(15)楽な姿勢
楽な姿勢でいれば疲れることはない。疲れるのは楽な姿勢をしていないからである。そんなことは当たり前だっ! と怒る方もおられようが、まあそこは、板わさ[蒲鉾のスライスを茹で、それを盛りつけた皿に、少量の出汁醤油と山葵{擂り下ろした本山葵なら猶更よい}を垂らし、酒や温かいご飯に添えて召し上がるという安価で涎の出そうな一品^^]などで盛り上がっていただき、お許しを願いたい。^^
とある街の通勤電車に揺られ、箱宮は今朝も勤務地の庁舎へと向かっていた。馴れているとはいえ、残業続きでは疲れるのも無理はない。箱宮も例外ではなかった。
『次はぁ~鼻毛ぇ~鼻毛ですぅ~~。毛抜線はお乗り換えでございますぅ~~』
もう鼻毛か…と、吊革に掴りながらウトウトしていた箱宮は馴れで目覚めた。いつの間にか両脚は、くの字のように折れ曲がり、無意識で楽な姿勢になっていた。箱宮が目を開けた途端、電車は鼻毛の駅ホームへ、スゥ~っと滑らかに侵入し、停車した。乗降ドアが自動に開き、次々と乗客が降りていく。箱宮もその流れに巻き込まれるかのように降りていった。だがどういう訳か、両脚は、くの字の姿勢を保ったままなのである。周囲の者から見れば、ぎこちない姿に見えなくもない。別に悪いことをしている訳ではないから傍目を気にする必要はないが、どうも不格好この上ない。だが、箱宮はすっかり疲れていた。疲れ果てていた。両脚は意思とは裏腹に、くの字の姿勢で改札口へと向かっていたのである。その後、改札口を出た箱宮は、くの字の姿勢を保ったまま入庁した。
身体は疲れることのない楽な姿勢を知っているようである。^^
完




