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ナンバーホルダー。




部屋の四方向の壁には大小様々な機械が隙間なく並べられていた。


リュカには何の機械なのか、たとえ説明を聞いたところで、それでも分からない事は分かった。

都にあらかじめ聞いておいて良かったと、部屋の奥にあった、天井にまで届く大きさの両開きの扉の前に立った。

中が見えるように扉には透明の小窓がはめ込まれて、覗けば青白いライトの下にガラスの容器がきれいに並べて置いてある。

目当てのものを見付け把手に手をかけると、その上部にはテンキーのキーボードと鍵穴がある。

ひとつ溜息をついて、どこを壊せば楽なのかを考えていると、出入り口付近に居た瑛人が誰かを制止している声が聞こえる。


リュカが出入り口の方に振り返った時には首元を押さえられ、背中を今まで見ていた扉に打ち付けていた。


「キヨさん!」


瑛人の悲鳴に近い呼び声に、リュカは自分か、このキヨさんと呼ばれている人か、どちらを心配して叫んだんだろうと考える。

押さえ込んでくる力と、自分だけに分かる相手との能力の差で後者だとすぐに解った。



自分よりも年上で、無精ひげを生やしたこの男は、どう親切に見ても枕詞に『だらしがない』と付きそうな風貌をしていた。


「……へぇ、あんたがキヨハルさん?」


返事の代わりにリュカの首元がギリギリと締まっていく。足の間には清春の膝があり、自分の足の裏が床から少し浮いている。


「やめてよキヨさん!その人、オリジナルだよ‼︎」

「……え?本当?」


腕の力は緩まないくせに、顔付きが一瞬で変わる。その気の抜け方にリュカは吹き出しそうになった。


「……まぁね」

「……えーと。抵抗しないの?」

「あー。……まぁ何発かは殴ららてもいいかなとか……」


押さえ込まれて、背中に扉が当たっている強さは変わらないが、足の裏は地面に付いた。


「ええぇ〜?なんか思ってたのと違うんだけど……そういう趣味があるの?」


もうやめてと瑛人が横から清春の腕を引く。


「俺たちじゃ敵わないって解ってるんだって!」


あと同情されてると小さくつぶやく声が、いまだに続いている警報音に紛れて聞こえている。

リュカを上から下まで舐めるように見て、清春はふーんと声を上げる。


「最初からちょっとも力が入って無いからさぁ……コレ。腕なんかぶらぶらしてるし……舐められてるのかと思って、おっさんちょっとムカっとしちゃったんだけど……やり合う気は無いってこと?」

「ていうかいい加減、タバコ臭いおっさんに押さえられたままの方が嫌かなとか……」

「俺だってどうせなら可愛い女の子の方が良いよぅ」


ふと腕から力が抜けて解放される。そのまま親切にもリュカのシャツの襟元をきちんと整えだした。



鼻歌が聞こえてきそうなほどご機嫌な清春の向こう側、出入り口付近に白衣が2、3人うろうろとこちらを窺っている、

リュカはちょっとごめんと清春を退かせると、近くにあった形も大きさも電子レンジにそっくりなものを壁から引きむしり、片手で出入り口の方にふわりと投げた。

鈍い音を立てて角から落ち、転がるとすぐに止まる。白衣達は口々に何ごとか声を上げては慌てた様子でうろついている。



その光景を黙って、むしろ楽しそうな雰囲気で見ていた清春は外にいる白衣達に警報を止めろと指図した。言われて初めて思い立ったのか、またわたわたと人が動きだした。


「何しに来たかは分かったんだけど、どうしよう、止めた方が良い?」


へらへらと笑いながらリュカの肩をばんばんと叩いている。


「いや、何でそれ俺に聞くの?」

「どうも勤勉な方じゃないから、おっさんも……できればねぇ?それに痛いのも嫌だし?」

「俺もそれはイヤだよ」

「じゃあ、決まり!おっさんの仕事はここで終ーーーわり!」

「え?そんなんでいいの?」

「いいのいいの!むしろ待ってました!って感じ……お前もそう思ってるんだろ?」


清春は瑛人の頭をぐりぐりと撫で回し、抵抗しながらも甘んじて受けている様子で、リュカにはこのふたりの関係性が何となく分かった。


「それじや、この中身回収したら、俺……ほどほどに暴れて帰っちゃうんで」

「おっけぃ!後はおっさんがよろしくしちゃうから、テキトーにやっちゃってよ!」



それじゃあとリュカは背後にあった扉を、今度は何も考える事なく力任せに引き開けた。

中にあるガラスの容器を手に取る。

背中に回していたボディバッグを前に持ってきて『#0』とラベリングされた容器をぽいぽいと中に詰め込んでいく。



番号は1から順に残ってはいなかった。

9、15、16、23、27……数が大きくなる程保管された容器は多い。最大の番号は#42だった。

ここにある容器は今現在、成功の部類に入っている被験者のものだと都は言っていた。

瑛人や清春のように、結果が出た上で存命中の番号はそれでも両手で足りる数しかない。


#0以外の容器が思ったよりも多い。

さてどうするべきかと考える。結構な量が積まれたりして全部はバッグには入りそうにない。

手の止まっているリュカの後ろから、清春が声を掛ける。


「あーその上の段のは置いといていいよ」

「上?……えーっと、#27?」

「うん、そうそれー。俺のだから、俺がもらいまーす。あとの残りも本人にどうするか決めさせてもらえないかなぁ?」

「あー……まぁ、良いか。そうだね。……じゃ、瑛人はどうする?」

「……一緒に持って行って」


容器がこの先どうなるか知っている瑛人は、自分の番号が書かれた容器を取り出してリュカのバッグに詰める手伝いをする。


取り残しがないか容器を全て確認して、バッグをまた背中に回す。


「……よし。……ではちょっと暴れてくるとします……あ、その前に。ここって、清春さん以外にもいるの?」

「ホルダーなら居ないよ」

「ホルダー?」

「ナンバーホルダー」

「ああ……」

「そこら辺のは普通の人なんで、手加減よろしく」


清春はひらひらと手を振っている。瑛人の首に腕を回して、これ以上は動かないと態度で示した。







派手にガラスの割れる音と、何か重たいものがぶつかり合う音がして清春の口元が持ち上がる。


外の様子は見なくても、白衣達が逃げまどい右往左往している様子は手に取るように分かった。

聞こえてくる声も深刻そうなものは混ざっていない。約束通り手加減されていると分かる。

清春と瑛人が部屋を出て行くタイミングを見計らっていると、そばにある電話が鳴りだした。


手の届く位置に居た瑛人をつついて受話器を取らせる。



瑛人は一度驚いた声を上げると、ちょっと待ってと外のリュカを呼びに走る。


すぐに戻ってきたリュカは電話の相手に肯定だけの返事を二度ほどしてすぐに電話を切った。
















この回でミッションがポッシブルするはずでしたが、清春さんがここまでかわいいとは。テケトーに出した名前だったのにのにのに……。

ここへきて新キャラ投入とか……ねぇ。



清春←名字です。タミフルと同じイントネーション。下の名前は……まぁ、いいか。

今後の閑話ちゃんにでも再登場をしていただきたい‼︎



次でポッシブルしたいのですが、それもちょっと無理っぽいので、もうしばらくお付き合い下さい。

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