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(70)維持(いじ)

 この世の物や物事はすべて劣化し、消耗する。少しでもそうなるのを食い止め、維持いじすることに努めれば、物や物事の寿命は延びることになる。人の命もまたしかりで、天寿は仕方ないが、身体をケアして維持すれば長寿を保てる訳だ。まあ、維持しない方がやまいに倒れたとしても、それは私のあずかり知らぬところである。^^

 とある温泉である。源泉が湧きだす近くで腕を組みながら話す二人の男がいる。どうもこの温泉で店を出すご主人と番頭らしい。

「しかし妙だっ! ここ最近、白い湯が赤茶けて出る…」

だんさん、ひと月ほど前の地震のせいじゃないんですかっ!?」

「おっ! そういや、そんなことがあったな…」

「泉質が変わったのは、確か…あの頃からですよっ!」

「なるほど、そういうことか…。こればっかりは維持しようがないっ!」

「自然には勝てません…」

「うちのが実家へ帰ったのも、あの頃だったな…」

「そうでした、そうでしたっ! 確か、地震のあとでしたよね、奥さん出ていかれたのは…」

「ああ…。人間関係を維持するって~のも疲れるっ!」

「はいっ! で、どうします!?」

「んっ!? 待つしかなかろ…」

 番頭は、その言葉に泉質と奥さんの二つの意味を感じた。

 すべてに言えることだが、維持するのは疲れるほど難しいのである。^^


                  完

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