第2話 モニター越しの介護現場
介護施設からもらったご入居者の基本情報を見ながら、真壁はバイタルセンサーが検出した睡眠データと心拍、呼吸データをモニターに表示させていく。それらの情報をAIに読み込ませていると、サポートチームの石原美咲がいそいそとパソコンを持って近づいてきた。
「真壁さん、聞こえちゃったんですけど、群馬へ行くんですか?ついでにトライアル機器の回収をして欲しい施設があるんですけど。二泊三日って可能です?」
「……」
真壁はうんざりした顔で石原を見上げた。
なんというか、この部署は人使いが荒い。全国各地の介護施設から引き合いを頂いてありがたい限りなのだが、人手不足すぎる。介護現場における人材不足を解消するための見守りセンサーを販売している会社が、とんでもなく人手不足とはどういったことか。だれか、この人手不足を解消するセンサーを開発してほしい。そもそも、俺の業務は介護施設で入居している高齢者のデータ分析であって、見守りセンサーの設置、回収はキッティングチームの仕事だろうが。
一通り心の中で愚痴をこぼした後、真壁は背もたれに深く寄りかかった。
「ちなみにどこ?」
「群馬です。二施設あります」
真壁はため息をつきながら石原がチャットで送ってきたサイトを開いた。
「朝倉さんの導入が決まった施設からだと、車で二時間かからないくらいで行けるかと思います。五十床導入なので、設置に二日間かかると思うんですよね。なので、三日目に回収作業に行ってもらえると助かります。トライアル機器は二施設ともバイタルと離床センサーが三床分だけなので、すぐに終わると思います。」
石原の話に無表情で真壁は耳を傾けた。確かにその構成なら回収作業は一施設一時間もかからない。
「朝倉さんの案件の構成は?」
「バイタルと離床センサー、トイレセンサー、ドアセンサーにカメラ。あとナースコールですね」
「え、フルセット?もしかして設置業務をやるのって、俺と朝倉さんの二人だけで?」
設置内容の重たさにぎょっとし、思わず眉間にしわが寄る。石原はそんな真壁を見ると、口紅を綺麗に塗った口元を隠すように手を当てておかしそうに笑った。
「流石にそれは可哀想すぎます。たぶんもう二人くらい行きますよ」
「……わかった。ちなみに補助金導入?」
「そうです。なので、各居室のビフォーアフター写真が必要です」
「五十床全部?」
「もちろんです。あ、ナースコールは補助金対象外なので、ナースコールが写らないようにいい感じに撮影をお願いします」
真壁はそれを聞いてがっくりと肩を落とした。




