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(30)持ち物

 何も持たなければ気をつかったりくす心配がないから疲れない。ところが、持ち物が多いと、いらぬ心配がかかり、心労しんろうの原因となる。ならば、持たなきゃいいじゃないかっ! という話になるが、この世はそう甘くなく、いろいろ持ち合わせないと生きづらく出来ているのだ。^^ 通り雨に出食わしたとき、そんなこともあろうかと、バックに折りたたがさを忍ばせておきましたよ、ははは…と笑いながら雨傘を広げて一件落着することになる。今日はそんな、持ち物のお話だ。^^

 とある家のキッチンである。主婦が煮物を作っている。

「そうだわっ! ちょうど残りものの豚肉があったから、入れてみようかしら…」

 そう言いながら主婦は冷蔵庫から残りものの豚肉を出し、なべの中へ適当に放り込んだ。これがいけなかった。しばらくして鍋がコトコトと煮立ち、主婦は小皿でだし汁の味見あじみをした。

「ちょっとくどいわねっ! 少し、だし汁を減らしてと…おネギと蒲鉾かまぼこでも入れようかしら…」

 それから小一時間、主婦の格闘は続いたが、奮戦及ばず、鍋の中は具だらけとなり、味も散々なことになってしまった。主婦はとうとうギブアップし、ガス火をいったん止めると腕組みし、考え込んだ。

「お母さん! まだぁ~~!! お腹減ったわっ!」

「おお、お前もか…」

 そのとき、主人と娘が同時にキッチンへ現れた。

「どうした? もう食えるだろ?」

 主人は煮え過ぎた鍋を見ながら、いぶかしげに言った。

『俺もこんなに持ち物が多いと煮え切らねぇ~やっ!』

 鍋がダジャレを漏らした。もちろん、三人に声は聞こえない。その日の夕食は急遽きゅうきょ店屋物てんやもののうな重に変更された。

『俺の立場は、いったいどうなるっ!!』

 台所の洗い場へ座るように置かれた鍋が不満を爆発させ、愚痴った。恐らく鍋の中身は捨てられるのだろう。^^

 今の時代は持ち物がなく疲れる時代ではない。有り過ぎて疲れる時代なのである。皆さん! 持ち物は大事に有効利用し、持ち物に愚痴られないようにしましょう!^^


                  完

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