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第7話 補助金という名のルール

「えーと、補助金を使用しているので設置したセンサーの写真を撮る必要があります。

まずは設置していない部屋の写真を一枚撮ってください。センサーの構成はバイタルセンサー、離床センサー、トイレセンサー。ドアセンサー、カメラ、ナースコールです。センサーを設置し終わったら、各センサーの写真と部屋全体の写真を撮ってください。本体通信機であるゲートウェイの写真もお願いします。あ、ナースコールは補助金対象外なので写真に写らないようにしてください。取った写真は共有フォルダーに部屋ごとに保存をお願いします」

 ここまでで質問ありますか、という荒木に全員が首を横に振って答えた。

「あと、納品するモニター類はタブレットが各ユニットに一台、事務所にタッチパネルモニターが一台です。補助金で申請しているのはタブレットのみなので、タッチパネルの写真は不要です」

「あの、モニターだけ自腹で購入したってことですか?」

 遠慮がちに手を挙げながら白川が質問をした。

「モニター類は持ち運びできるものじゃないと、補助金の対象にならないんですよ。県によるけど、ここは不可なんです」

「へぇ」

「昔、タッチパネルモニターをタブレット風に写真を撮って、申請した施設があったみたいなんですけど、バレて大変だったらしいですよ」

「え、それって、どうやって写真撮ったんですか?」

「画面いっぱいにモニターだけ写せば、大きさなんてわからないじゃないですか。対象物がどのくらいの大きさかって、比較できるものがないとわからないでしょ?そうやって撮ったらしいですよ」

「誤魔化そうとするメンタルがすごいですね……」

「まぁ、どこもお金ないですからね」

 仕方ないですね、と荒木は肩をすくめた。

「そもそもどうして持ち運びができるタブレットは良くて、モニターはダメなんですか?」

「さぁ?行政も国も良くわからないルールを提示したがる生き物だからじゃないですか」

 本気なのか冗談なのかよくわからない調子で荒木は答えた。

「あの、ちなみにタッチパネルモニターとタブレットの違いって、持ち運びできる以外に何かあるんですか?」

「画面の大きさの違いくらいですかね。それ以外に違いはそんなにないかな」

 白川の質問に肩の骨を鳴らしながら荒木は首を傾けた。

「そしたらわざわざタッチパネルモニターを買う必要ってあるんでしょうか?」

「タッチパネルモニターやタブレットはだいたいスタッフルームに設置するんですけど、タッチパネルの方が画面が大きいから、少し離れていても画面が見やすい、って介護職員の方は言いますね」

「え、でも、スタッフさんってスマホを持ち歩いているんですよね?スマホで確認できるんじゃないんですか?」

「今日、設置する施設は既にスマホを導入しているけど、スマホを導入していない施設はまだまだ多いですよ。今まではピッチが主流だったから、スマホに慣れてない人も多いですし。まぁ、見守りセンサーの導入をきっかけにスマホを導入する施設は多いかと思います」

 なるほど、と白川は呟きながら「えっ、ってことは」と大きな目を更に丸くした。

「タブレットは持ち歩かずにスタッフルームに固定されるんですよね?で、タッチパネルモニターだと補助金の対象外だから、しょうがなく画面が小さいタブレットを使うってことですか?」

「まぁ、そういうことでしょうね。タッチパネルモニターもユニット分買うと、かなりの金額になりますから」

「タッチパネルモニターもタブレットも役割としては全く同じですよね。持ち運びができるってことは、要はバッテリー式じゃないと補助金は出さないよ、ってことですよね。実際は持ち歩かないのに?」

 白川の顔には吹き出しそうなほど、なんじゃ、そりゃ、とわかりやすく書いてある。そんなわかりやすい白川の表情に、つられたように息を漏らしながら荒木が「意味不明ですよね」と笑った。



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