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(66)世の姿

 アイデンティティ[主体性]という昨今さっこんちまたでよくつかわれる和製英語があるが、どこか最近は、このアイデンティティが人々から消える傾向にあるようだ。確かに、自分を主張すれば社会から馴染なじまないと白い目[赤い目ではない^^]で見られて疲れることになる。だから人々は妥協して世の姿に追従しようとする訳だ。たとえばここ最近、新型ウイルス防止のマスク着用が外出時の常套じょうとう手段となっているが、この気の弱さもどんなものだろう…と思える。何をしたって死ぬときは死ぬのである。かぐや姫さんだって、周囲のお偉い方々が帰さずっ! と散々、あらがわれたにもかかわらず、姫は結局、月へお帰りになったではないか。^^ このように世の姿がどうであろうと、物事はなるところへ帰着するのである。あらがうほど疲れるだけなのだ。世の姿がどうであろうと、皆さん! 自分の意志を大事に生きましょう! 疲れるだけですから…。^^

 二人の老人が物陰で隠れるように話している。

「怖い世の姿になってきよりました…」

「はいっ! さようで。下手に出歩けば、外出禁止法違反で現行犯逮捕されますからなっ! 今朝は大丈夫でしたかっ?」

「はい、まあなんとか…。コップの目をあざむくのも疲れるものですっ!」

「外出禁止法違反で現行犯逮捕ですからな…」

「はいっ!] まあ、ウイルスにつかまるのも難儀な話ですが…」

「さようで…」

「世の姿は人をしばりますからなっ」

「さようで…。では、いつもの隠れ家でっ!」

「手に入りましたかっ!」

「はい、なんとか今日は…」

「食料パニックには困りものですっ!」

「マスコミが騒ぎ過ぎなんじゃないですかっ?」

「確かに…。過剰過ぎますなっ!」

「まあ、それも世の姿と言えば世の姿ですが…」

「疲れるのはいただけません」

「さようで…」

 二人の老人は、まるで悪いことをした犯人のように、キョロキョロとあたりを警戒しながら足早あしばやに公園を去った。

 世の姿に疲れるようでは、この世もおしまいだ。^^


                  完

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