第12話 施設ではなく、家として
白川の兄である青樹相談員を筆頭に、各ユニットから介護職員が二名ずつ、看護師、施設長に囲まれた荒木は緊張した様子もなく、丁寧に頭を下げた。
「お忙しいところお集まり頂き、ありがとうございます。イマココの荒木です。本日はよろしくお願いいたします」
真壁たちは邪魔にならないよう壁際に寄り、話を聞いている職員を見渡した。誰もが真剣にメモを取り、青樹はスマホで荒木が話している様子を動画で撮影している。
あとでいつでも見返せるように記録を残し、説明会に参加できないスタッフにも展開するそうだ。その様子を眺めながら真壁は、先ほどの青樹との会話を思い出した。
「どうして部屋番号が一〇一、ではなく、一番地一丁目、といった表示なんですか?」
「一〇一だと、いかにも施設って感じでしょう。自宅に帰る気持ちで部屋に戻って欲しいので、病院のような部屋番号じゃなくて、住所みたいに番地にしているんです」
真面目さと誠実さをちょうど良く配合したような人柄の青樹は、嬉しそうに施設の特徴について語った。
なるほど、と真壁は頷いた。仕事柄、営業やキッティングチーム程ではないが、介護施設に足を運ぶ機会は多い。この施設は都内の施設と比べならないほど敷地が広く、廊下も共有スペースもゆったりしている。中庭には見ごろの紅葉が植えられており、春になればチューリップ、夏になれば向日葵が咲くように職員が世話をしているのだという。
青樹曰く、この施設では参加型のケアを重要視しているという。様々な場面で、できる限り入居者に協力してもらう。例えば、洗濯物を畳む、食事後の食器を片付ける、花壇に水やりをするなど、役割を与えることで本人の尊厳や自立支援を重視するやり方だ。アットホームな雰囲気を作るために、共有スペースで展示する作品は入居者と介護職員が一緒に作る方針をとっている。
職員は全員インカムを装着し、連携を図るだけでなく、介護記録システムの入力も基本的には音声入力を活用している。これにより、紙で介護記録をしていた時代に比べると、驚くほど事務負担が減ったという。その分、入居者へのケアに時間を割けるようになったそうだ。
そしてこの施設の特徴はそれだけでなく、アニマルセラピーを導入していることだ。介護施設で犬や猫を飼うことで、様々な効果が狙える。高齢者に関係なく、ペットとの触れ合いは、オキシトシン、いわゆる愛情ホルモンが脳内で分泌されるため、ストレスの軽減につながるのだ。実際、真壁が居室にセンサーを設置している時、我が物顔で歩いている猫を見つけて思わず口が緩んだものだ。
「やる気がすごいですね。心意気が最先端」
青樹が教えてくれた施設の特徴を一緒に聞いていた白川は、感心したようにつぶやき、その意見に真壁も思わず首肯した。
荒木が見守りセンサーの基本知識を説明し終わったところで、モニターの見方の説明に映った。荒木がモニターを指さしながら説明すると、介護スタッフ達が良く見ようと距離を詰め始めた。




