西方独立
3月10日に、キートン王国は税金の不払いをエルザス帝国に宣言した。
表向きは財政難による支払い不能だが、ディルスは4億ほど集まってきており、エルザス帝国に納める税金に何の不足もないので、明らかな謀反だ。
エルザス帝国では、この不払い宣言に動揺したが、貢物を要求する権利の保持だけは何とか維持したが、西方は年々手におえなくなって来るようだ。
「いっそ独立を認めて、敵国扱いした方が扱い易いと思うのですが」
最近小麦の収穫期が訪れたが、火山の大噴火にもかかわらず大豊作だった。
今なら戦争しても良いのだが、多分キートンには勝てないと思うな。
「ドラゴンと戦闘データをとってみたんだがディールギス0なら勝てるぞ」
これは朗報だが、南部の火山灰吹き飛ばすような化け物に勝てるかなぁ?
噂じゃキートンはファーリより強いとも言われているんだぞ。
「心配するな。新型ゴーレムの開発をしてるところだ。今度の改良パーツの巨大ミスリル玉を装備させれば、誰でもファーリ並の魔法が使える」
「・・・」
この改良パーツがあれば、エルザスのゴーレム隊は無敵だぞ。
「・・・」
こんなゴーレムを造って戦争やって、畑が無事ですむと思うのか?
南部と西方の田畑を荒廃させる位なら、独立を認めた方がマシだ。
「西方との戦争に手柄を立てて、罪を償いたいと思うが、出陣の時はまだなのか?時間を置けば更に手に負えなくなる事は明白だぞ」
出陣するにしても、今は駄目だと思うが、何故それがわからない?
折角南部が大豊作なのに、戦争で田畑を失ってたまるか。
「キートンにディルスをせびろう。快く供出してくれるだろう」
リサはダイヤの都で、ゴーレム部隊の訓練をさせていた。
ファーリの魔法に耐えられるだけのゴーレムでないと造っても意味がない。
「才能のある奴はその場で出世させる。ファーリと戦う時はディールギス0が戦争の主力になるから、そう思って訓練に励め」
一応戦争の準備はしておくがもうキートン王朝の誕生は時間の問題だろう。
ファーリを犠牲無しで倒す事は出来ないに違いない。
「リサ姫。キートン国王から貢物です。お礼の品を受け取りたいと言っておりますが、何か下げ渡しておきましょうか?」
朝貢貿易の心算か?
まあ良いだろう。
「高価な品を与えるとよい。キートンを怒らすではないぞ」
キートンを怒らせて、独立されるよりはマシだ。
儲かったキートンからお金をせびりとれば、エルザス帝国の収入になる。
「シリアスに命令して、ミスリル鉱石の輸入とオリハルコンの輸入を頼む」
リサのゴーレム隊はネトゲ廃人の指揮の下、ディールギス0との戦闘訓練に入っていたが、ティミッド0の殺傷能力ではディールギス0の腕を吹っ飛ばすのが精一杯であるので、自爆攻撃の訓練をする。
勿論ディールギス0をゴーレムで押さえ込んでから、脱出を計るのだ。
「万一ファーリと戦う事になったら、まともな手段では勝ち目はない」
リサは西方との国境に、ゴーレム1万5千機を配備した。
殆ど外国化してしまった西方との戦に備える為だ。
「キートン様。兵8千でどうやったらゴーレム隊1万5千と戦うんです?」
寒村でこの事態を他人事の様に見ていたエルシリアが呟いた。
「リサは本気で俺を恐れてるらしい。そしてもっと恐れてるのはファーリだと思うんだが、流石にこの厳重警戒はどうかと思うな・・・」
調べではエルザス帝国の今月の税収は300億ディルスじゃないか。
寄付金だけでも50億ディルス追加だ。
あれだけ儲けられる国を持っていて、西方にこだわるのか?
月収300億も儲けて何が不満であの姫は戦火を撒き散らすのか分からん。
「ご主人様が怖いんだよ」
ファーリによればキートンはリサ皇帝より名君である。
そりゃリサも恐れるだろう。
「俺、リサ姫に逆らう心算は微塵も無かったのだがな」
だがこの状況では、誰が見ても謀反人だろう。
流石のキートンも、それ位は分かる。
もうどんな言い訳をしても無駄だろう。
「俺は謀反人になる決意をする事にしたよ。だが戦争は行わない」
こうなったら、エルザス帝国に逆らうしか、俺の生きる道はない。
「エルザス帝国から派遣された太守を解任しろ」
キートンはエルザス帝国への嫌がらせに、派遣太守共を解任してしまった。
キートンは独立を宣言する事になる。
キートンは常備軍を3千ほど募集して、都を守らせる事にした。
「キートン様はエルザスを敵に回す心算なのですか?」
エルザス帝国の使者が連日抗議に訪れたが、キートンは無視した。
大体、反乱の意思はないと言っても、信じる心算ないだろうが。
「我々はリサ姫に逆らう心算はありませんよ」
キートンは使者を追い返したが、買収はおこなっていた。
リサ姫に良い報告をしてくれるのを期待するだけだ。
「キートン様。エルザス帝国を敵に回して勝てるとでも思うのですか?」
使者が脅しにかかるが、キートンは無視した。
「キートン様。リサ姫を敵に回さない約束ですが、守って下さるのでしょうね?リサ姫と戦うなら、私もキートン様と戦うかも知れません」
エルシリアは常備軍3千を訓練しながらキートンに言った。
まあ当分はこの兵団をエルザス最強の軍隊にする事に熱中する心算だ。
大体反乱を決意して、数日で謀反の兵など整うものか。
「サキ。ゴーレムを300機注文する」
独立すると、常備軍を編成しないといけないから、予算がかかる。
3月15日にゴーレムは届いたが、このポンコツゴーレムでエルザス帝国に対抗出来るかは、かなり未知数だ。
「最近は小麦が多くて、物価が下がって俺は嬉しく思うぞ」
シリアスで売る事を進めると、エルザス帝国の金貨を奪い取ろうと企んだ。
最近シリアスには常備軍5万が駐屯しており、独立国家扱いだ。
「西方産の小麦は高値で売れますからねぇ」
シリアスの商人のウケもいいので、両者の利益になって、大満足だ。
「国王陛下。寒村だけでも無税復活させてもらえませんか?」
寄付金は支払うから無税を復活しろという意見が多かった。
キートンは寒村の税金無税を復活させる事にしたが、寄付金が多かった。
無税の方が総合的に考えて、国は潤うらしい。
「陛下の宮殿を建てる為に、寄付を募ってもよろしいでしょうか?」
住民がキートンにゴマをする為に、宮殿の建設を申し出た。
今の屋敷では、国王の住まいとしては手狭だからだ。
「構わぬぞ。どうせならダイヤの都に匹敵する宮殿にしてくれ」
「勿論です。リサ姫などに負ける心算はないですからな」
金持ちは早速寄付金を3時間でかき集めて、工事を始めだした。
どうやらお膳立ては出来上がっていて、許可待ちだったらしい。
「全く。国王思いの領民ぞろいだぜ」
キートンの治世により、国民の所得は向上してきた。
金さえ儲ければ、国王の統治に文句を言う奴は少ないだろう。
食糧は外国から買えば、どうとでもなる。
「キートン陛下。我々はキートン様の部下になれて幸せです」
領民がキートンにお世辞を言ったが、キートンは冷たくあしらった。
このツンデレぶりが、国民にはうけがいい。
「キートン様。どうか年貢の一部を受け取ってください」
小麦の袋が山のように積まれたが、キートンは貧しい国民に分配する。
民からの寄付金で貧民のご機嫌を取る。
何とも有難い人気取り作戦だ。
「キートン様、万歳・・・」
「国王陛下とリサ姫に栄光あれ~」
国民は一応エルザス人だから、リサにもある程度は気を使ってた。
「ご主人様。私が国軍司令官でホントにいいの?」
ファーリは独立後1万3千人にまで膨れ上がった常備軍の訓練を始めた。
訓練用に、弱そうな骨ゴーレムを用意させる。
普通の人間相手でもそれなりに戦える程度の強さに押さえ込んでいた。
「骨ゴーレムを倒して、レベルをアップさせろ。歩兵の強さを見せてくれ」
キートンの命令で、公開練習になった。
骨ゴーレムを倒しまくると、兵のレベルが4レベルにまで上昇する。
「大分強くなったわね。次は砂ゴーレムの相手をしなさい」
この程度の強さでは、エルザス兵には勝てる訳はなかった。
「ご主人様の兵として、恥ずかしくない程度には強くなりなさい」
ファーリの命令で、休憩を十分に取ると、砂ゴーレムに兵が挑んでいった。
「負けるものか。俺達はキートン陛下の親衛隊になるんだぁ」
キートンの常備軍は、砂ゴーレムを凄まじい気迫で怖気づかせると、頭に剣を突きつけた。
「ぐへ・・・」
ゴーレムは情けない悲鳴を上げてぶっ倒れる。
砂ゴーレムは一応精霊界に帰っていくのだろう。
「やったぞう。次の相手を出せ・・・」
こんな感じで訓練は続けられたが、3月20日までに、40レベル上がっただけであり、国軍8千はファーリ自らの指導により、平均40レベルに向上した。
ゴーレム兵の訓練は、手持ちのゴーレムが少なく、基礎訓練しか出来ない。
「お前らをティミッド0と互角に戦えるように訓練する」
ゴーレム兵に期待が出来ないなら、歩兵を育てるしかないのだ。
多分努力すれば、ティミッド0も人の力で倒せるようになるだろう。
昔アベルと部下達は、生身でディールギスを倒していた。
何とか真似しないと、西方はリサに滅ぼされてしまうからな・・・。
「良いか?俺の治世を見たかったら、1レベルでも上昇させるんだ」
キートンの兵になるたがる兵志願者は増える一方だが、兵が増えると団体行動に支障が出るので、後で志願してきた兵はミシェリア対策の為の監視兵に当てていた。
「国王陛下。3月25日までで、レベル65にまで上昇しました」
流石はファーリのスパルタ教育だ。
レベルの上がり方が半端じゃない・・・。
「明日一日は、休ませてあげて。これ以上訓練すると逆に疲れで気力を失って、レベルが下がる」
この短期間でレベル65まで上がれば十分だ。
「酒を飲ませてやれ。出来るだけ困窮度の高い店に注文するんだぞ」
イリヤが訓練で疲れきった体を起こして、酒を注文しに言った。
「この夜は、キートン様の国王即位の大宴会とする」
1万3千の兵は、この夜にキートンを称える宴を開いた。
兵士達のやる気が酒の影響で上がってくる。
宴会だと言っているのに、剣の稽古を始める奴まで現れた。
「止めないか。宴会は酒と肴だけ楽しめ・・・」
キートンに酷く怒られて、その兵士は酒を飲み始める。
キートン王国初代国王キートン一世は、兵士にお酌をして回っていた・・・。
スパルタ国の教育制度は、苛烈そのものだったらしい。




