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(92)有りのまま

 有りのまま生きれば疲れることはない。人は見栄みえ体裁ていさい自己顕示欲じこけんじよくなど、様々な計算づくの意識にさいなまれ、自分を着飾って生き続けるのである。まあ、程度の差は大なり小なりあるのだが…。^^

 二人の男が数十年ぶりにとあるレストランで待ち合わせ、出会った。

「おおっ! お久しぶりです。聞くところによれば、ご出世なすったようですなっ! なんでも、ホールディングの会長とか…」

「ははは…たかが知れてます。わずか数十億のちっぽけな会社です。ところで、あなたはっ?

「私ですか? ははは…私は、これだけのものです。近くの禿岡町はげおかまちでその日暮らしの小さな魚屋をやっとりますっ! ははは…」

「ほう! そうでしたか…」

 二人は豪勢な食事に舌鼓したづつみをうち、軽く一杯やったあと、別れた。

 さて、ここで問題です。皆さんはどちらの生活が幸せだとお考えでしょう?^^

 答を言わずに話を終わるのもなんですから、種明かしをしますと、魚屋のご主人の方が幸せだったんです。レストランの会話は本当だそうで、包み隠さず有りのままを話されたということです。一方、ホールディングの会長さんは? というと、会社経営が思うに任せず、近々、海外の大会社に吸収合併される状況にあったらしいのです。当然、会社トップの座を追われることは明々白々だった訳です。魚屋のご主人はトップのままですから、比較しますと魚屋のご主人の方が幸せな訳です。有りのまま・・は疲れることなく幸せになれる確率が高いのです。^^


                  完

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