(29)手続き
手続きが不調に終わったり遅れたりすれば倍疲れる。それは身体的なものではなく、心理的なものである。人によっては、そのことにより先の生活に支障をきたしたり、場合によってはトラウマに陥ることだってあるに違いない。それほど手続きは人生における最重要課題なのである。と書けば、愚痴っぽく聞こえるが、今日はそんな内容のお話である。^^
宇佐川は今日も家近くにある海沿いのとある砂浜を探し歩いていた。
「いや…確かにここ! で落としたんだ…」
ここ! といっても広い砂浜だから、ここ! と特定できる狭い場所ではない。
「鮫尾が悪いんだよっ! 手続き方法は俺と同じでいいから…なんて背に乗せるからっ!」
頭を下げ、視線を砂地に落としながら探し歩く宇佐川だが、落としたモノはまったく見つかる気配がない。
「もう、いいやっ!! それにしても、俺もなぜあんなモノを落としたんだろう?」
宇佐川の落としたモノとは印鑑ケースだった。印鑑ではなく、印鑑ケースである。手続きに手間取り、印鑑をケースから出したまではよかったが、入れ忘れてしまったのである。そのあと、鮫尾に釣られて浜辺を走ったのがいけなかった。しかしまあ、落としたのは、飽くまで印鑑ではなく印鑑ケースだった。幸いにも、印鑑は落としていなかった。ただ、宇佐川にはそのことが心のトラウマとなっていたのである。^^
このように、どうでもいいことでトラウマに陥って疲れることもある訳だ。大黒様でもお通りにならないかぎり、宇佐川の落とした印鑑ケースは発見されず、元の気分には戻れないだろう。^^
完




