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領地経営方針

シエル伯爵領は、あっさり譲渡されるだけあってとんでもない領地であった。

シエルは語らなかったが、実は借金が50億ディルスほどあったのである。

失業者救済の公共事業の賜物であった。

戦ばかりしていたので、軍事費もかさんでいたようである。

和平したのも、軍費が底をついただけだろう。

しかもこのシエル姫は物好きにも他国の経済支援を行っている。

公共事業のおかげで所得は高いのだが、出費が多くて、領地の財政は火の車なのである。

「シエル伯爵領には荒野があるらしいけど、開発はしなかったの?」

仮面の騎士にフォートレスが尋ねた。

シエルが香坂恵なのは、フォートレスにもバレバレなのだが、シエルは仮面の騎士の三文芝居が気に入ってるらしい。

「ゴブリンとの激戦地だったわ。和平もしたことだし、望みなら開発の為に手引きをするけど?」

シエルは神童だが、農業だけは苦手だった。

それ故公共事業は、交易の為のものが殆どである。

シエルの性格では、農作物の収穫期まで3ヶ月ほど待てないのだ。

「シエルはどんなお屋敷に住んでいたの?」

リサが尋ねた。

事と次第によっては引っ越す必要がある。

「城よ。住み心地は悪いですからリサ姫には向かないと思うわ」

病気療養には、山岳の保養地が一番だ。

説明してるのは、部下のルーンである。

「ではフォートレス卿にシエル伯爵領の長官を任せたいと思うのだけど、リサに異存はない?」

シエルが発言した。

「良いよ。フォートレス姉さんに任せとけば安心だわ」

リサは平凡な官僚タイプのフォートレスに全幅の信頼をおいている。

「それとフォートレス村の長官はシエルに任せるわ。リサ伯爵領で1番豊かな村よ」

シエルならあの村でも数十万ディルスを稼ぎ出すんじゃないだろうか?

「有難き幸せ。農業は苦手ですが家臣になった手前、やれと言われるなら精進しよう」

シエルが農業に精通していたら、公共事業に頼らない領地運営が出来ただろう。

「フォートレス姉さん。当面の問題は失業者対策よ。失業者が減れば景気が良くなる。出来るだけ職を世話してあげて」

「分かりました。早急に仕事を斡旋します。シエル伯爵領の職安全てに指示をだしときます。トイレ掃除から鼠取りまであらゆる仕事を斡旋させます」

ファンタジー世界の職安は、酒場と相場が決まっている。

フォートレス村のマリネーの宿屋も実は副業は職安だ。

最近は労働力不足で悩んでいるので、マリネーの宿屋に行けば職にありつけるのは間違えないだろう。

「荒野は開墾するとして、街はどの位あるの?」

リサが尋ねた。

「人口10万人の都市が7つ。50万人の都が一つです。その他は農民が殆どです。都市のうち2つは港町です」

ルーンが説明をした。

「北方の大フランク連合は食糧が不足しているらしく、シエル伯爵領の猪を高値で買い取ってくれるんです。その見返りに大フランク連合の技術を教えていただいているわけでして」

そうなんだ・・・。

「私の母は、フランス系日本人で大フランク連合と関係ないけどね」

シエルの母は、奴隷狩りで日本から連れてこられたらしい。

リサは真一や雪菜と面識があるか聞いてみたが、シエルは知らなかった。

「では海洋交易は食糧の輸出強化で一儲けと言う事に」

「賛成~」

部下達は賛成した。

輸出強化なら、失業者も減らせる。

「5つの街はどうしましょう?」

普通に交易で栄えてる街の様だが、産物とかあるのだろうか?

「大フランク連合からの技術供与で造った初級レベルの魔法製品とかならありますが」

後は普通に工芸品とかである。

「リサ伯爵領の店を誘って支店をださせるよ」

10万人も人間がいれば、儲け放題である。

リサは単純にそう思ったのだが。

「シエル伯爵領の街には商工ギルドが存在して、勝手に商売をしてはいけないのです」

「ギルド?」

ああ帝都にもそんなのがあったな。

帝都だけのしきたりだと思っていたが、どこでもやってたのか。

「商売権の株みたいなの買えばいいんでしょ?探してみるよ」

リサは何でもない事のように言ってのけた。

わざわざ公共事業を起こさなければ、成り立たない不景気な国で、商売権の株が売り切れと言う事はないと思う。

どんな辺鄙な場所でも街で商売できればいいのだ。

場所が悪いから店が潰れたなどとは、無能な奴の戯言である。

「ふふっ。商売権を手に入れられればこっちのものよ」

リサは不適に微笑んだ。

「盗賊組合に上納金を納めないといけないんだっけ?」

辺鄙で人口の少ないリサ伯爵領ではギルドは存在しなかった。

「ギルドは味方にしといた方が良いよ。いろいろ商売の利権が絡んでくるからね」

シエルはリサに忠告した。

商売には客がいるから、嫌がらせとかされると客が減るのである。

「勿論。人類皆兄弟だよ」

リサは本気で言っている。

どうやらゴブリンの群れを理不尽に襲撃したドワーフの一件を知らないらしかった。

「では街は商売の活性化と言う事でいいの?」

シエルが尋ねた。

皆異論はない。

「賛成」

部下達は気楽に賛成した。

「都は当然軍隊の強化による雇用創出と」

どうしてそこで軍隊になるのか良く分からんが、部下は賛成した。

どうせエドワードと決裂するのは遠くない。

軍隊は多い方が良いだろう。

リサは簒奪には興味ないが、部下達はリサに多大な期待をしていた。

「シエル伯爵領の農業って、三圃制?」

唐突にリサが聞いた。

「ルーンに聞いて」

農業関係は、部下のルーンに任せてある。

「三圃制です」

ルーンが答えた。

ただシエル伯爵領では休耕地にカブとクローバーを植えている。

「猪飼ってるの?」

「休耕地で飼うんですか?」

そりゃ猪はクローバーもカブも食べるだろうが。

「早速試してみます」

フォートレスは部下の衛兵に命令して即座に実行にうつさせた。

「冬でも育つカブがあるかもしれない。早急に探すように」

「分かりました」

部下は国中を探し回る事になる。

難儀な事だ。

「最後は公共事業だけど、これどこでやってるの?」

「リサ伯爵領との境の香坂銀山の採掘ですが」

まさかと思うが、今時人海戦術で銀山発掘をしてるんだろうか?

「その銀山有望なの?」

リサは聞いた。

まさか銀山開発で50億ディルスも注ぎ込んだのか?

「年間2億ディルスは収益が上がる筈なのよ」

シエルは必死に言い訳するがはっきり言って見苦しい。

仮面の騎士の威厳が台無しである。

「本当なんだったら」

シエルは興奮したのか暑っ苦しい仮面を脱ぎ捨てて地面に投げつけた。

うん。

シエル卿は素顔の方が断然美人だ。

「どこかであったか?」

フォートレスは白々しくとぼける。

「知らない」

シエルは不貞腐れて呟いた。

他の人間には、シエルの不満が良く分からない。

ゲーム的な表現だと、シエルの魅力はカリスマ17である。

カリスマ18は勿論リサだ。

「貴女は仮面を被らない方が美人ですよ」

フォートレスはシエルの容姿を誉めておいた。

ファンタジー世界にミスコンでもあったら2位は間違えなしである。

一位はリサ姫だろう。

「香坂銀山は有望よ。後300万ディルスも資金があれば・・・」

その台詞で何人のギャンブル好きが破滅したか。

シエルは子供だ。

仮面は威厳を維持する為のものか・・・。

「分かってます。人件費が高すぎるんですよ」

ルーンがシエルを宥めるが時すでに遅し。

「私が無能だと言いたいの?」

言ってないから。

少なくとも俺らは思っていない。

10歳で伯爵やるような人物が無能なものか。

「シエルは鉱山経営には向いていないだけよ。シエルは軍人向きだから」

リサが決定的な一言を言ってしまった。

シエルの顔が屈辱に歪む。

「そりゃ英名たるリサに比べたら、私など平凡な政治家だけどね」

シエルは思った。

リサは小規模な領主だったが、才能は天下一品である。

領地割譲してよかった。

リサの下で出世しよう。

「シエルには来訪の目的通り、魔物退治をやってもらうわ。シエル軍1万騎の実力を試す必要があるからね」

取り合えず配下にしたドラゴンとのんびり遊んでおいてもらおう。

エドワードの嫌がらせが追加されるのが遅れるかもしれない。

「貴女のペットが災難ね。私の騎士団は強いよ?」

「門番に叩き切られる兵が?」

リサは本気で驚いてみせる。

「アレンビーさんが強すぎるのよ。友達だと思って忠告するけど、アレンビーさんにはもっと重職を与えないと役不足よ」

シエルは思った。

生まれてこのかたあんな怖い思いをした事はない。

「あの門番は、私より強いわ。リサは私がゴブリンの英雄ザリアン王と互角に戦える事知ってるでしょ?」

知ってる。

シエルの武名をエルザス中に轟かせた一戦だった。

あの時シエルは5歳だった筈である。

そのシエルより強いのか?

あの門番。

「リサが命令してくれれば、私の騎士団をアレンビーに任せても良いわ」

天下のシエル姫が随分と気に入ったもんだな。

「そうすれば私は鉱山開発に集中できる」

まだ言ってるよ。

この人。

「伯父様が香坂銀山欲しがってる話はしたよね。調べさせたんでしょ?」

調べた。

でも部下が帰ってこないし。

「銀山経営がシエル伯爵領の財政を破綻寸前に追い込んでるんじゃないの?」

銀山の開発を継続するなら人員は徹底的に削減するぞ。

「人員を削減するなら鉱山開発しても良いよ」

一体何人雇ってるんだ?

「たったの35万人だけど」

「多すぎない?」

鉱山経営がどうやるのか知らないが、今時人海戦術はないだろう。

「ではどうやるの?奴隷でも使う訳?」

逆にシエルが尋ねた。

「貴女の魔法で人形ゴーレム造れば良いでしょうが?出来るの知ってるのよ」

「え?」

今度はシエルが本気で驚いた。

成る程。

そんな便利な方法があるのか。

「でも失業者救済が・・・」

シエルは何で銀山にこだわるんだろう。

「荒地は山の様にあるわよ」

「ぐずん・・・」

シエルは可愛く泣き真似をした。

そんなに嫌なのかよ。

「せめて5千人位・・・」

「駄目」

リサが即断で決め付けた。

「分かったわよ。でもゴーレムは頭悪いから、3千人位は人間が必要よ」

三千人で経営できたのか?

やはり幾ら失業者救済が目的でも、今時鉱山に35万人も必要ない。

「ではフォートレスさんにはシエル伯爵領で経営に携わってもらいます。私はフォートレス村で金山でも探してみるとしましょう」

こだわるねぇ。

「好きなだけ探したら良いわ」

今度はリサも了承した。

そしてのんびり領地を経営しながら、翌年の春を迎える事になる。




香坂銀山の設定チート過ぎますねぇ。

ノリで書いてるから、あちこちで無茶ぶりが目立ちます・・・。

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