キートン王国の躍進
この同時期に、バッタ村の長官をギルドで募集してZ卿が採用された。
バッタ村のギルドが推薦した、自称2千万ディルス稼げる男らしい・・・。
だったら自力で2千万ディルス稼ぐ訳にはいかないのかとも思ってしまうが、他人の個人情報に因縁をつけるのは、多分良くない事なのだろう。
「飛び地になるが、上手く領地を経営出来るのか?」
多分エルザス帝国が嫌がらせに、通行税とかを取り始めるだろう。
エルザス帝国の重囲を突破して、寒村ダークホース村にやって来れるのか?
「お任せください。モグリのZ卿とは俺の2つ名だぜ」
キートンはこのZ卿をバッタ村の長官に任命する事にしたが不安が残った。
モーガンを副官に命じて、バッタ村に行かせるが、全財産を没収される可能性が高いだろう。
それ故に、4月1日の税収の総額を見て、キートンは仰天した。
キートン王国総額8千万ディルスで、バッタ村が4千万ディルスである。
「何気に凄くないか?どうやって4千万ディルスもかき集めたんだよ?」
大半は闇で販売しているリサ姫ファンクラブのプレミア写真集の売り上げであるが、キートンにとっては、あの気紛れな小娘にそれだけの魅力があるとも思えず、懐疑的な目をZ卿に向ける事になった。
「キートン王国本国と、バッタ村の収入が同じだとはな」
キートンは己の無能ぶりに感涙きわまったが、今からでも遅くはない。
Z卿にはバッタ村を任せて、我々は本国の経営に努力する事にしよう。
「キートン様。兵士のレベルは75レベルにまで向上しました。流石にこの位が限界で、後は魔法でも覚えさせて、能力強化に励むべきです」
魔法薬もあるにはあるが、かなり高価で、一部の金持ちしか手が出ない。
「キートン様。シリアスには、民間用魔法薬もあることはあるよ」
キートンはシリアスで、安い物価の魔法薬の使用を決断した。
ファーリに使わせてみたらもっと強くなるかもしれないが、試してみよう。
キートン王国は、エルシリアを宰相に就任させたが経営が上手く以下ない。
「キートン様。私には国家の仕事は分不相応です。代りを用意してほしいのですが、可能なら早急にお願いいたします」
政治能力に才能があると思っていたら、わざわざエルザスから出奔しない。
「代りはいないんだ。我慢して俺の国を経営してくれ」
金貨をシリアスの企業に融資すると、キートンは寄付を募る事にした。
お金は幾らあっても足りる事はないのだ。
金持ちのリサ皇帝位なもんだろう。
金がありすぎて困ってる、羨ましい皇帝は・・・。
「皇帝陛下は、最近シリアスで買い物をよくしていらっしゃります」
4割引の魔法が存在するので、自ら買い物に来る傾向にあるようだ。
「節約のし過ぎで、国家予算が余って困っている」
だそうだ。
いらない金があるなら、西方に恵んでくれないだろうか?
いやもう無理だな。
独立してしてしまったからには、どこからも補給はうけられない。
「お金を貸したいとの申し入れがリサ姫からありましたよ。申し込んでみますか?キートン様の正体がばれなければ、あるいは」
シリアスで魔法薬を大量に買い占めたキートンはリサに金を借りに行った。
リサもキートンを見て、思うところはあったが、規定の金貨100万枚を、キートンに貸し付ける事になった。
こいつ、どの面下げて私にお金借りに来るのだと思ったに違いないが。
「キートン様。それでは帰りましょう。国を経営しないと」
その言葉を聞いて、シリアスのエルザス人は、一斉にキートンを見た。
あの男が、最近独立したキートン王国の初代国王なのか?
あの南部の危機を救って、南部に大豊作をもたらしてくれたと言う。
「俺じゃない。あれはファーリの手柄だ」
シリアスの住民はキートンを呼び止めて、待つ様に頼んだ。
「キートン様。お礼の寄付金をかき集めてきます。暫く待ってください」
シリアスの住民は、暫くするとオリハルコン硬貨を1万枚持ってきた。
「シリアスの国民の誠意です。どうか受け取ってください」
そりゃくれるなら受け取るけど、本当にいいのか?
「キートン様。国王冥利に尽きますね」
ホントにそうだ。
国民を大事にすれば、国王はぼろ儲けが期待できる天職なんだなぁ。
「感謝する。シリアスの住民も金持ちそうで、太守が羨ましいよ」
この国は無税の国だそうだが、議長が特権を甘受してない筈はない。
「キートン様。リサ姫といつか仲直り出来るといいですね・・・」
シリアスの国民は、キートンへの寄付を心から歓迎していた。
百万本の矢とか、皮などもキートンに寄付される。
「凄いなぁ。俺の名声はここまで広まっていたのか」
キートンはお礼に料理を振る舞い、4月1日は豚祭で盛り上がる事になる。
4月2日にキートンはファーリの高速馬車で寒村に帰っていった。
「ホントですか?国王になっただけで1億も民からもらえるんですか?」
国王も一度やったら止められない商売だな。
「俺も信じられん。新米国王の俺でこの金額なのだから、あの国民の人気が高いリサ姫なら、寄付金は物凄いのだろうな。
「最高額の時は、税収の半分を占めた時もあったそうです」
エルシリアがエルザス帝国の事情に詳しいところを見せた。
イリヤが不審げにエルシリアを見る。
「この人何者なんですか?」
「ふん。金貨をよく見てみろ」
エルシリアが止める前に、イリヤが金貨を見た。
イリヤの顔色が変わる。
「もしかして姫なのですか・・・」
エルザス帝国で姫などと呼ばれる奴は、リサの他には一人しかいない。
「キートン様は私の正体を知っているんでしょう?」
諦めたエルシリアはキートンに尋ねた。
何か嫌だが、今回はもう仕方がない。
「ルーシェリー卿だろ?何で偽名を使ってるのかは知らないが」
「それ、リサ姫の娘の事言っているんですよね?」
のんきにイリヤとキートンが話してた。
空気読まない奴め・・・。
正体がばれたら、リサ派から裏切り者扱いされるから、隠していたのに。
「まあ確かにいつまでも隠してる訳にもいきませんからね」
エルシリアは憮然としてキートンを見た。
少しは皇族の立場を分かってほしい。
「それだったら、何でキートン様とリサ姫は不毛な抗争を続けておられるのですか?リサ姫は自分の娘も信用出来ないほど、疑り深い人なのですか?」
その辺はリサ姫に聞いてみないと分からないけど、リサ姫は俺のみを排除したいと思ってるのではないだろうか。
でもそれやるとファーリが激怒するから不可能に近いと・・・。
「エルザス帝国の幹部には正体は知れ渡っていますけど」
まあ私がいるからキートン王国が無事とかはないと思う。
リサ姫は、敵に回ったら身内でも文字通り容赦ないのは、誰でも知ってる。
「へ~。エルシリアがルーシェリー姫だったとは思わなかったな」
「そだねぇ」
ラドンとファーリが、口々に感想を言い出す。
「て事は騙されて全財産失ったっての・・・」
キートンに取り入る芝居だとは思えないが、余りにオマヌケさんではないだろうか?
「あの時は助かりました。部下が夜盗に殺されて、困っていたんですよね」
その部下が西方出身だったので、西方までやってきて補償問題を片付けたら予算が少なくなってしまい、そこを付け込まれて全財産失った。
キートン様に雇ってもらわなかったら、餓え死に間違いなしな状況である。
「エルシリア。リサの下に帰っても構わないぞ。リサと敵対するのは、多分もう確実な事態に陥ってしまっただろうと思うし」
エルシリアの平手打ちがキートンをいきなり襲った。
ファーリの一撃ですら平気でかわすキートンが、エルシリアの攻撃をかわせずに、ぶっ倒れる。
「私はキートン様に忠誠を尽くします。母様は関係ありません」
「・・・」
何気にあのエルシリアって娘凄く強い。
私にはあの攻撃をかわせないと、ファーリは思った。
「悪かった。落ち着いてくれ・・・」
エルシリアは泣きながらキートンの背中をガシガシ踏みつける。
何気にあれは痛そうだな。
「ご主人様に酷い事しないで」
ファーリが転送魔法でキートンを移動させてから、ラドンとイリヤが2人がかりで、エルシリアを押さえ込む。
「エルシリア。それ以上血迷った真似するなら成敗するよ?」
エルザス人ではない私には、皇室に対して思い入れも少ない。
出来るだけ冷酷に、エルシリアに言い渡した。
この人倒すには、どれだけの損害が出るか分からんが、必要なら仕方ない。
「分かった。ご免ね。降伏する・・・」
エルシリアは、慌てて謝ると降伏の意思表示をした。
「キートン様。御免なさい」
エルシリアはキートンに謝罪するとさっさと謹慎してしまう。
「エルシリアも鍛えたら、私以上の豪傑になるわ」
ファーリが言うのだから、相当な腕前だろうな。
「キートン陛下。大丈夫ですか?」
ファーリがキートンを助け出すと、キートンを病院に担ぎ込んだ。
全く。
エルシリアも自分の能力に無自覚過ぎる。
我々が戦えば、この国に計り知れない損害を与えるぞ。
「それとイリヤ。リサの失敗は貴女を勧誘しなかった事だ」
エルフの漁師の娘だと聞くが、魔力の方も程々でディールギス0なら斬れるかもしれない。
「私そんなに才能ないですよ・・・」
こんなたわいのない話が、キートンの留守中に行われたらしい。
エルシリアの正体は瞬く間にエルザス中に広まってしまい本人を困らした。
というか、本人は謹慎してるから関係ない。
「キートン様。申し訳ありません・・・」
4月10日、病院から退院したキートンに土下座で平謝りしてキートンの家臣を仰天させた。
あの誇り高いルーシェリー様が、土下座でキートンに謝ってる。
あの人予言の英雄として、神の使徒との戦いに、大いなる期待をされた人なのだぞ。
目下のところ、予言の英雄が倒すべき敵は、リサの様な気がするが。
「ああ、命に別状はない。気にするな」
キートンもやや、エルシリアと距離をとりながら彼女に許しを与えた。
キートンもエルシリアの魔力の高さに気付いたらしい。
「私魔法薬を帝都にいた時に処方されましたから」
予言の英雄を促成培養する為に、知力と魔力から最大限に高められた。
御蔭さまで2歳になる頃には大人同様の理解力があったものである。
「あのバン公爵は夜盗に殺されたのか?」
報告を聞いたシエルは、状況を報告する為に、ダイヤの都に帰っていった。
あの男。
夜盗等に殺されるとは、本当に運のない。
「ルーシェリー姫。このラビットを覚えていますか?」
覚えている。
リピームの妹でしょう?
エルシリアの下に、ご機嫌伺いに来る部下達は同じ事を思った。
ルーシェリーを盟主にエルザスに反抗したら、出世は思いのままだと・・・。
エルシリアの正体なんて、バレバレですよね?




