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私立一之宮学園〈特科〉  作者: ヲトオ シゲル
和隆がいなくなった。
33/83

side 和隆







俺と史隆は双子の兄弟だ。


俺は弟。


いつも一緒に行動していた。





小さい子どもの頃なんかは、町なかを歩く時なんて、いつも手を繋いでいて、年上の女の子達からは「かわいいー!」と言われ、それよりもっと年上の女の人達からは「まぁ、仲良しね」なんて言われて。



とにかく女の人のウケは良かった。


別に女の人からウケたくて、手を繋いでたんじゃない。

俺たちは手を繋いでいないといけない訳があった。




赤ん坊の頃からとにかく物を壊したらしい。


史隆が大泣きする度に哺乳瓶が割れ、おもちゃがぶっ飛び、俺たちのベビーベッドの周りだけは、たいがい爆撃を受けたようになっていた。


らしい。




母は最初、まぁ派手に泣いていた史隆に原因があるんだと思っていた。


でもある時壊れたものの半分ほどが、史隆の泣く前に大きな音を立てて、その音に驚いた史隆が泣いている事に気が付いた。


その時俺がどうしていたかというと、そりゃもう赤ん坊にはあるまじき静かさだったそうだ。


どうもその頃から省エネに努めていたんだろう。






兄弟が離れ離れになると壊れるものが格段に増えるので、いつも一緒にされていた。






簡単に言っているようだけど、母はこの事に気付くまでに、何年もかかっている。

そもそも普通の子育てでさえ疲れるというのに、それが双子で2倍以上疲れ、訳の解らない現象で疲れ。

疲れ切って色んなものをすり減らし、最終的には我が子と一緒に天国へ行こうかとまで考えた。




それがある時、ふと思い付いたのが、我が子達は超能力者なんじゃないかって事。


そんなバカな、有り得ない。と、いや、そうだとすると腑に落ちる。の割合は4:6。



それから母は冷静に観察を始め、仮説を立てて、実験を重ねる。


その結果、なんだか吹っ切れて気が楽になったらしい。


その頃には天国での暮らしを考えなくなっていた。





今まで話に出てこなかったけど、俺たちがこの世に居るって事は、もちろん父親もいるって事で。


母が観察を続け、実験が出来たのも、父の稼ぎが良かったおかげだ。


ふたりでとことん話し合い、その手の映画や小説、怪しげな本やマンガまで読み漁り、そのジャンルのクイズ大会が開催されれば、夫婦そろって優勝と準優勝をかっさらえるほど勉強したと笑う。



ふたりで育てていこうと決めてくれた。






保育園には行かなかった。

小学校に入学する年になっても、家庭学習をしていた。

先生は両親。

読み書きや算数の他にも色々教えてもらったし、能力をコントロールするためにはどうすればいいのか、毎日手探りでなんやかんやと忙しい。




こっちは結構、充実した毎日を送っていたにも関わらず、ホント放って置いて欲しいこっちの事情はおかまいなしに。






子どもが小学校に通わない理由を聞きに、何度も役所の人間が訪れるようになる。


最初は病気を理由にしていたけど、その理由もいつまでも信用はしてもらえない。


そのうち幼児虐待を疑われ、周囲もそんな目で見るようになる。



母はどんどん不安定になっていった。


運悪く、というか何というか、俺たちの力も日に日に強くなる。




父もずいぶんと母を支えていたけれど、その支えも折れそうになっていた。





そんな時。





その人はやって来た。






にこにこ笑っているその人を見た時、俺は、ウサンくせぇなと思った。


その時はまだ9歳になったばかりで、胡散臭いなんて言葉知らないし、はっきり感じたわけじゃないけど。

その時の第一印象を今になって考えてみると、「ウサンくせぇ」がぴったり当てはまる。


ちなみにこの印象は今でも変わらない。

多分この先もずっと。







その人はどこで俺たちの事を知ったのか、俺たちの能力を生かす為に、自分の経営する学園に来て欲しいと言った。


どんなに学園の設備が整っているか、いかに自分が才能を伸ばせるか、自分の立場を嫌味なく的確に説明し、俺たちの将来を約束した。


そしてその費用の全てを自分が持つと、良い事ばかりを両親に、にこにこ笑いながら、時には真剣そうに、時には情熱的に語った。






かわいがってくれているのは、いやになるほど感じている。


今でも。


俺たちの事を、一番に、考えてくれている。






愛されている。

俺たちふたり、平等に。



だからこそ疲れていたのも知っていた。





だったら俺たちは学園に行こう。



史隆と話し合い、ても、まぁ、話は3分もかからなかった。

両親ととことん話し合い。

その胡散臭い人の元に行く事にした。





俺たちが連れて行かれたのは、一之宮学園。


その広い学園の中の、一番端にある一番小さな建物。


といっても、両親と暮らしていた家よりも何倍も大きい。


初めて学校という場所にやって来て、自分たちよりも年上の、知らない人たちと暮らす事になった。




そこは〈特科〉と呼ばれていて、俺たちと同じように、他の大勢の人は持っていない能力を持つ人たちがいた。


最初に居たのは4人。

女の人がひとり、男が3人。


俺たちが双子だったのと、9歳だったのが良かったのか、すごくかわいがってもらった。



両親と離れた不安や、新しい環境への不安も、少しずつ減っていった。

寂しかったけど、いつでも隣には史隆がいたし、持ちつ持たれつしているうちに、寂しさにも慣れていく。

慣れれば平気、どうって事ない。




〈特科〉の生徒は、高校を卒業する年齢になると、〈特科〉を出てひとり立ちするらしい。

能力に合わせて、適所で働く。

ま、結局は一ノ宮の手持ちの駒のひとつになるんだけど。


うん。俺はそんなに悪い事だと思ってないので。


むしろどうあがいたところで俺が他の人たちに馴染んでサラリーマンとか出来るとも思ってないんで。


持ち駒人生、どんと来いだったりする。




適応能力の高い史隆なら、サラリーマンできそうな気がするけど。







そんな具合でひとり抜け、ふたり入り……また減って、なんてこと繰り返しながら月日が流れ。








一ノ宮の研究所から連れ帰った女の子、夜という名前の女の子が〈特科〉にやって来る。




夜は俺たちが初めて会うタイプの能力者だった。


他人の心が読める。

ものに触れれば、そこに残った感情を読み取れる。

他人の心をある程度コントロール出来る。















うん。




まぁ、しょうがない。







心残りがなくはないけど。








しょうがないよ。





















新展開です。



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