もういちど
――午後。
いつもの森。
「いくよー!」
たっ!
ふわっ――!
すーーーーっ。
「とんだ〜♡」
ふわっ。
ぽすっ。
「ただいま!」
「おかえり♡」
「次、私。」
「飛べないって。」
「…………。」
*
「うーちゃん。」
「?」
「こっち。」
たたっ。
「まって〜♡」
ぺた。
ぺた。
ぺた!
「あっ。」
ぐらっ。
「……!」
思わず――
手が動きます。
でも。
ぴたっ。
「…………。」
「ん……。」
ぐっ。
ぴたっ。
「…………!」
ぱあっ♡
そのまま――
ぺたぺたぺた!
「…………。」
にこっ。
*
「お姉ちゃん。」
「ん?」
「変わったね。」
「……私?」
「うん。」
「…………。」
少し笑って。
「ちょっとだけね。」
*
「コヨリ〜♡」
ぎゅっ!
「つかまった。」
「つかまえた♡」
「ぼくも!」
「!」
また――
いつもの時間。
でも。
*
ぴくっ。
コヨリの耳が――
ぴくっ。
「…………。」
「…………。」
「……コヨリ?」
「いる。」
その一言で――
全員が止まります。
「…………。」
「…………。」
「フレイ?」
「うん。」
*
ざわ……。
森の奥。
鳥の声が――
消えます。
「…………。」
知ってる。
この感じ。
この静けさ。
*
ずる……。
黒い靄。
ぎらっ。
赤い目。
「……!」
「こいつ……。」
「あのときの。」
逃げていった――
中級種。
*
「…………っ。」
ぺたん。
長い耳が――
下がります。
ぷる。
ぷる。
「うーちゃん……。」
「…………。」
*
「コヨリ。」
「うん。」
赤いペンダントが――
きらっ!
ぽうっ――!
――換装。
〈モデル・コヨリ〉
*
「カナタ。」
「…………。」
中級種を見る。
少し怖そうに――
それでも。
こくん。
「うん!」
*
青いペンダントと――
カナタの外套。
きらっ。
ふわあっ――!
――換装。
〈モデル・カナタ〉
「行くよ!」
胸の奥から――
『うん!』
*
ばっ!
中級種が――
動きます。
「来る!」
ドンッ!!
地面が――
抉れます。
「速い……!」
*
「イズナ、右!」
「うん!」
ユイが――
すーーっ!
中級種の横を抜けます。
ぎらっ。
敵の視線が――
ユイへ。
*
「今!」
ぽうっ!
ぽうっ!
ぽうっ!
ぼうっ!!
「――!」
黒い靄が――
大きく揺れます。
*
「効いてる!」
「うん!」
前より――
戦えている。
ユイとカナタ。
イズナとコヨリ。
二組の連携も――
前よりずっといい。
*
でも。
「――!」
ばっ!
「!」
「お姉ちゃん!」
ドンッ!!
「くっ……!」
ぎりぎりで――
かわします。
*
「大丈夫!」
その瞬間。
ぎらっ。
中級種の目が――
イズナへ。
「……!」
ばっ!
*
「っ!」
ドンッ!!
イズナの身体が――
地面へ。
「イズナ!!」
「…………!」
*
「……っ。」
起き上がります。
でも――
腕には傷。
「…………。」
30話と――
同じ。
*
「…………っ。」
ぷる。
ぷる。
治したい。
そのための練習もした。
でも。
本物は――
怖い。
*
「…………。」
頭の中に――
イズナの声。
『怖くなったら――』
『お姉ちゃんを呼ぶ。』
「…………。」
ユイを見る。
*
「……ユ……。」
ドンッ!!
「……っ!」
びくっ!
耳が――
ぺたん。
また――
声が止まります。
*
空中。
「…………!」
うーちゃんに――
気づきます。
震えている。
動けない。
「…………。」
戻りたい。
抱きしめたい。
でも――
*
34話。
小さな沢。
『じぶんで。』
「…………。」
すぐには――
戻りません。
ただ。
うーちゃんを――
見ます。
待ちます。
*
「…………。」
ユイと――
目が合います。
「…………。」
「…………っ。」
ぎゅっ。
小さな手を握って――
*
「……ユイ。」
「!」
もう一度。
今度は――
大きく。
「ユイ!」
「うん!」
*
「カナタ。」
胸の奥から――
『うん!』
「一回戻るよ。」
『うん。』
ふわっ――。
換装解除。
「…………!」
ぽすっ。
*
「お姉ちゃん!」
ぽうっ!
ぼうっ!!
狐火で――
中級種を止めます。
「今のうちに!」
「うん!」
*
ユイが――
うーちゃんの前へ。
「うーちゃん。」
「…………。」
まだ――
ぷるぷる。
ユイは抱き上げず。
すっ。
手を差し出します。
「どうしたい?」
*
「…………。」
傷ついた――
イズナを見る。
「イズナ……。」
「うん。」
「なおしたい。」
「うん。」
*
うーちゃんは――
自分から。
ユイの手を――
きゅっ。
「ユイ。」
「なに?」
「いっしょに……。」
「うん。」
「一緒に治そう。」
*
青いペンダントが――
きらっ!
うーちゃんのパーカーも――
ぽうっ。
ふわあっ――!
――換装。
〈モデル・うーちゃん〉
*
「イズナ!」
「お姉ちゃん!」
ユイは――
イズナのところへ。
すっ。
傷へ――
手をかざします。
*
「うーちゃん。」
胸の奥から――
『うん。』
『なおれ……。』
ぽうっ――。
優しい光が――
イズナの傷を包みます。
*
すうっ――。
傷が――
消えていきます。
「…………!」
胸の奥から――
『イズナ。』
「?」
『いたくない?』
*
イズナは――
腕を動かします。
「うん。」
「もう大丈夫。」
『…………!』
『よかった♡』
「治せたね。」
『うん♡』
でも――
*
『来る!』
「!」
ばっ!!
中級種が――
ユイへ。
「お姉ちゃん、避けて!」
*
「……!」
そのとき。
胸の奥から――
『…………。』
「うーちゃん?」
小さな声。
でも――
はっきりと。
『まもる。』
「え?」
*
『ユイも……。』
「…………。」
『いたいの、や。』
その瞬間。
ぽうっ――!
ユイの身体を――
淡い光が包みます。
*
ふわっ――。
ユイの周囲に――
半透明の光。
「……!」
ドンッ!!!
中級種の攻撃が――
直撃。
「お姉ちゃん!」
*
でも――
「…………!」
立っています。
光の結界が――
攻撃を止めています。
「……!」
『止めた……。』
「すごい……!」
*
「うーちゃん……。」
胸の奥から――
『…………?』
「これ、うーちゃんが?」
『…………。』
『わかんない。』
「…………。」
ふふっ。
「そっか。」
*
「――!」
ドンッ!!
結界が――
ばちっ!
「くっ……!」
無敵ではありません。
でも――
止められる。
*
「…………。」
イズナを見る。
イズナも――
ユイを見る。
「…………。」
姉妹は――
同時に気づきます。
「イズナ。」
「うん。」
*
「私が引きつける。」
「…………。」
「その間に――」
「分かった。」
「お願い。」
「任せて。」
*
「うーちゃん。」
『なに?』
「怖い?」
少し間があって。
『……こわい。』
「私も。」
『…………。』
「でも、一緒に行こう。」
『…………。』
『うん!』
*
ユイは――
中級種へ。
「こっち!」
*
「――!」
ドンッ!!
ばちっ!
結界が――
大きく揺れます。
もう一度。
ドンッ!!
「っ……!」
『ユイ!』
「大丈夫!」
中級種の意識は――
完全にユイへ。
*
その背後。
「…………。」
ぽうっ。
一つ。
二つ。
三つ。
四つ。
五つ。
狐火が――
一つへ集まります。
『イズナ。』
「うん。」
*
「――!」
さらにユイへ――
踏み込んだ、
その瞬間。
「お姉ちゃん!」
「!」
「離れて!」
「うん!」
ばっ!
ユイが――
横へ。
*
「――!?」
その先には。
イズナ。
「今度は――」
炎が――
大きく燃え上がります。
「逃がさない!」
ぼうっ!!!
ドンッ――!!
「――――!!」
黒い靄が――
炎に包まれ。
すうっ――。
消えていきます。
今度は――
逃げませんでした。
*
しーん……。
森に――
静けさ。
「…………。」
「……終わった。」
ふわっ――。
結界が消えます。
そして――
換装解除。
ぽすっ。
「…………。」
*
「うーちゃん。」
でも。
うーちゃんは――
ぺた。
ぺた。
ぺた!
イズナのところへ。
「イズナ。」
「なに?」
「いたくない?」
「うん。」
「もう痛くないよ。」
「…………。」
ぱあっ♡
「なおせた♡」
「うん。」
なで。
なで。
「ありがとう。」
「えへへ♡」
*
「うーちゃん!」
「?」
「さっきの、すごかった!」
「さっき?」
「ぴかーって!」
「…………?」
「ユイを守ってた。」
「…………。」
くるっ。
ユイを見る。
*
「ユイ。」
「ん?」
「いたくなかった?」
「…………。」
にこっ。
「うん。」
「痛くなかったよ。」
「…………!」
ぱああっ♡
ぺたぺたぺた!
ぎゅっ♡
「まもれた♡」
「うん。」
ぎゅっ。
「守ってくれたね。」
*
怖くなくなったわけじゃない。
それでも――
怖い中で、
名前を呼べた。
手を伸ばせた。
傷を治せた。
そして――
大切な人を、
守ることができた。
「えへへ♡」




