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ファーリの望み

「お願いです。キートンを見捨ててエルザス帝国の家臣になってください」

シエルとリサが、土下座攻勢でファーリにエルザスへの帰属を要求した。

「リサ姫。あんた皇帝のくせに卑劣な謀ばかり。よく恥ずかしくないね?」

条件に真一とシエルの首を要求したら、この皇帝はどんな顔をするだろう?

「南部を立て直す為に尽力した恩を忘れて、私とキートン様を忙殺する気?

そんな事したら、ファリがダイヤの都を火の海にするよ。それでもやる?」

やりたくないから、土下座までして、ファーリにお願いしてるんだがな。

「ファーリ。貴女がどう思おうと、私達は平和を望んでいる事はご理解ください。お望みなら貴女に海洋国家を与えても良いと思っております・・・」

この馬鹿皇帝は金と領土さえ与えれば誰でも思いのままになると思うのか?

「ご主人様と分かれるのは、絶対に嫌だよ。私はお金や領土じゃ動かない」

こいつどこまでキートンの事が好きなんだろうな?

いっそキートンを人質にとっていう事聞かせたら一石二鳥じゃないか?

「分かった。ではキートン卿の口から私の命令を伝えよう。よろしいか?」

猫かぶりはかなぐり捨てて、やや高圧的にシエルがキートンに命令した。

逆らうようなら、都は没収である事を、あらかじめ言い含めてある。

「お断りします。ファーリは俺の部下だ。都はもっていくがいい・・・」

キートンはあっさりリサを裏切り、裏取引も暴露してしまった。

ここで都を募集したら、悪いのは私だけになってしまうではないか。

「キートン。そなた私を裏切るとどんな事になるか分かっているのか?」

リサが悪役らしくキートンを脅迫してきたが、キートンは黙殺した。

さっさとファーリを連れて都から立ち去ってしまう。

リサに恥をかかせる為に、リサの兵を都に駐留させ、明け渡してしまった。

「何だと?これでは部下の領地を難癖つけて取り上げた悪人ではないか」

リサは悔しがったが、寒村を拠点に活動を始めたキートンを、叱るだけ叱って、西方から逃げ出すしか方法が無かった。

キートンは思ったより手強い侮りがたい男であり、リサの手には負えない。

「シエル。キートンには私を愚弄した罪により、キートン村Aを没収する」

完全に八つ当たりだと思うが、リサの怒りは深刻なものだったようだ。

「キートンは寒村のみを残し、西方での地位を失ってしまう。

3月1日に西方全土で大規模なデモ行進が起こったが鎮圧は不可能だった。

都に駐屯しているリサの兵は3千しかいないので、50万に膨れ上がったデモ隊を鎮圧するのは、物理的に不可能なのである。

「リサ姫。どうしてファーリを脅すような真似をしたのですか?」

脅していないぞ。

最初はお願いした。

「最終的に脅せば、脅した事に変わりなくなるに決まってるじゃないか」

部下は次々にデモ隊に降伏して、武器はデモ隊に奪われる。

「抵抗すれば確実に内戦に突入しますよ。ファーリと戦うんですか?」

南部の食糧事情は悪く、今戦争をやったら敗北は間違えないだろう。

「狡猾なキートンの奴。私の無理難題を逆手にとって逆襲して来るとは」

ファー利を敵に回した事を後悔したがもう遅く、菓子折りもって詫びるしかなかったが、リサはこの任務をシエルに押し付けた。

「無理強いしてすみませんでした。ファーリ様は諦める事にいたします」

この土下座は物凄く嫌だったが、エルザス帝国の失策を最小限の被害で済ませるには、謝ってキートンとファーリのご機嫌をとるしかない。

「貴女も大変だね。あんな気紛れな皇帝の側近になると・・・」

「・・・。いつも気紛れと言う訳でもありません。あれで普段は名君です」

「へ~」

事を大きくする心算のないキートンは領地の返還を条件に和平に同意した。

西方からのエルザス帝国の全面撤退しか、もはや方法がないだろう。

「分かった。キートン領もギニア港もジーク村も全てキートンの領地だ」

リサは失敗を悟れば、諦めの良い人のようで、全面撤退に同意した。

釈放された味方の兵と、前面敗走する事になる。

この時から、西方は滅多に徴税の取立人がやってこない半独立国となった。

キートンは兵1万人とゴーレム部隊100機を国境に配備する。

デモ隊は3月4日にやっと無条件解散させた。


「何だと?デモ隊が解散してしまっただと?」

エルザス帝国に反旗ひるがえす勢力が、キートンの屋敷の地下の秘密の隠れ家で謀議を繰り広げていた。

「折角エルザス兵を騙して都に侵入させ、民衆を怒らす事に成功したのに、これではキートン王国が誕生しただけではないか」

不甲斐ないデモ隊めが。

せめてドサクサに紛れてリサを暗殺する位は期待してたんだが。

「気紛れなようで、案外慎重なのだよな。中々致命的なミスを犯さない」

反エルザス勢力の幹部達は味方の不甲斐なさに頭を悩ませていた。

あの馬頭の部下の愚かな都破壊事件から、キートンに反抗する勢力がめっきり減った。

部下を勧誘しても、10人中9人が、キートンの衛兵に密告に走る。

最初密告者を殺害していたら、誰も協力する者がいなくなった。

「仕方ないだろう。愚かな馬頭の部下の御蔭で部下が集まらないのだ」

爆弾で皆殺しにするような民主主義国家より、リサの方がマシなのだろう。

「鹿之助様。我らの味方はたったの130名。まともな手段で政権を奪取出来ると本気でお思いですか?傭兵でさえ金だけ貰って裏切る奴がいるのに」

信用されないと我々は、タダのテロリストになってしまうのではないか?

「何故大儀を持つ我々がテロリストなのだ?言葉に注意せよ」

進言した部下は牢獄に入れられた。

こんな事をしてるから味方が減るのだろうが鹿之助にはそれが分からない。

「西方の金持ちの屋敷を襲って軍資金を得るのは?金次第で味方につく勢力でないと、もはや信頼出来ません」

志願兵を受け入れたら、実は反乱摘発の囮捜査だという事もあったのだ。

あの時は危なかった。

「よし。世直しと称して、金持ちの屋敷を襲撃しよう」

西方共和国の残党らしき鹿之助一派は、ついに盗賊にまで落ちぶれた。


「キートン様。最近出没している鹿之助一派を討伐してください」

予告状と犯行声明文を残したにもかかわらず、一般的評価は盗賊団だ。

「あの邪悪な盗賊団を討伐してくれないと困ります」

別に殺人は滅多に行わないが、邪悪な盗賊団扱いである。

殺されたのも、盗賊団扱いした商店の店員にキレた鹿之助に斬られたのだ。

「鹿之助の首に100万ディルスの懸賞金をかけよう」

鹿之助は盗賊団の首領として、西方中の賞金稼ぎに狙われる事になった。

予告状を届けられた商店には、500名の傭兵が集結している。

ファーリも少数の兵を率いて、商店を守っていた。

「来たぞ」

3月6日の夜。

130名の西方共和国の残党が全軍を率いて、店を襲撃に来た。

「この兵と戦って、お宝を奪う心算なの?」

私もほしいものはあるけど、金貨はいらないなぁ。

「ファーリは無視しろ。部下だけ蹴散らせ~」

愚かにも鹿之助はこの兵力差で突撃を開始してきた。

一瞬傭兵達の手が止まる。

「反重力魔法」

鹿之助一味が傭兵を斬ろうとした時ファーリの魔法で盗賊達が吹き飛んだ。

「しまった」

鹿之助は攻撃の失敗を悟り、逃げ出そうとする。

大体、予告状など送りつけたら、普通はこうなるだろう・・・。

最近の時代劇みたいな襲撃の仕方で、予告状など送りつけて、本気でお宝を奪い取る心算なのか?

「世の中なめるんじゃないわよ」

ファーリは集団石化の魔法を使って、賊を全員石に変えてしまった。

味方も少々巻き込まれたが、解除魔法も存在する。

「さて。鹿之助。アジトを白状すれば命だけは助けてあげるよ」

「キートンの屋敷の地下だ」

観念した鹿之助は、アッサリと白状した。

部下は全員毒薬を賜る予定である。

「命は助けるわ」

ファーリは鹿之助と約束した。

「部下の苦しむ姿をたっぷり見せてあげるわ」

処刑とは、見せしめの意味もある。

ファーリの真意を悟った鹿之助は、顔を青ざめた。

そんな事をされたら、仲間を裏切って、自分だけ助かった卑劣漢である。

部下と対面したら、憎悪の視線を向けられるだろう。

「いっいやだ。それだけは止めてくれ・・・」

鹿之助はもう既に仲間を売った卑劣漢だが、本人は気付いていない。

「命乞いはご主人様にするのね」

ファーリは、ご主人様に鹿之助の助命を嘆願する心算である。

これほど酷い罰は古今東西例はない。

「お願いです。私を処刑してください」

この嘆願は無視して、改めてキートンに鹿之助の助命を嘆願した。

「部下を全員処刑して、首領だけ無罪放免と言うのか?」

キートンは躊躇うが、ファーリの望みである。

「二度と悪事が働けぬように、拘束の呪文をかけておきますから、逆らえば激痛が走り、誰にでも犯罪者である事が露見します」

そして助かる為に部下を売った男として、永遠に蔑まれるのだ。

「酷い罰を考えるものだな。鹿之助、異存はないな」

「ない訳、グギャアアア・・・」

全身に激痛が走り、鹿之助が悶え苦しんだ。

仕方なく同意の言葉を口にする。

部下の前でも同じ事をやらされた・・・。

「貴様。俺達を売って、自分だけ助かる心算なのか?」

否定しようとしても激痛が走るだけである。

「その通りです」

「裏切り者~。末代まで呪ってやるぞ」

「その辺にしておけ」

キートンが部下に毒酒を渡した。

キートンの部下が無理やり部下の口に毒を流し込む。

「ぐへ・・・」

部下は全員ほぼ即死した。

鬼の様な形相で、鹿之助を見ている。

「釈放しろ」

部下の遺族の憎悪の視線を、一身に受けながら、鹿之助は去っていった。

キートンの屋敷地下に隠していた財宝は発見され、持ち主に分配される。

こうして、鹿之助の乱はあっさりと鎮圧された。

キートンに反乱する勢力は、処罰を恐れて反乱を起こさなくなったらしい。

「まさかファーリの望みが鹿之助の命だったとはな」

リサのくれる海洋国家より、鹿之助の命を欲しがるとは、奇特な娘だ。

あんな真似までして、鹿之助に国民を殺された怨みを晴らしたかったのか。

ファーリの心情は誰にも分からない。

そして3月9日。

西方からエルザスと反乱勢力はほぼ一掃され、独立の気運が高まっていた。






鹿之助の乱はもう少し長めの話になる予定だったが・・・。

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