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34/45

まもりたい

――翌朝。

ユイの家。

うーちゃんは、床に置いてある――

小さなバッグを、両手で持ち上げようとしていた。

「よいしょ……。」

「ん〜……。」

そこへ。

「あ、うーちゃん。」

「?」

「持つよ。」

ひょいっ。

「…………。」

「重かったでしょ?」

「……うん。」

*

玄関。

「よいしょ。」

うーちゃんは、自分で靴を履こうとして――

「あ、待って。」

ユイがしゃがんで、

「やってあげる。」

「…………。」

その隣では――

「できた!」

「カナタ早いね。」

「うん♡」

うーちゃんは、自分の足元を――

じっ。

「はい、できた。」

「……ありがと。」

*

「じゃあ行こっか。」

「いこー!」

「いこ♡」

ぺた。

ぺた。

三人で――

いつもの森へ。

いつもの五人。

*

「おはよ。」

「おはよう。」

「おはよー。」

「おはよ!」

「コヨリ〜♡」

ぺたぺたぺた!

*

「おはよ♡」

ぎゅっ。

「おはよ。」

「今日は元気そうだね。」

「うん。」

「げんき♡」

*

少しして――

「あ!」

道の向こうに、

小さな花。

「あっち♡」

ぺたぺた。

「あ、待って。」

「?」

「私も行く。」

「…………。」

「ほら。」

きゅっ。

手をつなぎます。

「……うん♡」

「…………。」

*

少し大きな石。

「のぼる!」

よいしょ。

「私も。」

ひょいっ。

「…………。」

「うーちゃんも♡」

よいしょ……。

短い足を――

ぐっ。

「あ、危ないよ。」

ひょいっ。

「!」

*

ぽすっ。

石の上。

「はい。」

「…………。」

「登れたね。」

「…………。」

「…………。」

「…………。」

*

今度は――

降りようとします。

「よいしょ……。」

「待って待って。」

ひょいっ。

ぽすっ。

「危ないからね。」

「…………。」

*

「お姉ちゃん。」

「なに?」

「最近――」

うーちゃんを見る。

「ちょっと、やりすぎじゃない?」

「何が?」

*

「抱っこ。」

「…………。」

「すぐ抱っこする。」

「そう?」

「する。」

「いっぱいする!」

「だっこ、すき♡」

「ほら。」

「そういう話じゃない。」

「…………。」

「?」

「お姉ちゃん。」

少しだけ――

真面目な顔。

*

「あの日からでしょ。」

「…………。」

あの日。

黒いフレイ。

動けなくなった――

うーちゃん。

「…………。」

*

「だって……。」

「うん。」

「また怖い思いしたらって。」

「…………。」

「ケガしたらって思ったら……。」

「うん。」

*

「まだ小さいし。」

「…………。」

「私が守れることなら――」

うーちゃんを見ます。

「守ってあげたい。」

「ユイ……。」

*

「分かるよ。」

「…………。」

「でも。」

少し離れたところでは――

カナタとコヨリが、

自分たちで遊んでいます。

「全部やってあげたら。」

*

「うーちゃん。」

「?」

「自分でできることも――」

「…………。」

「できないままになっちゃうよ。」

「…………。」

*

ユイの頭に――

あの日の声。

『うーちゃん……』

『なにも、できなかった。』

「…………。」

うーちゃんは――

自分の両手を見ています。

*

「…………。」

ぽつり。

「難しいね。」

「何が?」

「守るのって。」

「…………。」

少し笑って。

「うん。」

*

しばらくして――

五人で森の奥へ。

「あ!」

小さな沢。

さら。

さら。

「みず!」

*

沢には――

向こう岸まで続く、

小さな飛び石。

「いく!」

ぴょん!

「気をつけてね。」

「うん!」

*

「私も。」

ぴょん。

ぴょん。

「コヨリ、はやい!」

「普通。」

二人は――

向こう岸へ。

*

「…………。」

飛び石を――

じっ。

「うーちゃん?」

「…………。」

一歩。

前へ。

*

「渡りたい?」

「うん。」

「じゃあ――」

両手を伸ばして。

「抱っこする?」

「…………。」

*

いつもなら――

両手を広げて、

「だっこ♡」

でも。

「…………。」

ふるふる。

「?」

「じぶんで。」

「…………。」

*

「自分で?」

「うん。」

飛び石を見る。

「やってみる。」

「…………。」

心配。

でも――

「分かった。」

*

「…………。」

よいしょ。

ぴょん。

ぺたっ。

「!」

「できた!」

「あとちょっと。」

「うん♡」

*

次の石。

「よいしょ……。」

ぴょん。

ぐらっ。

「……!」

「うーちゃん!」

思わず――

手が伸びます。

*

その手を――

すっ。

イズナが止めます。

「イズナ。」

「…………。」

うーちゃんを見る。

「…………。」

ぐっ。

自分で――

踏ん張ります。

*

「…………!」

ぐらぐら。

そして――

ぴたっ。

「…………。」

ぱあっ♡

「できた♡」

「できたー!」

「…………。」

ほっ。

*

残る石は――

あと一つ。

でも。

少しだけ、

遠い。

「…………。」

さっきまでより――

長く見つめます。

*

「…………。」

耳が――

少し下がります。

「うーちゃん。」

「?」

ユイは――

抱き上げません。

代わりに。

すっ。

手を差し出します。

*

「ここにいるよ。」

「…………。」

「怖かったら、呼んで。」

33話と――

同じ言葉。

「…………。」

「でも。」

にこっ。

「できそうなら、やってみて。」

*

「…………。」

向こう岸を見る。

カナタ。

コヨリ。

そして――

ユイ。

「…………!」

たっ!

ぴょん!

ぽすっ!

*

「…………。」

自分の足。

向こう岸。

「…………!」

ぱああっ♡

「できた〜♡!」

「できたー!」

「できたね。」

「うん!」

ユイも――

満面の笑顔。

*

次の瞬間。

「ユイ〜♡」

ぺたぺたぺた!

ぎゅっ♡

「わっ。」

「だっこ♡」

「自分で渡った直後なのに?」

「だっこする♡」

「ふふっ。」

ひょいっ。

ぎゅっ♡

「えへへ♡」

「ぼくも!」

「カナタは歩いて。」

「えー!」

「私も。」

「増えないで。」

みんなの笑い声。

ユイは――

腕の中のうーちゃんを見ます。

守りたい。

ずっと――

そう思っている。

でも。

手を伸ばすことだけが、

守ることじゃない。

ときには――

その小さな一歩を、

信じて待つことも。

きっと――

守ることだから。

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