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私立一之宮学園〈特科〉  作者: ヲトオ シゲル
これは14日間のおはなし。
13/83

welcome to the black parede










都は車名を叫びながら嬉しそうに走っていく。




アクション映画でよく見る、悪者が乗っていて銃撃戦をした後、カーチェイスの果てにひっくり返って炎上または爆発する車だった。


「先生、この車どうしたの⁈」


都はボディにベタベタ触ったり、下を覗き込んだりしている。

よく見たいが早く乗りたくもあって落ち着きがない。


「良いでしょ。買ってもらっちゃった」


セクシーな保健医は普段は見た目のイメージ通り、ふたり乗りのスポーツカーに乗っている。

ふふん、と自慢気に運転席に乗り込もうとする榊を止めて、リュカが後ろのドアを開けると、榊をそこに乗るように誘導し、自分が運転席に座った。


「これを榊に与えた者はどうかしているな」


コッティの言葉は事実を的確に表していた。普段の運転ぶりでは、こんな大きな車を街で乗回す場面を想像しただけで背筋が寒くなる。


後ろから続けて乗ってくる琴野と和隆に押されるように榊は3列目に追いやられる。


「なによぅ。カッコ良いじゃない」


だから運転させろと言う話は聞かなかった事にする。

実質無免許のリュカや史隆の方が明らかに上手に運転をする。しかも安全に。


「カッコ良いけど、悪そうだよ。極悪〜って感じ」


まだ濡れた髪からぽたぽた水を落としながら、史隆が助手席側に回る。


都は運転席と助手席の間、どう見ても人の乗る場所ではないところを自分の居場所にした。


ひとり乗るタイミングを逃したよつばは、自分は空いている3列目に行こうとして、間違っていた事に気が付く。いやいやいやと言いながら、運転席のドアを開けた。


「いや、僕が運転します。免許も持ってますし、一応」

「そう?俺は都の作ったニセモノの免許だけど、かなり上手いよ」

「んだ。心配いらないから、よつばは後ろに乗っとけや!」


うひゃひゃと笑う史隆に静かにしろと言いながら、都はふたりの間でナビを操作する。


腑に落ちないような顔をしたよつばを3列目に乗せて、車は滑るように走り出した。

校舎の裏手の森を抜けると、一応舗装はされている車一台分がやっとといった道を行く。


道の状況でガタガタはしても、車の性能とリュカの危なげない運転のおかげで、特に不安は感じない。






もう少しで私道から出ようかという時になって、榊は急に大声を上げる。


「しまった!忘れ物!!」


前方で都が返事をする。


「おやつなら途中で買えばいいじゃん」

「違うの!着替えないといけないのよ、忘れてた!戻ってちょうだい!!」


白衣を脱いで胸元と脚を強調する、ぴったりと体に貼りついたような服を着替えたいらしい。

動きやすいかもしれないが、こんなに露出が多くては、動きが制限もされる。


「早く!こんな時の為に用意してたんだから、戻ってってば!!」


面倒だとかそのままでいいと言う反論を押さえ込んで、大きな声は続けて言った。


「せっかくフ〜ジコちゃ〜んみたいのを買っといたのに!!」


一斉に変わんねー、と榊を黙らせた時、公道に滑り出る。黒い車はスピードを上げて緑深い木立の間を通り抜けていく。



遠くの方で本日最後の授業開始の鐘が鳴っていた。







車は高速道路を南下していく。

途中で休憩を何度か取り、運転手は史隆に交代していた。


太陽は夕方の光に変わり、黄色っぽくなってもまだ道路からの跳ね返りは眩しい。

さすがに運転席と助手席の間は疲れて都はその後ろ、和隆と琴野の間に座った。


榊は3列目の席で、よつばにもたれ掛かって眠っている。


そのよつばは運転手が代わった事で眠る事は出来ず、かといってする事もないので、ぼんやりと考え事をしていた。


番号がない研究所の事。


番号の付いている研究所が、番号順に何の研究所であるか。

知っている事も思い出せる事も本当に少ないので、考えはすぐ別の事になり、また戻りを繰り返している。



運転席の真後ろ、窓際の席で琴野は変わり映えのしない流れる壁と、その間に時々現れる山並みや、しょぼくれた町並みを見ている。



和隆は反対側の窓にもたれて寝こけていた。



カーナビは律儀に仕事をしているが『真っ直ぐ道なりです』としか言うことがない。

到着時刻を見ながら、都は疲れた声を出す。


「明日の8時到着時刻って、何コレ。罰ゲームかなんかなの?」


運転手は不満そうな都のご機嫌を伺いながら、調子よく言う。


「まぁまぁ。次のでっかいサービスエリアでたこ焼きでも食ってさ。暗くなったら運転でもしてみれば?俺が教えてあげるよ、都さーん♪」


後ろからよつばのいやいやいやが聞こえてくる。

琴野はコッティを抱き直し、ふたりにしか解らない会話をしている。


「いや、多分。お前より都の方が運転が上手いと思うぞ」


助手席のリュカの言葉に機嫌を持ち直してきた都は、それじゃあそうしようと言うとカーナビを触って音楽の音量を上げた。

満足げな顔で、琴野と和隆の間に座り直す。





英語で歌われるテンポの速い曲は、黒いパレードが街を行進していく様を格好良く歌っている。


黒くて極悪な車に乗った特科御一行様にぴったりの曲だ。














極悪カーとは黒塗りのハマーです。

デカくて四角くて格好良いですよね、ハマー。


ちなみに都は足の長さも座高も合わない事は分かっていたのではなから運転する気はありませんでした。

ちょっと褒められて気分が持ち直したという。



そしてDJ都が流した曲。

サブタイトルにもあるwelcome to the black paredeですが、マイケミさんのヤツです。


ビミョーに古いです。

それでも時々TVなんかで流れてますよね。

サビよりも私は頭のトコが好きです。



My Chemical Romance『the black parede』収録曲



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