ふたりの妹。
ずいぶん先のお話。
私には兄がいます。
正確には、兄たち、になりますが。
その片方が、ただ今、私にべったりと絶賛くっつき中です。
「いっちゃーん、聞いてくれ、兄ちゃんさぁー……」
私のことを愛称で呼び、後ろからほっぺたをこね回し、愚痴ってきます。
仕事で何か嫌な事があったんだとは思います。
ですが具体的でない上に、遠回しに話をするので、結局のとこ、内容はわからないままです。
基本、私はひとつも話は聞いていません。
無駄にただぐりぐりと撫でまわされているだけのような感じです。
ここが家の中だからいいようなものの。
これ、外だと速攻お巡りさんが飛んでくるの巻です。
お巡りさん、ここにおっさんに撫でられている女子高生がいますよ。
おっさん、と言いましたが。
まあ、年齢だけはおっさんの年齢です。
私とは13歳離れています。
私が生まれた頃には、遠方の、超が付く名門校の寮に住んでいました。
兄たちは超が付く才能があったらしく、小さい頃からお父さんとお母さんと離れて暮らしていました。
どんな超が付く才能かは知りませんが、私にはただの残念なお兄さんです。
なんだかスゴイ仕事をしてるっぽいですが、残念な、普通の兄にしか思えません。
「史隆、一花。晩ごはんは何が食べたい?」
あ、史隆は兄の名前です。
私は一花と言います。
向かい側に座って、晩ごはんの献立を考えてるのは、お母さんという名の神です。
神様のように広い心でにこにこと笑いながら、私たちを見ています。
神よ、もうそろそろ私を助けて下さい。
「俺はぁー。……いっちゃんが食べたいものを食べたいよ!」
神はにこにことして頷いています。
甘い!甘過ぎます‼︎ていうか、甘え過ぎです‼︎‼︎
はい、だから、ぎゅーっと抱きつかない‼︎‼︎
これが28歳の、超の付く才能を持った大人の言動ですか。
残念にもほどがあります。
和兄が帰って来た時はカレーライスだったと言うと、史兄はやっと私を解放しました。
後ろから小さく舌打ちが聞こえます。
「…あいつ。……いつ帰って来たの?」
一昨日だとお母さんが答えると、腹立たしそうに顔を歪めます。
「……じゃあ、俺もカレー食べる」
なんの対抗意識!
勘弁してください。
一昨日と昨日もカレーだったのに‼︎
嫌がる私を引きずって、近所のスーパーに買い出しに出かける事になりました。
……この年で兄妹で手を繋いでいます。
同じ学校の人に見られた時には、おかしな噂が流れること間違いなしです。
お巡りさん、ここに援助交際感たっぷりのふたりがいますよ。
和兄は、もうひとりの兄です。
和隆、と言います。
とてもシュッとしています。
こんな風に悪く言えばベタベタと、良く言えば……えーと。
情熱的?な感じではありません。
いつも冷静な雰囲気で、あまり表情も変わらないし。
こんな風に手を繋いだりしません。
いつも少しだけ距離があります。
ちょっと、いや、かなりさびしいです。
私はいつも和兄不足です。
史兄は満足が溢れかえって、ウザさが止まりません。
どれだけジャガイモを厳選したら気がすみますか。
ていうか、なんでこのヒトこんなに楽しそうなの⁈
兄たちは双子なのに、正反対な感じです。
ふたりを足して2で割ればちょうどなんでしょうが、上手くいかないものですね。
顔はさすが、双子というだけあってそっくりなんですが、醸し出される雰囲気や表情で、ぜんぜん似ている気がしません。
お家に帰って来るたび私にお土産をくれますが。
片方は有名なお店の、女の子が好きそうなスイーツですが、もう片方は、外国の怪しげな木彫りの人形など、呪いのアイテムみたいなものばかりです。
今回はショッキングピンクの蛙の人形(リアルな造形デカめ)をくれました。
兄たちの彼女が気の毒でなりません。
……居るのかどうかは知りませんけど。
私にもこんな振り幅の大きな兄たちがいるせいで、少々男性不信気味です。
彼氏ができる気がしません。
その前におかしな噂が流れて、私は年上男性をたぶらかす悪い女とやららしいですけどね‼︎
もう二度と史兄と買い出しに行きません!
手を繋ぐなど、もってのほか‼︎
もう二度と和兄と駅で待ち合わせしません!
車に乗り込むなど、もってのほか‼︎
誤解のなきよう、そこでこっちを見ている同じ制服の人達。
兄です‼︎
どちらも私の、普通の兄たちです。
私はふたりの妹です。
そしてそこは打ち合わせもなく、双子は確信犯です。
彼氏なんて作らせ騎士1号2号。




