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私立一之宮学園〈特科〉  作者: ヲトオ シゲル
閑話ちゃん。
40/83

ふたりの妹。




ずいぶん先のお話。








私には兄がいます。

正確には、兄たち、になりますが。

その片方が、ただ今、私にべったりと絶賛くっつき中です。


「いっちゃーん、聞いてくれ、兄ちゃんさぁー……」


私のことを愛称で呼び、後ろからほっぺたをこね回し、愚痴ってきます。

仕事で何か嫌な事があったんだとは思います。

ですが具体的でない上に、遠回しに話をするので、結局のとこ、内容はわからないままです。

基本、私はひとつも話は聞いていません。

無駄にただぐりぐりと撫でまわされているだけのような感じです。


ここが家の中だからいいようなものの。

これ、外だと速攻お巡りさんが飛んでくるの巻です。

お巡りさん、ここにおっさんに撫でられている女子高生がいますよ。




おっさん、と言いましたが。

まあ、年齢だけはおっさんの年齢です。

私とは13歳離れています。

私が生まれた頃には、遠方の、超が付く名門校の寮に住んでいました。

兄たちは超が付く才能があったらしく、小さい頃からお父さんとお母さんと離れて暮らしていました。


どんな超が付く才能かは知りませんが、私にはただの残念なお兄さんです。


なんだかスゴイ仕事をしてるっぽいですが、残念な、普通の兄にしか思えません。




「史隆、一花(いちか)。晩ごはんは何が食べたい?」

あ、史隆は兄の名前です。

私は一花と言います。



向かい側に座って、晩ごはんの献立を考えてるのは、お母さんという名の神です。


神様のように広い心でにこにこと笑いながら、私たちを見ています。

神よ、もうそろそろ私を助けて下さい。



「俺はぁー。……いっちゃんが食べたいものを食べたいよ!」


神はにこにことして頷いています。

甘い!甘過ぎます‼︎ていうか、甘え過ぎです‼︎‼︎

はい、だから、ぎゅーっと抱きつかない‼︎‼︎



これが28歳の、超の付く才能を持った大人の言動ですか。

残念にもほどがあります。



和兄が帰って来た時はカレーライスだったと言うと、史兄はやっと私を解放しました。

後ろから小さく舌打ちが聞こえます。


「…あいつ。……いつ帰って来たの?」


一昨日だとお母さんが答えると、腹立たしそうに顔を歪めます。


「……じゃあ、俺もカレー食べる」



なんの対抗意識!

勘弁してください。

一昨日と昨日もカレーだったのに‼︎





嫌がる私を引きずって、近所のスーパーに買い出しに出かける事になりました。

……この年で兄妹で手を繋いでいます。

同じ学校の人に見られた時には、おかしな噂が流れること間違いなしです。


お巡りさん、ここに援助交際感たっぷりのふたりがいますよ。




和兄は、もうひとりの兄です。

和隆、と言います。

とてもシュッとしています。


こんな風に悪く言えばベタベタと、良く言えば……えーと。

情熱的?な感じではありません。

いつも冷静な雰囲気で、あまり表情も変わらないし。

こんな風に手を繋いだりしません。

いつも少しだけ距離があります。

ちょっと、いや、かなりさびしいです。

私はいつも和兄不足です。


史兄は満足が溢れかえって、ウザさが止まりません。

どれだけジャガイモを厳選したら気がすみますか。


ていうか、なんでこのヒトこんなに楽しそうなの⁈




兄たちは双子なのに、正反対な感じです。

ふたりを足して2で割ればちょうどなんでしょうが、上手くいかないものですね。


顔はさすが、双子というだけあってそっくりなんですが、醸し出される雰囲気や表情で、ぜんぜん似ている気がしません。



お家に帰って来るたび私にお土産をくれますが。

片方は有名なお店の、女の子が好きそうなスイーツですが、もう片方は、外国の怪しげな木彫りの人形など、呪いのアイテムみたいなものばかりです。


今回はショッキングピンクの蛙の人形(リアルな造形デカめ)をくれました。



兄たちの彼女が気の毒でなりません。





……居るのかどうかは知りませんけど。





私にもこんな振り幅の大きな兄たちがいるせいで、少々男性不信気味です。

彼氏ができる気がしません。






その前におかしな噂が流れて、私は年上男性をたぶらかす悪い女とやららしいですけどね‼︎



もう二度と史兄と買い出しに行きません!

手を繋ぐなど、もってのほか‼︎


もう二度と和兄と駅で待ち合わせしません!

車に乗り込むなど、もってのほか‼︎







誤解のなきよう、そこでこっちを見ている同じ制服の人達。



兄です‼︎


どちらも私の、普通の兄たちです。






私はふたりの妹です。













そしてそこは打ち合わせもなく、双子は確信犯です。


彼氏なんて作らせ騎士(ナイト)1号2号。

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