day 14
よつばが特科に来てから、2週間はあっという間に過ぎていった。
予定ではこの日に帰ることになっている。
とりあえず荷物の整理は済ませた。
帰る方法が自分でも解らない以上、帰ることは出来ないかもしれないと、一応悩んでもみた。
でもいつもどんな場合でもなるようにしかならないという結論に達する。
答えは毎回同じなので、考えるのは面倒だったけど、止められなかった。
当初の予定、これからずっと先の未来にいた時に立てた予定通り、昼には学園を出て、日が暮れるまでには自分のラボに到着するようにしよう。
必要以上に朝早く目が覚めて、というよりよく眠れなくて、日が昇る前にはベッドから抜け出した。
身支度を整えて、校舎の外に出る。
朝晩は肌寒く感じるようになった。
青白い空気の中に、鳥の声だけが響いている。
少し身震いして、両腕を力一杯伸ばして、体を目覚めさせる。
白く靄のかかる朝の空気をこれでもかと吸い込んだ。
きれいな空気と、体の中にあるもやもやした気持ちとを交換して口から吐き出した。
すっきりしてカフェテーブルに向かう。
白い光の筋が目の前に斜線を引く。
青い色が一筋ずつ白い色に塗り替えられていく様子をただ座って見ていた。
いつの間にか鳥の鳴き声が増えて、一日が始まろうと動き出している。
忘れてしまうことは、どうにもできない。
むしろどうにかできてしまう事の方が問題になる。
思い出すことが出来ない記憶の奥の方に、心の中に、あの時を焼き付けよう。
ひとつひとつもらった言葉が、伝わった心が、奥の方に欠けることなく残ればいいと、願う。
校舎からよつばの記憶にあるよりも幼い雰囲気の母親が出てくる。
おはようと微笑んで、白い朝の光の中をよつばに向かって歩いてくる。
自分の中から、この大切なものが無くならないように。
想いはどんどん膨らんでゆく。
隣に座った夜が、うるさいなと笑った。
最後は全員で、校舎前の芝生の所で食事をとった。
ピクニックシートを広げて、輪になって座り、輪の真ん中には都の為の大盛りデザートが鎮座している。
中身のほとんどない会話が楽しくて仕方がない。
こんなに時間を丁寧に扱ったことがあるだろうか。
榊は食事が終わると、さっさと保健室に帰っていった。
都にごりごりに甘えられて、双子に嫌になる程からかわれ、笑顔の琴野に見守られて、別れの時間が通常よりも何倍もの速さで近付いてくる。
見送りは断った。
ひとりで来た時のように、ひとりで帰らないといけない。
なんとなくそんな気がしていた。
バスには乗らず、あの坂道を歩いて下ろう。
その途中できっとまた暑さにやられて、ろくでもない事を考えだす。
恨みつらみを吐き出して、呪いのように繰り返し境遇を嘆いて、そのうち歩けなくなる。
気分が悪くなって、景色がホワイトアウトする。
次に気が付いた時には。
その時には。
大丈夫な未来に戻っている。
坂道の途中で、誰かに呼ばれた気がして振り返る。
振り返って、ちょっと待てと自分に問いかける。
この坂道、上っていたのだったか、それとも、下っていたのだろうか?
意識がぼんやりしている。
何か真剣に考えていた感じがするけど、何を考えていたのか、はっきりしない。
確か、そう。
所長の事。
あの人が自分の事キライなんじゃないかと考えていた。
それから、バスの事。
待てる気がしなくて、歩いて学園に行こうとしていたんだった。
時間を確認して、いやいやいやとひとりごとが漏れてくる。
むりむりむりむり。
歩いて学園まで行くには体力が持ちそうにない。
すでにもう、シャツがびしょ濡れで、体にぴったり貼り付いている。
坂道は下ろうと、結論を出した。
意地を張らずにバス停に戻って、バスを待つ事にしよう。
その間に少しは涼しくなって、目の前をふわふわと漂うこの白い粒も消えるだろう。
9月10日、午後1時16分。
腕時計は日中で最高に暑い時間帯だと示している。
おしまい。
ここまで読んでいただきました皆様。
ありがとうございました。
ここで一応、よつばの14日間のお話は終わりです。
ここからはぼちぼち未回収の伏線を回収してみたり、みなかったり。
あの人とあの人どうなっちゃうの、そこんとこどうなのな話や、
能力、能力って、ぜんっぜん使ってなくね⁈な部分を、お話しできたらなぁ、と思いますので。
特科さんの話はまだまだ続きますので。
更新速度はがっっっと落ちますけど。
また良ければ、寄ってやって下さい。
本当に、ここまで読んでいただきまして、本当っっっに‼︎‼︎
ありがとうございましたぁぁぁああああ‼︎‼︎‼︎‼︎




