イズナのおうち
――ある日の朝。
ユイの家。
朝ごはんのあと。
「う〜♡」
おなか――
ぽんぽん。
「ごちそうさまは?」
「ごちそうさま♡」
「僕も、ごちそうさま!」
「…………。」
食器を片付けながら――
ぴたっ。
「そういえば。」
「う?」
「なに?」
「イズナの家。」
「イズナの……おうち?」
「うん。」
「イズナのおうち!」
「前に叔母さんが――」
『今度、みんな連れてきなさい』
「って言ってくれてたでしょ。」
「僕、いく!」
「まだ今日行くとは言ってないよ。」
「…………。」
「…………。」
「僕、いきたい。」
「言い直した。」
「うーちゃんも行ってみる?」
「うー……。」
少し考えて。
「イズナ、いる?」
「いるよ。」
「コヨリも?」
「もちろん。」
「…………。」
ぱあっ♡
「う〜♡」
「行く?」
こくん♡
「いく♡」
「じゃあ聞いてみよっか。」
* * *
少しして。
「――ってことで。」
『…………。』
「今日、大丈夫?」
『私は大丈夫だけど――』
奥から。
「連れてきなさい!」
「叔母さん、聞こえてるから!」
「ふふっ。」
『笑わないでよ。』
「じゃあ、お邪魔します。」
『うん。待ってる。』
イズナの家。
* * *
しばらくして――
ユイ。
うーちゃん。
カナタ。
三人で――
イズナの家へ。
「ここ!?」
「うん。」
「…………。」
「うー……。」
ユイの服を――
きゅっ。
「緊張してる?」
「…………。」
こくん。
「大丈夫。イズナもコヨリもいるよ。」
「…………。」
ピンポーン。
がちゃ。
「いらっしゃい。」
「イズナー!」
ぱあっ!
「おはよ、カナタ。」
「おじゃましまーす!」
たたたっ。
「カナタ。」
「?」
「靴。」
「…………。」
戻って――
そろっ。
「これでいい?」
「よし。」
「うーちゃんもおいで。」
「…………。」
ユイの後ろから――
ひょこ。
「うー……。」
「怖くないよ。」
「…………。」
ぺこっ。
小さな声で――
「おじゃま……します。」
「はい、どうぞ。」
「言えたね。」
「う〜♡」
奥から――
叔母さん。
「いらっしゃい。」
「お邪魔します。」
「こんにちは!」
「……!」
うーちゃん――
さっ。
ユイの後ろへ。
ぎゅっ。
「うぅ……。」
「あ……。」
叔母さんは――
近づきません。
少し離れたところから。
「こんにちは。」
「…………。」
ひょこ。
また――
隠れる。
しばらくして。
ひょこ。
「…………。」
「…………。」
「……こんにちは。」
「こんにちは。」
「…………♡」
また――
ユイの後ろへ。
「ふふっ。」
「あなたがカナタちゃん?」
「うん!」
「元気ねぇ。」
「僕、元気!」
「お菓子食べる?」
「食べる!」
「もう馴染んでる。」
* * *
そのとき。
奥から――
ぺた。
「…………。」
「…………!」
長い耳が――
ぴくっ。
「コヨリ♡」
ぺた。
ぺた。
ぺた!
コヨリのところへ――
むぎゅっ♡
「うーちゃん。」
「う〜♡」
「さっきまで隠れてたのに。」
「コヨリ見つけた瞬間だね。」
「…………。」
「コヨリ♡」
ぴとっ。
「…………。」
少し――
にこっ。
* * *
「イズナ。」
「なに?」
「みんなにお茶お願い。」
「はーい。」
すっ。
「…………。」
イズナが――
コップを用意。
一つ。
二つ。
三つ――。
「…………。」
じーーっ。
「…………。」
「お姉ちゃん。」
「ん?」
「何その顔。」
「いや。」
「?」
「ちゃんと家ではお手伝いしてるんだなぁって。」
「するよ。」
「へぇ〜。」
「だからその顔やめて。」
「イズナ、いつもしてる。」
「ほら。」
「コヨリのお墨付き。」
「最初から信じて。」
* * *
テーブルには――
お菓子。
「わぁ♡」
「…………。」
「僕、これ!」
「一人で全部食べないでね。」
「食べないよ!」
「コヨリ。」
「?」
「これ、好きだったでしょう?」
すっ。
コヨリの前へ――
お菓子。
「…………。」
「うん。」
「よかった。」
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
「…………。」
じーーっ。
「うーちゃん?」
「う?」
「どうしたの?」
うーちゃんは――
コヨリ。
イズナ。
叔母さん。
部屋。
順番に見ます。
「コヨリ。」
「なに?」
「ここ――」
床を、
ぺた。
「コヨリのおうち?」
「うん。」
「イズナも?」
「うん。」
「…………。」
二人を見て――
ぱあっ♡
「う〜♡」
「いっしょ♡」
「うん。」
「一緒。」
「えへへ……♡」
* * *
「うーちゃん。」
「……う。」
ぴくっ。
「これ、食べる?」
お皿を――
少し離れたところへ。
すっ。
「…………。」
ユイを見る。
「大丈夫。」
イズナを見る。
「おいしいよ。」
コヨリも――
こくん。
「…………。」
そーっ。
両手で――
受け取ります。
「…………。」
小さく。
「ありがとう。」
「どういたしまして。」
「…………。」
ぱくっ。
もぐ。
もぐ。
「…………!」
ぱああっ♡
「う〜♡」
「おいしい?」
「おいしい♡」
「よかった。」
* * *
「イズナ!」
「なに?」
「僕、イズナの部屋見たい!」
「え。」
「私も。」
「お姉ちゃんまで?」
がちゃ。
イズナの部屋。
「…………。」
「なに?」
「普通だ。」
「どういう部屋だと思ってたの?」
「もっと――」
「言わなくていい。」
「あ!」
「…………。」
「これなに!?」
「触らないで。」
「僕、見るだけ!」
「もう持ってる!」
「あ。」
* * *
部屋の一角。
コヨリが普段使っている――
小さなスペース。
クッション。
お気に入りのもの。
「…………。」
ぺた。
ぺた。
「コヨリ。」
「?」
「ここ、すき?」
「好き。」
「う?」
「落ち着く。」
「…………。」
コヨリの場所を――
もう一度見ます。
ぱあっ♡
「う〜♡」
「よかった♡」
「…………。」
なで。
「う〜♡」
* * *
しばらくして――
夕方。
「そろそろ帰ろっか。」
「えー!」
「もう夕方だよ。」
「僕、まだ遊べる!」
「明日も遊べます。」
「…………。」
床へ――
ぺたん。
「じゃあ僕、ここに住む。」
「ダメ。」
「なんで!?」
「ユイの家に帰りなさい。」
「即答。」
「うーちゃん。」
「う?」
「帰るよ。」
「うん♡」
ぺた。
ぺた。
でも――
ぴたっ。
「…………。」
叔母さんを――
ちらっ。
「?」
「うー……。」
「どうしたの?」
「…………。」
「うーちゃん。」
「?」
「また遊びに来てね。」
「…………。」
朝は――
ユイの後ろに隠れていた。
でも今は。
「…………。」
ぺこっ。
「また、くる。」
「うん。」
「…………。」
にこっ♡
「う〜♡」
* * *
帰り道。
「楽しかった?」
「うん!」
「僕、また行きたい!」
「うーちゃんは?」
「う〜♡」
「ユイ。」
「ん?」
「イズナのおうち――」
少し考えて。
「……あったかい♡」
「…………。」
にこっ。
「そうだね。」
* * *
そのころ――
イズナの家。
「にぎやかだったわね。」
「うん。」
「楽しかった。」
「また連れてきなさい。」
「うん。」
「うーちゃん、また来るって。」
「待ってないとね。」
「…………。」
いつもの家。
いつもの叔母さん。
いつものコヨリ。
でも今日は――
そこに、
みんなの笑い声が、
まだ残っているような気がします。
「コヨリ。」
「?」
「また呼ぼっか。」
「うん。」
家は――
帰ってくる場所。
そして。
大切な誰かに――
「おかえり」だけじゃなく、
「いらっしゃい」と言える場所。




