第3話 見守りセンサーが必要とされる理由
介護施設で使用される見守りセンサーとは、入居者の状態を遠隔で把握するためのシステムだ。国が補助金を配ってでも介護施設に導入を推し進めているだけあって、続々と様々なメーカーがこの分野に足を踏み入れている。
見守りセンサーと言っても種類は様々だが、この業界に身を置いている者ならば見守りセンサーと聞いて最初に思い浮かべるのは、バイタルセンサーや離床センサー等の非接触型タイプのセンサーだろう。
そもそも、介護施設における見守りセンサーは非接触型が推奨されているため、病院のように入居者の肌に直接触れるタイプのものはほとんどない。バイタルセンサーの多くが、ベッドマットレスの下に引くタイプのものだ。形状はある程度メーカーによって違うが、ベッド幅と同等の棒状、もしくはシート状をしているものが多い。
このバイタルセンサーの利点は、介護職員が居室にいなくても入居者の状態が把握できることである。心拍数・呼吸数はもちろん、覚醒状態なのか眠っているのか、モニターを見れば遠隔で管理ができるのだ。従来の見守りといえば、定期的に訪室して状況を判断するしか方法がなかった。夜間帯の巡回は一時間から二時間に一回の頻度で訪室を行い、安否確認をする必要があるため、介護職員の負担はかなり大きい。
そこで、見守りセンサーを使えば訪室しなくても、入居者の状態が把握できるため介護職員の負担を軽減できるだけでなく、心肺停止など緊急事態が生じた時に通知がくる設定にしておけば、異常自体が生じても迅速に対応することができる。
バイタルセンサー以外の見守りセンサーと言えば、入居者がベッドから離れようとした時に検知する離床センサー、ドアの開閉を検知するドアセンサー、トイレに入ったことを検知するトイレセンサー、室内の様子をモニタリングするための見守りカメラがオーソドックスなところだろう。
厚生労働省は『介護テクノロジー導入支援事業』という名目で介護ロボット、ICT、それらを使用するために必要な環境作りに補助金を出しており、見守りセンサーは介護ロボットの分野に含まれる。見守りセンサーが検知した異常を知らせる通知は、携帯やパソコン等で閲覧することができる。そのようなデバイスを導入するためにICTという名目の補助金を活用し、デバイスを活用するためにはWi-Fi環境が必須のため、それも補助金を活用する。
そもそも見守りセンサーとは介護業界における深刻な人員不足を解消し、介護職員の業務負担を減らすことを目的に導入される。そのため、施設内で数床分の見守りセンサーを導入したところで、その目的は達成される、とは言い難い。
多くの施設が全床に見守りセンサーを導入して負担軽減を図りたいと考えている。しかし、全床に見守りセンサーを導入しようとすれば、大概は一千万円を軽く超えてしまう。
介護施設は株式会社のように利益を追求する仕組みにはなっていないため、その金額を出すのは現実的に厳しいうえに、人員不足は国会でも議題に上がるほど深刻だ。そこで、人員不足の穴埋めとして開発されたのが見守りセンサーであり、今や日本は国をあげてこの見守りセンサーの導入を支援している。
例年、厚生労働省が介護テクノロジー導入支援事業の方針を発表すると、それに倣う形で各都道府県が方針を発表するが、必ずしも厚生労働省が発表した内容を厳守しなければならない、というわけではない。
なぜなら、見守りセンサーの補助金である介護テクノロジー導入支援事業の財源である地域医療介護総合確保基は、国庫支出金と地方負担金で成り立っている。各都道府県の税収は県ごとによって異なるため、どの事業にどのくらい予算を割くかは県の判断にゆだねられており、補助金の要件も県ごとに微妙に異なる。地域によっては市町村独自の補助金を設けているところもあるが、全国的に見ても稀だ。
見守りセンサーの導入を検討している介護施設は、補助金のスケジュールに合わせて動く必要があるため、見守りセンサー業界はいわゆる補助金ビジネスといっても過言ではない。
多くの都道府県が夏頃に補助金の申請を開始し、秋頃には補助金を使用できるかどうか、内示が施設ごとに発表される。行政から正式にゴーサインがでたら約一ヶ月以内、どんなに遅くても年度内には申請をした見守りセンサーを導入する必要がある。そのため、この業界の営業は春から夏が勝負所であり、納品に関わる部署は秋から冬が繁忙期になる。
補助金を活用して見守りセンサーを導入したら、行政に必ず報告書を提出しなければならない。手順はどの都道府県も似たり寄ったりだが、必要な書類は微妙に異なる。
導入する見守りセンサーの写真を添付することを義務付けている県は多いが、センサーを床に並べた状態の写真で良い県もあれば、設置前と設置後の居室の写真を必須とする県もある。前者の写真撮影は社内で行えるので楽だが、後者はかなり負担が大きい。




