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エルザス帝国、播種量の逆襲

最近西方で食糧の倍増計画がエルフの成長促進の能力で可能になっていた。

今は冬であるが複合薬があれば、作物を収穫する事は物理的に可能である。

「西方太守。本気で冬に作物を収穫する心算ですか?」

キートンの策に懐疑的なエルフの部下達とリサは口々にそう反論した。

まあリサにとっては、キートンの無茶ぶりを止める心算は微塵もない。

キートンが植物の成長促進の強化に成功すれば本国で真似するだけである。

「播種量の多い小麦と米を増やす目的の他は使う気はない」

大体、こんな方法で作物を作ったって、経費がかかり過ぎるだろうが。

良い事を聞いた。

早速エルザス本国でも真似して食糧の大増産を計画しようとリサは思った。

最近領地経営を怠けていたから、ここらでエルザス皇帝の権力強化の為に、安い食糧の安定供給を考えないといけないのだが、頑張ってみよう。

「ルーン。エルフの部下に播種量の多い小麦の大量生産をやらせよ」

リサは最近の最高級の小麦を、大量生産型の小麦に掛け合わせると、成長促促成の魔法で、大量に種子を作り、南部の荒地に蒔いてみた。

この手で品質の良い小麦を大量生産すれば、苦労せずに収益が期待出来る。

「リサ姫。流石に俺もそれは思いつきませんでしたねぇ」

早速エルフの部下をかき集めて、食糧の種倍増計画に励む事にした。

一人当たり月給金貨80枚の大金で、昼夜と働かせるが、文句は言わない。

「リサ姫。あんたは鬼だ。よくもまあこんなに同族をコキ使えるモノだ」

こんな事を本人の目の前で言われる程度である。

「給料払ってるんだから、陰口を私の目の前で言うな・・・」

何で対価を支払ってるのに、苦情を言われないといけない?

病人も過労死も怪我人も今のところは発生していないのだから問題ないじゃないかと、私は思うのだが。

「悪口は幾ら言っても構わぬが、作業に支障がでるならクビにするぞ」

エルザス帝国の食糧増産の大儀が理解出来ない奴に用はない。

エルフの植物促成の技術は、既に流出しており、誰でも使える技術である。

この一件で、リサはエルフの村から出入り禁止にされていた。

「せめて作業後に酒を一杯飲ませてくださいよ。酒だけが楽しみなんです」

酒好きの邪神教徒の支配するエルザスでは、下戸は肩身がせまい。

「お前らに酒を飲ませたら、二日酔いで3日は起きて来ないだろうが」

一度従業員に酒を飲ませたら、作業効率がいちぐるしく低下したらしい。

「俺達は大丈夫ですよ。日を扱う鍛冶師だって、夜は酒を飲みますよ」

リサ姫だってたまには酒を嗜むらしいではないですか?

ご自分が飲むのに、他人の酒好きは嫌うのは、どうかと思いますよ。

「私は2杯も飲めない。私の下戸ぶりは有名だぞ。邪神教徒の再興大司教としては、恥ずべき事なのかもしれないがな」

分かったら、さっさと働け。

作業後に酒を飲もうが水を飲もうが、私の知った事ではないが、作業に支障が出るなら、クビか減給だからな。

「分かってますよ。定年退職するまでこの職に甘んじる心算なんですから」

まあそこまで私が皇帝やってるかどうかは、未知数だが。

認めたくはないが、多分近いうちにキートンに簒奪されるんじゃないかな?

「期待を裏切らないように、職務を勤めさせてもらおう」

この人が期待を裏切ったら、俺達失業するから絶対に認める訳にいかない。

万一キートンが反逆の兵を挙げても、最後まで抵抗を続けるぞ。

民の為になるかは、雇われ技術者の俺達には関係のない事だ。

俺達は雇い主を守る為だけに、外敵と戦う。

「キートンと戦う準備を整える為に、国境の街が軍備を整えています」

そんな報告もあるから、戦争は避けられないかもしれないなぁ。

「まあそなたらはのんびりと小麦の種子の生産をしてくれると良い。そなたらが努力すれば、私の在位が長くなるだろう」

エルフ達は一応納得して種子の促成栽培に乗り出した。

複合薬があれば、3秒で実ってしまう。

「楽しい事は楽しいですけどね。肥料さえ十分なら播種量800粒のこの小麦。小粒だけどね」

化け物みたいな収穫量だな。

米でも最近は500粒位が限界だと、言うのに・・・。

実は地道な農業改革の結果。

播種量はここまで進化を遂げていたのだが、全国的には小麦は不足気味。

惑星A1と惑星Cの小麦生産力でも、安い小麦は手に入らない。

都合の悪い事に、今年の春は飢饉が訪れそうであった。

飢饉が予測できれば、飢饉を回避する様な方法は幾らでもある。

「そんな訳だから、南部での飢饉回避の準備もしないといけない」

畑に電灯を用意して、夜中畑を照らしておこう。

そんな手段でも、多少は効果があるものだ。

今は冬だから、電灯の光を強化しておけば、完璧である。

今年は日照不足らしいから、電灯で少しでも生育を良くするのだ。

「ちゃんと小麦の管理を怠るな。育ちの悪い畑には電灯を使う」

大麻を電灯の光だけで育てた奴がいるのだ。

小麦を電灯の光で育てて何が悪いと言うのだ?

アンドロメダ星雲の支配者である、エルザス帝国を見くびるんじゃない。

台風だろうと、イナゴだろうと、私が皇帝であるうちは追い払ってみせる。

「その為にも小麦の品質は向上させないといけないのだが、畑に蒔くのは、飢饉が終わってからにしよう。

「中々の腕前だな。あんたは飾り物の皇帝かと思っていたんだが」

1月5日に、邪神教徒の付き添いで、キートンが都見物にやってきた。

ここで暗殺してしまえば、西方は終わるのだが。

「私は政務はフォートレスに任せきりだが、傀儡皇帝ではない」

私の役目は、民がいかに幸せに暮らせて、なおかつ私と部下が幸せになる方法を模索して、実行する事だ。

そう思うんだが、流石に西方を支配する事は無理だった。

ゴートンの能力には、期待していたのだが、あっさり民衆に殺されるとは思わなかった。

やはりあいつは軍人として、兵の1万も預けておくべきだった。

今更愚痴っても、遅すぎるが。

「西方はどうだ?上手く統治しているのか?」

リサはキートンに聞いたが、キートンは馬鹿にして答えた。

「誰かさんが西方を荒廃させたせいで、面倒な事になっている」

リサが悪いんじゃないが、どうにも西方は厄介である。

どうせ馬頭の残党が、再起を計る準備を密かに整えてるに決まってるだろ。

「そうか。幾ら必要だ?金で済むなら1億ディルスを出す事にするが」

有難いね。

リサは吝嗇のようで、手懐けると決めた相手には、太っ腹だな。

「豊かな地域は、寒村と都位なものだ。今荒地の開墾をやらせている」

可能ならば、複合薬を大量に西方に送ってほしい。

あの薬があれば、西方は再建出来るだろう。

「ドラゴン村の交易は再開させた。ドラゴン村もじき好景気になるだろう」

全く。

西方での私の名声を汚したゴートンを怨むぞ。

「じゃあ交易の品を買ったら、帰らせてもらう」

都で買った物を村で売ったら、凄い高値になると思うんだが。

「今回はファリにも来てもらってるからな。馬車に商品詰め込んだら、直に戻るさ。リサ姫も俺なんかを恐れるより、ドラゴンを恐れた方がいいぜ」

まあリサが恐れるようなドラゴンでは、エルザス兵では勝てないと思うが。

「忠告感謝する。オリハルコン硬貨1万枚を与えよう」

リサから軍資金を貰うと、ダイヤの都で商品を物色して購入した。

そして、さっさと帰っていく。

「何を怠けている。さっさと働け~」

怠けていたエルフの技術者を叱咤激励して、再び働かせた。

「あいつがキートンなのか?臆病者だと聞いていたが噂は当てにならない」

「あいつが俺達の敵になるのか?」

まだ決まってはいないが、キートンが背く日は近いだろう。

「心配しなくても、エルザス帝国の軍隊が俺達を守ってくれるだろう。

その期待はしない方が良いぞ。

エルザス帝国の軍隊は、かなり弱体化しているからな。

キートンの一万五千の兵にも勝てないかもしれない。

今は我々の人気を上げる作戦が必要なのだ。

民衆の結束が高まれば、私を守るべくキートンと戦ってくれるだろう。

「そうだ。食糧の値段を下げれば、キートンの謀反など怖くない」

「リサを簒奪者などに倒させてたまるか」

キートンがこれを聞いたら、怒り狂いそうだが、リサは止めない。

あの男をぶった切れたら、枕を高くして眠れるのだから。

「キートン殿はエルザスがスキさえ見せねば、反逆はしない・・・」

リサは取り合えず断言しておいた。

下手な噂をキートンが信じて、キートンが怒ったら戦争が始まる。

「そんな事より、飢饉対策だ。怪しげなところにはエルフを送り込め」

リサ配下の邪神教徒も農地に送り込まれた。

視察は誰にとっても大切な事である。

飢饉は、大地震か惑星衝突でも起こらない限りは、人知で防げる筈なのだ。

でなければ、指導者とは何の為にいるのか、分からなくなってしまう。

「姫。神様の予言では、飢饉の原因は日照不足のようですが・・・」

最近火山の活動が盛んな場所があるのだ。

それが南部の中央の不毛の荒野である。

人は住んでいない、水溜りの中に存在する火山島だ。

もし噴火でもしたら、南部帝都、サザニールの農業は、大凶作なのだ。

「噴火する予定があるのか?」

リサは聞いた。

「一応鹿の生贄を捧げて置きましたから、数年は大丈夫だと思います」

火の神は扱い易い事で有名だ。

だって動物の生贄ごときで噴火を思いとどまってくれるんだぜ。

「ですが多少は噴煙を抑えきれないらしく、近隣の村が日照不足になっております。直に部下を送ってください」

リサは早速飢饉を未然に防ぐ為に、火の神と交渉する事にした。

本当に扱い易い。

生贄を倍増すると言ったら、噴火の溶岩を出来るだけ抑えてくれると約束した。

火山灰も同様である。

結果。

1月7日に起こった大噴火の影響は、南部だけにとどまった。

予想に反して、火の神は噴火を抑える事は出来なかったようである。

「天災などに負けてたまるか?溶岩と火山灰は根こそぎ取り除け」

この国はファンタジーの国家である。

溶岩は冷やして全て取り除いて、ゴーレムにしてからその辺の岩惑星に捨てておこう。

リサはこの春来るかもしれない大飢饉に備えて、高給でエルフの新兵をギルドで募集する事にした。




この国で今まで天災が起きなかったのが不思議だ。

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