチンペーパーを想像してもらえれば、それに近いかと。

ご存知ない方は是非ググっていただきたい。

もう、外箱のデザインが秀逸過ぎて……実物に出会った瞬間、あまりの可愛さにめまいがしたほどです。名前も素敵……キムワイプ……て。

かわいくてかわいくて、まったくもって理系じゃないのに私の家にはキムワイプ(観賞用)。

とまぁ、語りだしたら止まらないので、キムワイプ話はここでやめときます。




どうでしたか、清春さん。かなりイメージしてもらいやすく仕上げてみました。と、思います。


恋愛はスパイス程度にしか考えてないので本文中の表現は控えめですが。

リュカと夜、清春さんとりんりんだったら、永遠にいちゃこらさせられる自信があります(机バーン)‼︎‼︎

それもまぁ、置いといて。


次で決着がつきます‼︎‼︎






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