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借金返済と学友の話

2ヶ月がたち、リサ村の経営は起動にのり始めていた。

臨時税とリサ村の客人であるサザニール男爵の到着により、リサ村は好況に沸いている。

財政が黒字なら、多少税が高くても領民は納得するものだ。

リサは借金は最初の取り決め通り支払い、残りは軍資金に蓄えた。

ミスリル硬貨20枚はある。

サザニールがリサ村から高い猪肉を買うだけではなく、何かリサに売りつけようとしてるのは分かっている。

その時の用心だ。

猪肉を食う為だけに、こんな山奥に来る奇特な奴は、エルザス中探したっていないだろう。

「この荘厳華麗な村がリサ村なのかね?」

サザニールは部下300人を引き連れて、フォートレス村に逗留していた。

フォートレス村のマリネーの宿屋では、来客を収容しきれない。

よってリサ村にやってきたのだ。

フォートレス村は、人口300人。

リサ村は人口2400人に膨れ上がっている。

盗賊の村では人口700人となっていた。

「この領地の猪肉は美味い。マリネーの料理は最高だね~」

サザニール男爵は、大好きな猪肉をたらふく食べられて幸せそうだ。

だがこれでサザニールは商売人である。

「例のものはフォートレス村で売りさばくのだぞ」

フォートレス村とリサ村では、結構経済格差がある。

観光客もリサ村ではなく、フォートレス村を訪れた。

リサ村には宿泊施設がないのである。

リサの屋敷は賃貸アパートで、宿屋ではない。

よってサザニールも天幕生活を強要された。

サザニールもリサに対して若干の怨みがある。

男爵を伯爵の屋敷ではなく宿屋に宿泊させるのである。

「リサ姫に献上しろ。病によく効く薬だ」

サザニールは怨みを晴らす為に、リサの為の薬を調達してやった。

山奥に篭ってるリサは知らないだろうが、リサの病は治せるのである。

特効薬も2年前に開発された。

2年間位服用すれば、症状は抑えられる。

「リサ姫がこの薬を採用すれば、月に数千ディルスは儲かる筈だ」

病は確かに治るが、副作用が酷いらしい。

早い話一度服用したら止められない。

服用を止めれば昔の病弱な体に戻ってしまうのだ。

止められる訳がない。

「ふん。このサザニールを甘く見るんじゃない」

別に病は治せるんなら、いくらお金がかかっても怨まれる覚えはない。

「はっ。リサに一服盛ってしまえばこちらのもの」

リサは一生薬と縁が切れなくなるだろう。

リサを一生借金漬けにしてやるぞ。

サザニールは薬とは別の交易品である鹿肉をフォートレス村で売りさばくことにした。

リサ村は鹿肉が好物なのは、スパイにより調査積みである。

「できるだけこちらの損害がでないようにしないとな」

この鹿肉がフォートレス村で大ヒットして、サザニールは数千ディルスを稼ぎだした。

「兎と猪の皮はどの位の価値が付く?」

部下の鑑定士に尋ねた。

若い頃は自分で鑑定してきたが、最近視力がおちて来て、鑑定ができない。

それでミスリル硬貨5枚で、鑑定士を雇ったのだ。

「3500ディルス位ですな。リサ姫にはそうお伝えしましょう」

宝物庫を調べさせてもらった鑑定士が断言した。

ドワーフは吹っかけていたが、鑑定士がいるんだから、適正値段で売ってもらうぞ。

お前らが値段を吹っかけて来るのは我々だって分かっている。

「リサ姫が来るまで待つとしよう。あの娘も早く皮を処分したくてたまらんだろうからな」

サザニール男爵はリサが来るまで、部下の差し出した紅茶をすすりながら待つ事にした。

リサは5時間後に宝物庫にやってきた。

部下からサザニールの言い値は聞いている。

「即金で3500ディルス支払ってくれるの?」

サザニールは自信たっぷりに言った。

「約束しよう」

あの鑑定士、案外正直者だったようだ。

部下に命じて、ミスリル硬貨35枚を用意させる。

「即金で支払いましょう。この皮は私の物でよろしいですな?」

契約書をリサに突きつけてサインを迫った。

リサとしてはサインするしかない。

「リサ伯爵殿。良い取引が出来て嬉しいです。皮製品の技術向上に力を注いだ方がよろしいな。何なら良い職人を紹介しましょうか?」

「いや。自力で探す。これだけの値段で買い取っていただければ、当面は何の問題もない」

これだけの収入があれば、借金返済しても余るだろう。

「それと薬をくれた事にはお礼を言わせていただく。だが残念だが私はそなたから薬を買う気はないぞ。薬草の知識を私は持っている。あの薬はその気になれば私にも造れる」

薬一回服用しただけで完全に成分を見抜かれてる?

「良い事を教えてくれて感謝する。私は知らなかった」

サザニールは部下を引き連れて、さっさと引き上げる事にした。

商品は売りさばいたし、領内にとどまっても、ディルスを消費するだけだ。

リサを借金漬けにする計画もばれているようだし。

「引き上げるぞ」

サザニールはリサ村の山から下山していく。

「早速債権者を集めて。借金を返済する」

債権者は直ぐにやってきた。

農作業の草取りに忙しかったが、家族に任せて借金の取立てにやってきたのだ。

「借金の返済をしていただきたい」

フォートレス村の村民は、利子も含めて返済を要求した。

リサはサザニールから受け取ったミスリル硬貨35枚で返済する。

あっけなく返済は終わった。

「姫。猪を献上してもいいですぞ」

村人がリサにおびっかを使ってきた。

増税されるよりは多少貢いだ方がマシだ。

猪は金になる。

「それは有難い。最近は乱獲で猪狩りの収益が減ってきた」

数が回復するまで禁猟をしなければと思っていた。

兎の方はまだまだ数が豊富なので、禁猟はしない。

ところで真一の水着ショップも大繁盛していた。

水着ショップの売り上げが月3千ディルス。

フォートレス村で開店した古着ショップは4千ディルスの収入である。

2千ディルスをリサに献上した。

リサ本人が水着を着て宣伝した事もあって、大繁盛したのだ。

献上品はお礼のお金である。

リサ伯爵領は4千ディルスを蓄える金持ち村となっている。

好景気を背景に、フォートレス村に酒屋がオープンした。

「猪を売りさばいてひと財産築いたぞ」

真一の助言で猪を育て始めた農家は、これで大儲けをしていたのだ。

リサは増税のアイデアとして、猪税を聴取する事にした。

猪一頭につき銀貨10枚の税金を取り立てる事となる。

この収入がかなりの額にのぼり、リサは兵50名に給料を支払った。

「薬草があんなに高価だったとは知らなかったな。薬草を採集する故に部下を編成する。希望者は名乗りでる様に」

リサに薬草を持ってきた男を問い詰めたら、一服4ディルスだと言っていた。

そんな薬草なら領内に幾らでもある。

そろそろ本気で薬草精製を副業にしてみようかなぁ。

側近の他はすべて去らせて、リサが呟いた。

「私は薬学では末席に属する腕前の持ち主よ」

末席ですか?

それ帝国の薬学士の中で末席だと言う意味だよね?

「教授が私のお尻触ったから投げ飛ばしたのよ。それで末席になったわ」

薬学の腕前はそれなりに一流だと言いたい訳で?

病弱なリサに投げ飛ばされるとは、情けない教授だ。

「酷い話。私それで吐血してしまって3週間も生死の境をさまよったのに、私が悪い事になってるのよ」

誰だよ?

その教授・・・。

我らが姫に恥をかかせたその男いつか必ずぶった切ってやる。

「教授の名はガルドよ。この事実表沙汰にしないでね。ガルドの娘のシエルと私仲がいいんだから」

ちなみにここに今いるのはリピームとアトルピーである。

「シエル卿?あの神童の?7歳で精霊魔法と暗黒魔法を極めたエルザスの英雄ですか?」

「10歳の今は、人口350万人の伯爵領を統治しているわ。あいつは一人っ子だしね」

だったらばらさなければ良いじゃないか。

2人の部下はそう思うが、黙っていた。

でも10歳の若さで人口350万人を統治してるのか?

さぞ栄えているんだろうな。

「あいつの領地には、ゴブリンの大集落が存在するわ。最強のシエル騎士団でも壊滅させるのにてこずってるそうよ」

友人のシエルの領地の情報は、リサ伯爵領にも届いている。

「学友時代には、私の部下になって世直しをするんだとか誓った事もあったんだけど」

シエルを部下に出来たら、山岳地帯の魔物など一掃出来るな。

「その前に奴隷を帝都に買いに行く役を選ばないといけません」

アトルピーがリサを現実に引き戻した。

村民を増やして、リサ街に昇格させる事を考えないと。

でもこれだとハーフ・エルフの隠れ里じゃないか?

リサの人望を頼って色々な商人が、エドワードの迫害を逃れてやってくる。

「シエル卿に追いつかないといけないですからなぁ」

神童シエルに勝てる時が来るのだろうか?

「宿屋では出入り禁止になってるから、別の人間を送り込まなければならない」

脱線しまくるが、リサは強引に話を戻した。

出入り禁止になったのはリサが豪遊したせいだ。

「フォートレス様に行っていただきましょう。あの人は堅実な方ですから、出入り禁止にはならんでしょう」

へいへい。

どうせ私は遊び人ですよ・・・。

リサはむくれるが、部下2人は意にも返さない。

そう言う子供っぽい態度だから、神童に負けるんだ。

リピームとアトルピーはそう思うが、本人には言わない。

生まれは公爵家だが7女でここまで伸し上がれたら上等だとも思うがな。

シエルは一人っ子で伯爵になれるのは分かりきっていた。

ガルドは大公爵である。

エドワードの弟だ。

因みにシエルの母親は日本人である。

正確には、フランス系日本人。

髪が黒いのは、突然変異らしい。

少なくとも本人はそう言っている。

僅かでも同じ血が流れてる縁もあって、薬草学の学校では仲がよかった。

「だが絶対に負けないぞ。末席に落されさえしなければ、学内で4位の成績だったのよ。私は」

「まあまあ。ではフォートレス卿を派遣するで良いんですね?」

「いいわよ。それからマリネーさんの宿屋で兵士も30名位雇っておいてくれない?ゴブリンは討伐しないといけない」

リサ村へ大規模な侵攻を開始しないうちに、予防戦争で砦を奪い取る。

「冒険者は給料が高いですぞ。良いんですか?」

アトルピーは聞いてきた。

「現物支給よ。ゴブリン砦の太守にしてあげると言っときなさい」

領民は募集させるのか?

「友人のシエル様に援軍を頼むのはどうでしょう?」

リピームが愚かな事を言った。

そんな事したら、エドワードに怒られ、シエルもリサも共倒れだ。

志を果たす為に、殆どの人間が幸せに暮らせる理想郷を建設するまで、伯爵領を失う訳には行かない。

理想郷の拠点がリサ伯爵領なのだ。

奴隷を買うのも、自分の領地の方がマシだと信じて疑わないからである。

「では正式に命令する。奴隷を確保する為に帝都にフォートレス姉さんを送り込む様に」

史上最大の奴隷買い付け作戦がここに始まる事になる。





シエル卿の元ネタは漫画ネタです。

因みにお気に入りです。

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