新型ゴーレム奪取作戦
「愚かな奴が。一般公募などしたら我々が密偵を送るに決まってるだろう」
ゴーレムをあわよくば奪取してしまおうと考える一味が帝都に潜んでいた。
ダイヤの都に送り込まれる候補生が帝都で書類選考と面接で選ばれるのだ。
「盗賊ギルドで用意した偽造書類に抜かりがある訳ないじゃないか」
エルザス帝国には、謀略に長けた部下がいないような気がして心配だな。
敵国になったとは言え、エルザス帝国が弱体化するのは俺達も困るのだ。
交易が出来なくなるし、エルザス帝国が崩壊したら多分難民が押し寄せる。
「この書類はキートン王国の者だが、何故キートン側に寝返らなかった?」
お前が俺達の計画に気付かないでいるだけで、俺達は既にキートン派だ。
「キートン様はケチでな。気前の良いリサ姫に売り込みに来たではいけないのか?時と場合によっては、リサ姫の家臣になっても良いと思っている」
まあ確かにキートンはケチだが、キートン軍の主力は歩兵だし、ゴーレム隊の候補生の俺達は、肩身が狭かったと言うのも実は心中にあるのだ。
まあキートン軍にこのティミッド00を運び込んで手柄を立ててやるさな。
そうすれば、キートンも俺達の手柄を認めるしかなくなるだろうと思う。
「まあ良いだろう。キートン王国のスパイ狩りをしても、戦争の口実を奴らに与えるだけだからな。だが念の為に言うが、自爆装置が仕込んであるぞ」
ゴーレムに自爆装置が仕込んであると良いたいのだろうか?
まあ確かにその方法なら、ゴーレムを持ち逃げされる心配はないかも知れないが、リサは自分の部下をそこまで信用出来ない訳でもないのだろう?
自爆装置のついてない筈の、隊長機を盗み出せば安全に持ち運べる筈だ。
「流石に警備は厳重だな。アニメや漫画のように、あっさりとはいかん」
「アニメなら敵兵と派手に戦って、ゴーレムを奪取するところだろう」
だが普通の感覚の技術者なら、敵に鹵獲されないように、自爆装置を設定していると思うし、エルザス帝国もゴーレムに自爆装置を使ってるようだ。
愚かにも真一が敵軍の捕虜になって貴重な技術が流出してしまった反省からの対策なのだが、そこまで候補生達は気付かない。
「可能なら隊長機を奪い取って、ゴーレム基地も破壊したいところだが」
流石にそれは無理だと思うので、3機だけで我慢する事にしよう。
キートン王国も、ルーシェリーを宰相に召抱えているから、エルザス帝国と決定的に決裂する気はないんだろうと思うし。
「ルーシェリー様は何を考えて我々を帝都に派遣する事に同意したのだ?」
候補生達は不安であるが、キートンの命令を遂行するのが部下の役目だ。
どんな不条理な命令でも、金で雇われた以上遂行するのが、傭兵である。
「そなたらが、キートンが送り込んだ密偵の候補生達か?」
リサとラビットには候補生の正体は見破られていたが逮捕はされなかった。
「リサ姫。あんた奇特な人ですねぇ」
正体を見破りながら、我々を泳がせる理由は、一体何なのだろうな?
「私の秘蔵のゴーレムを盗み出せるならやってみるが良い。自爆装置を解除してみるか?ギャンに造らせた自爆装置は最強最悪だぞ」
自爆装置に自信を持って、我々を実験台に使う使う心算なのだろうか?
「敵国の兵を使って我が軍の訓練を行う心算でな。悪いだろうか?」
どうせ何機か盗み出したって、エルザス帝国の生産力には勝てない。
アニメや漫画じゃ盗み出した次の日にも量産計画が行われるが、現実の世界で新型ゴーレムを量産するのは、西方の技術力では無理だ。
ネトゲ廃人と訓練させて、エルザスゴーレム部隊の底上げを計る計画だ。
「レベル250なんだってな。私の部下は150レベルが限界だぞ」
何気に地道に訓練を重ね、このレベルに到達したが、多分一撃で負ける。
「キートンを利用しようとして、失敗した教訓に学んでいないようだな」
俺達がリサの立場なら、キートンは暗殺しておく。
「私も己の分をわきまえて、さっさとキートンに降伏すれば良いのだが」
そうすれば分裂したエルザス帝国は、1つにまとまるだろうと思う。
「では軍事訓練を開始する。お前達はティミッド00に乗って敵を倒せ」
リサの命令が下ると、早速訓練が始められる事になるが、防御用のゴーレムに筈なのに、ティミッド00の腕の一振りでティミッド0が3機落ちた。
搭乗員は脱出して無事である。
「俺の部下を酷い目にあわせやがって、てめえら。黙って見てろ」
ネトゲ廃人のディールギス0が、ティミッド0に空中から突撃する。
「絶対防御」
候補生の魔法でディールギス0が吹き飛び、ネトゲ廃人は地上に投げ出されるが、味方のゴーレムに救出されて、無事である。
「腕一本。道連れにしてやったぞ」
ティミッド00の腕が破壊され、絶対防御の力が弱まった。
「足を止めろ。魔法攻撃に切り替える」
ティミッド0は、氷魔法をティミッド00に打ち込むと足を氷付けにした。
「今だ。特攻隊を突撃させてティミッド00を破壊してしまえ」
ネトゲ廃人の命令通りに、ティミッド0の数機が、パイロットを脱出させてから、ティミッド00に突っ込んでいく。
「絶対魔法防御」
ドドーン。
恐ろしい轟音と共に、ティミッド00が破壊された。
爆発で帝都の訓練場は、見事にクレータが残ってしまった。
ティミッド0の半数が爆発に巻き込まれたが、候補生は無事である。
「余り役に立たないゴーレムだな。味方巻き込んでどうしろと言うの?」
訓練に参加した、ティミッド0は殆ど壊滅されて搭乗員は逃げ出した。
「流石に凄いな。逃げ出すのが遅れてたら、確実にあの世行きだ・・・」
ティミッド00の量産化は諦めるか、自爆システムは諦めた方がいい。
戦場でこのゴーレム使ったら、味方が大損害をうけるに決まってる。
「その大爆発で、誰も犠牲者がでないのは、流石にエルザス兵か」
スバらしい機動能力ではないかね。
ティミッド0の魔法能力で防ぎきった例もあるから、魔法で防御をする方法を早速研究する事にしよう。
「候補生諸君。見事であった。エルザス帝国に月給3千ディルスで雇われる気はないか?食事と家は国家が支給する」
リサは早速候補生を勧誘し始め、餌で部下釣りを始めた。
「どうしようかなぁ?キートン様は5千ディルスくれると約束してくれた」
大嘘だが、駆け引きは必要であるので、さほど気にはしない。
「6千ディルスだそう」
キートンの部下を買収出来るなら、1万8千ディルス程度惜しくはない。
「このゴーレムを俺達が盗み出すかも知れないぞ。良いのか?」
リサは頭を抱えたが、こいつらの裏切りを心配していたら身が持たない。
「そなたらを利用して、部下の訓練をしようとしてるのは私だからな」
リサは真一に、ティミッド0の増産をするように命令しておいた。
5月6日に、このティミッド0を訓練で7千を候補生3人で壊滅させた。
「キートンの手下は、チートな奴が多いのだな。乗る奴が違うと、ティミッド0、3機でここまで戦力に差がでるのか・・・」
ディールギスも7機倒されたぞ。
「こんな化け物がキートン王国にはゴロゴロしていやがるのか」
こいつのレベル250なのは間違えはない。
エルザス帝国の軍隊は鬼畜過ぎる。
「本気で譲位を考えた方が賢明かもしれないな」
90レベルで打ち止めになってると聞いたが、あっさり限界を突破した。
「キートン王国は平和な王国ですぜ。侵略などありえませんよ」
キートンの野望は、ドラゴン村を乗っ取った時に満足させていた。
リサが余計な事をするから、キートンも意地になって対抗する。
「あの人は養鶏家になる事で満足していたんです。ドラゴン村を乗っ取ったのは、経済封鎖で食ってく事が出来なかったせいでして」
何だと?
私が悪いと言いたいのか?
「ジーク村の大悪人事件では、かなりキートン様は怨んでいますよ」
「私はキートンの野望を早くから見抜いていた。
結局逆心を抱いていたのではないかと、リサは思うのだが、自業自得だ。
その時リサ姫に報告に兵士がやって来た。
「大変です。ゴーレムの残骸が黒覆面の兵士7名に奪われました」
一瞬リサも候補生達も、キートンの別働隊がやったと思った。
だがキートンなら、こんな悪役じみた方法で盗みは働かないだろう。
「俺達が知らないだけで、キートン様が別働隊を使った可能性はある」
候補生達は、一応無実を主張しておいたが、この状況では信じてもらえないのは明らかだろうと思う。
「そうか。そなたらは囮に使われたのだな」
一体何者だ?
シリアスの一部過激派が暴走したのか?
まあこのゴーレムはミスリル製だから、増産など出来ないし放っておこう。
大体キートン王国にしても、シリアスにしても、エルザス帝国に抵抗出来るミスリルを調達出来るものか?
不可能に決まってる。
無視して部下の訓練に励む事にしよう。
「ラビット。一応調査はしてもらうが、犯人がシリアスかキートン王国であったなら、余計な事をしないで調査を中止しろ」
「分かりました。黒覆面のアジトを調査して、どこかに運び込む前に決着をつけます」
盗み出されてから42分しかたっていないのだ。
敵の本拠地にゴーレムを運び込める訳がない。
ファーリでも無理だ。
「良かった。これで暫くは時間を稼げる」
リサに正体がばれてるからには、訓練以外でゴーレムに近付くのは不可能であるし、暫くはこの国に留まる必要があるだろう。
「リサ姫の作る料理は余り美味しくないな。宿屋で食事しよう」
リサ姫主催の晩餐会を断って、わざわざ宿屋で料理を食べた。
監視はつけられてない様だ。
「俺達の他にゴーレムを盗み出す奴がいたとはな・・・」
キートン様の放った密偵に思うか?
「キートン様はこんな方法で、泥棒はやらないと思いますよ」
黒覆面が、やたら怪し過ぎるではないか。
「だとしたら、シリアスか?エルザス本国では滅多に反乱は起きないし」
困ったな。
只でさえ正体がばれているのに、警備が厳重になってしまった。
これでは、キートン様の命令を遂行する事は出来ない。
「どうする?」
「命令は実行出来ない。無念だが夜逃げしよう」
5月15日の夜に、候補生は一斉に夜逃げを計った。
因みに犯人は帝国から出る事が出来ずに、南部のどこかに潜んでいる筈である。
そしてキートンは国中に命令をだし、ゴーレム奪取作戦の失敗を公言した。
候補生の無実は証明される事になる。
今日はぐっすり眠れました。




