↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/721

学友との再会

リピームが香坂恵について調べてる間に、リサは難民対策の農地買収を、民衆から借金をして行っていた。

一族の滅亡などに同情する気はまったくないが、難民がリサ伯爵領に来るのは困る。

既に数万人の難民が国境に押し寄せ、窮乏を伝えてきた。

残りの数百万もここにやって来るのは間違えない。

「あの姉共。あれだけ苛めといて、一族滅亡後も私に厄介をかけるのか?」

怒りのあまり吐血して、政務はフォートレスが代行する事になった。

「入国は拒否せよ。食べ物だけは配給するように」

いきなり難民に雪崩れ込まれても困る。

掘っ立て小屋でいいから大量に造らないとな。

水着写真集から取り立てた税収30万ディルスが小屋の代金に消えていく。

あれは儲かってしょうがなかったが、エドワードの気紛れには勝てない。

因みに水着写真集は、他国でプレミア付で取引されていた。

「私の我儘だと言いたいのか?私がエドワードの情婦になれば良かったと言うのか?」

最近のフォートレスは機嫌が悪い。

宥め役のリサは責任放棄としか思えない吐血で寝込んでいる。

「フォートレス様。どうするんですか?俺は基本的に軍人ですので」

アトルピーも責任放棄を始めた。

リピームは香坂恵の身元調査で雲隠れ。

「真一を呼びなさい。もはやあいつしか役に立つ奴はこの領地にはいない」

サンとサドは小屋造りでどうにもならない位忙しい。

この小屋造りの為に難民の若者が2千人ほど雇われた。

そんな難民の中に、明らかに軍人らしい騎馬団が1万騎混じっている。

「ここがリサ伯爵領なの?思ったより豊かな国ね」

仮面の騎士団長が思わず感想をもらした。

「シエル様。我らの目的はあくまで魔物討伐。それを忘れないでください」

部下のルーンが血気の猛将たるシエルを諌めた。

「分かってるわ。食糧は難民の蜂起により奪われたのよ。私は父さんの名誉の為にそれを秘匿した。分かったわね?」

シエルと呼ばれた仮面の少女は不敬な言葉を言い切った。

ぜんぜん分かってない。

公爵領ですらあっさりとお家取り潰されにあったのだぞ。

カイン公爵の二の舞になりたいのか?

あんたは・・・。

「シエル様。リサ姫には会われるのですか?」

股潜りの異名を持つ補給将校のルーンはシエルに尋ねた。

「勿論会うよ」

シエルは簡潔に話をすました。

「リサは元気だろうか?」

シエルはのん気にそんな事を考えた。

真相は、屋敷で寝込んでいる。

「そなたは門番に賄賂を渡してリサ姫に面会させてもらえ」

シエルは賄賂用のミスリル硬貨5枚を部下に渡すと、部下を急がせた。

早くあの愛らしいリサに会いたい。

「ふふ。ミスリル硬貨5枚もだせばどんなケチな門番でも取り次いでくれるわ」

シエルは単純にそう考えてた。

神童も考える事は極めて俗っぽい。

それ故に門番の次の台詞と行動には驚愕した。

「ふざけんじゃねえ、この野郎。門番が賄賂を受け取るのは、豊かで平和な国での決まり事だぞ」

この門番は、躾の行き届いた門番だったらしい。

不意をつかれたシエルの部下は見事にぶった切られ、重症を負った。

「姫を愚弄する奴など無礼討ちにしてくれる」

慌てて逃げ回るシエルの部下を門番は追いかけシエルの前にたどり着いた。

「どけ小娘」

騎馬を持ち、仮面を被った偉そうな騎士を小娘と決め付ける根拠が分からないが、止めないと部下が殺される。

「その者は私の部下よ。賄賂は私が送るように命令したの。気に入らないなら私を斬りなさい」

シエルは重症を負った部下に回復魔法をかけると門番に謝った。

「悪かったわ。賄賂を受け取らない門番がいるなんて夢にも思わなかったのよ。謝るからその剣をしまって、ね?」

シエルは土下座して謝るが門番の怒りは収まらない。

「あんた自分の部下にどんな教育をしてるんだ?」

教育なら散々した心算だったが、門番は気に入らないらしい。

「御免なさい・・・」

取り合えず仮面を外して謝った。

仮面をつけたままわびを入れるのは相手に失礼だ。

「あんたシエル姫か?」

門番はシエルの顔を知っていたらしい。

顔見知りに会うのが嫌だから、わざわざ仮面を被ってきたのに、ここにも顔知ってる人がいた・・・。

「フォートレスさんに会いたくないんだけど、直接リサ姫に面会出来ますか?」

シエルはやや丁寧に聞いた。

この門番怒らせたら私が叩き殺される・・・。

この門番は私より数倍は強いぞ。

「リサ姫の病弱は知ってるのか?」

「学友でしたから」

シエルはリサが病弱なだけではないのも知っていた。

薬草学なら帝国でも上位に属する腕前である。

「会えるのですか?」

シエルが再び尋ねた。

ここまで来て会えないのも困る。

「案内しよう」

門番は部下に門の警備を任せて、リサ伯爵領にシエルを入れた。

仮面は再び被っている。

シエルはリサ村の農地を見たが、どこも豊かな耕作地帯が多かった。

「私の国はここまで豊かではないですね」

エドワードが難民を嫌がらせに送り込んだのは逆効果なのではないか?

エドワードが何故リサの一族を目の敵にするのか知らないが、リサを怒らせたら、エドワードに勝ち目はないと思うぞ。

「リサ姫の部下は良い人が揃っていが私の国にはお前のような人材はいないな」

門番がやや物腰を柔らかくして、シエルに言った。

「私も神童と呼ばれた人間ですが、貴方は私よりは強いですよ」

シエルは取り合えず言い切っといた。

あの部下は私の側近を一撃でぶった切り、敗走させた。

あの男はシエル軍1の豪傑だぞ。

「お前のような小娘より強くったって自慢にはならん」

門番は馬鹿にしたようにシエルに言った。

「お名前を伺ってよろしいですか?」

「アレンビー」

門番は答えた。

「私の部下にほしいですね」

シエルがつい本音をもらした。

絶対無駄だろう。

「断る」

案の定一言で拒絶された。

「俺はあの病弱な姫が好きなのだ」

そうですか。

「ここが姫の屋敷だぞ。借家だがな」

借家?

伯爵なのに?

「貧乏なんだから仕方ないだろうが」

アレンビーはみもふたもない事を言ってのけた。

貧乏でも伯爵たるもの一軒家に住むべきだ。

「姫に面会出来るか聞いてくる。お前は客間で猪肉を食っていろ」

私食が細いのだがな。

猪肉は領内で食べ飽きてるし。

「猪肉が重要な産業だから美味いぞ」

シエルはその後一時間も待たされる事となった。

そしてリサが現れる。

調子は良くなさそうだ。

「シエル。何で仮面なんか被ってるの?」

リサは旧友との再会にこの言葉を選んだ。

シエルは仮面を外して改めてリサと面会する。

「フォートレスさんに偽名で奴隷を融通した事があったのよ。流石に本人には会いたくないわ」

じゃあ香坂恵はシエルなのか?

シエルは説明をする事にした。

「日本名は香坂恵なのよ。ガルドの娘が奴隷を買い与える感じでは、あつかましすぎるでしょ?」

臆面となくシエルは言ってのけた。

「感謝するわ。シエルの名声は天上知らずね」

「私より強い人材なら貴女の部下にもいるわよ。探してみたら?」

具体的に誰かはシエルは言わない。

「食糧支援をリサ伯爵領にしたい。許可が下りれば直にでも用意させる」

「その為にわざわざ来て下されたの?」

リサは薬草を飲みながら、シエルに尋ねた。

「困ってる友人を助けるのは、騎士の務め」

1万騎の騎士は何の為に?

リサが尋ねるとシエルは言った。

「ドラゴンを討伐する名目でリサ伯爵領に来ているのよ。最近は伯父様の監視が厳しいから」

あの馬鹿皇帝。

シエルにもちょっかいをだして来ているのか?

欲望には切りがないが、程々にしておかないと全てを失う。

私の知った事ではないが。

「私の領地の香坂銀山が欲しいのよ。難癖をつけて取り潰そうと狙っているわ」

そうですか。

大変ですね。

人事の様にリサは思った。

「そこでね。いっそ我が領地を守ってくれる権力者に譲渡して嫌がらせしてやろうと思うんだけど、リサは誰にしたら良いと思う?」

何だと?

あのリサ伯爵領に隣接する北部を支配するシエル伯爵領を譲渡するだと?

それをわざわざ私の領地に来て言うんだから、私に庇護しろと言ってるんだよな?

「お前の人徳だろう」

アレンビーは面倒くさそうに言ってやった。

「シエル。リサ姫にはもっとはっきり言った方が良いぞ」

シエルはこの忠告を聞き入れる事にした。

「そうね。シエル伯爵領を貰ってくれない?私が鍛えたシエル騎士団1万騎をオマケにつけるから」

「シエルも私の下に来てくれるの?でもなんで?」

シエルは胸を張って宣言する。

因みにこの国の成人女子の胸のサイズはBカップが主流だ。

巨乳でもDカップまでである。

「私は志を果たすその日まで、リサ姫の部下でいたい」

志か。

「約束したじゃない。いつか2人で、この世に王道楽土を建設しようって」

小さい頃は私もそんな夢を見たな。

忘れてなかったのか。

だがその夢にはもう一人真一が加わるのは間違えなさそうだな。

資金面でリサ伯爵領の経済を支えられるのは、あの男しかいない。

「シエル伯爵領欲しくないの?」

「欲しい。是非譲って欲しい」

リサは返事をした。

広大なシエル伯爵領を譲ってもらえるなら有難い。

「では契約書だな、私のサインはしてある」

シエルはリサの下で出世する夢を抱いていた。

エドワードなどどうでもいい。

やはり出世ならリサがいい。

「では私のサインだ。正式に私のモノだな」

エドワードめが。

後悔するといい。

「リピームさんを呼び戻して。命令の遂行は意味不明になった」

リサは広大なシエル伯爵領の目録を眺めながらシエルに尋ねた。

「ゴブリンの大集落があるらしいけど?」

「和平を結びました」

エドワードには、討伐したと報告してある。

まあ嘘ではないだろう。

「人口400万人のシエル伯爵領だからね。税金は250万ディルスは調達できるわ」

夢のような金額だな。

「私の処遇はどうなるの?リサ」

「処遇とは?」

リサが尋ねた。

「私は領地譲渡で無職になった。リサから官職をいただかないと食べていけない」

税収は全て公共事業に注ぎ込んでいる。

公共事業を、無駄遣いなどと言う奴もいるが、どこぞの国では公共事業を止めた方が産業へのダメージが多かった。

それに止めてもたいした予算削減にならないし。

それに公共事業は失業者救済の為に行っているのだ。

採算は度外視なのが当然だと思う。

シエルの領地は失業者が多く、公共事業をやらなければいつ暴動が起こるか分からない事情もあった。

「そういう訳で私は文無しなのよ。リサから官職をいただきたい」

譲渡条件に官職の保証を明記しないあたりが子供だよな。

まあシエルは子供だ。

因みに10歳。

「シエル卿には自由騎士の称号を与え、伯爵領から月30ディルスの年金を与える。部下の方々は一人辺り3ディルスだ。

3ディルスは日本円で24万円。

大学卒の初任給よりは高い筈である。

シエルが部下に幾ら給料をだしていたか知らないが、3ディルスなら文句はない筈だ。

シエルは驚いた。

実はシエルは部下に1ディルスしか与えてない。

「部下が喜ぶでしょうね」

シエルは心の底からそう思った。

このタナボタ式の領地譲渡劇で、リサは北方に港を手に入れる事になった。




設定ないが、日本名を娘につけるあたり、シエルの母親はフランス人と日本人のハーフなのかも知れない。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。