第13話 センサーを使う人たち
「モニターにはこのように、各居室がマスとして表示されます。ベッドにいない場合は白色、ベッドにいる場合は黄緑色、寝ている場合は青色表示です。異常を検知すると赤色に変わります」
熱心にメモを取っている職員の様子を見ながら、ゆっくりと荒木は説明を続ける。
「異常を検知するためには、アラートの設定をする必要があります。アラート設定をしない限り、センサーが反応しても音はなりません。まず、ベッドのマットレスの下に設置しているバイタルセンサーには四種類のアラートがあります。一つ目は起き上がり検知です。これはベッドから起き上がろうとしているとアラートが鳴ります。二つ目が不在検知です。これはベッドから三分以上離れると鳴ります。夜間帯に使用して頂くことが多いです。最後の二つはお看取り用のアラートです。異常な心拍値を検知した場合と、心肺停止状態になった場合に鳴ります。心拍値の上限下限は個別に設定することが可能ですので、アラートを設定する際には看護師さんと相談して数値を決めてください」
そして荒木は手のひらサイズの離床センサーを全員によく見えるように掲げた。
「離床センサーのアラートの種類は二種類です。一つ目は離床検知です。ベッドから離れようとするとアラートが鳴ります。二つ目は温度管理をするためのアラートです。熱中症対策として、居室の温度が二十八度超えたらアラートを鳴らす、もしくは真冬の時期に居室の温度が二十度を下回ったら鳴らす、といったように使用することができます。アラートを発砲するための温度は個別で変えることができます」
トイレセンサーやドアセンサーは単純な仕様になっている。トイレに入ったらアラートが鳴り、ドアが開いたらアラートが鳴る。カメラやナースコールにアラート機能は無いので、いったん荒木は説明を止めると、「質問ある方はいますか?」と言った。パラパラと手が挙がり、お互いがどうぞと譲り合う。見かねた施設長が「右端から順番に質問しよう」と言ったおかげで、端にいた小柄な女性からどんどん質問が上がっていく。
「例えば離床アラートを設定しているお部屋にご家族の方や、清掃スタッフがベッド周りに行ったらアラートは鳴りますか?」
「検知範囲に引っ掛かると鳴ってしまいます。あらかじめ訪室が決まっている場合は、アラートの一時停止機能をご利用ください。モニター、もしくはスマホのアプリですぐに設定ができます。停止時間は五分から六十分まで五分単位で選べます。時間が経つと、自動でアラートが鳴る仕様に戻ります」
「ご利用者様によっては、新しいものがお部屋に置かれていると、気になってコンセントを抜いてしまう方がいます。その場合はどうしたらよいですか?」
「通信機であるゲートウェイのコンセントを抜かれてしまうと、データが取得できなくなります。ゲートウェイはベッドボードにフックでかけていますが、見えにくいようベッド下に置いて頂くなど、工夫が必要になります」
「ベッド移動する場合はどうしたらよいですか?」
「居室に設置しているセンサーは、ゲートウェイとペアリングされているため、ベッドごと移動されるのなら、カメラも一緒に移動させてください。ゲートウェイの側面に番号が書かれたシールが貼ってあります。これと同じものが離床センサーとカメラにも貼ってあるので、セットでお使いください。ただし、バイタルセンサーとナースコールはゲートウェイにコードを挿せばすぐに使えるので、どれでも大丈夫です」
ゲートウェイを見せながら荒木は説明し、次々に質問を捌いていった。その様子をみて真壁は感心したようにつぶやいた。
「随分と熱心だなぁ」
「でしょ。ここの施設、ICT化を率先して進めていて、他の施設が視察にくるくらい熱心なんです。職員の定着率もけっこういいんですよ」
な ぜか我が事のように誇らしげに朝倉が小声で言った。国が補助金をバラまくようになってから、見守りセンサーをはじめとするICT商材の導入は年々増えている。しかし、それを使いこなすことは別問題なのだ。これほど熱心に取り組む姿勢があるのなら、十分に使いこなせるだろう。




