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第11話 うーちゃんの力

その日の朝――。

窓から、

やわらかな光。

ユイ

「…………。」

ベッドの上で、

自分の手を――

じーーーっ。

ユイ

「昨日……。」

手のひらを、

ぎゅっ。

ユイ

「ほんとに私が

治したんだよね。」

昨日。

傷ついたイズナの腕。

そこを包んだ、

淡い青色の光。

そして――

消えていった傷。

ユイ

「…………。」

その横では――

うーちゃん

「すぅ……♡」

まだ、ぐっすり。

ふと。

ユイは隣を見る。

昨日イズナが使っていた

紫色のお布団は――

もう空っぽ。

ユイ

「……イズナ、

もう起きたんだ。」

しばらくして――

うーちゃん

「……う〜。」

もぞ。

むくっ。

ユイ

「おはよう、うーちゃん。」

うーちゃん

「……おはよ♡」

ユイ

「ねえ。」

「昨日のこと、

覚えてる?」

うーちゃん

「…………。」

自分の両手を――

じーーーっ。

うーちゃん

「……なおした。」

ユイ

「うん。」

うーちゃん

「イズナ、なおした♡」

ぱあっ♡

ユイ

「ふふっ。」

なで。

なで。

ユイ

「一緒にできたね。」

うーちゃん

「えへへ♡」

そのとき――

部屋の外から。

コヨリ

「イズナ、それ私の。」

イズナ

「分かってるって。」

うーちゃん

「!」

長いたれ耳が――

ぴくっ!

うーちゃん

「コヨリ♡」

ぽすっ。

ベッドから降りて――

ぺたぺたぺたっ!

ユイ

「あ、うーちゃん。」

ユイも後を追って、

リビングへ。

そこには――

すでに起きている

イズナとコヨリ。

イズナ

「おはよ、お姉ちゃん。」

コヨリ

「おはよう。」

ユイ

「二人とも早いね。」

イズナ

「お姉ちゃんたちが

遅いんだよ。」

うーちゃん

「コヨリ♡」

ぎゅっ♡

コヨリ

「わっ。」

イズナ

「朝から元気だね。」

ユイ

「イズナ。」

イズナ

「ん?」

ユイは――

昨日、傷ついた腕を見ます。

ユイ

「……ほんとに大丈夫?」

イズナ

「うん。」

袖をまくって――

イズナ

「ほら。」

ユイ

「…………。」

傷は――

ありません。

ユイ

「…………。」

ほっ。

ユイ

「よかった……。」

イズナ

「もう痛くないよ。」

ユイ

「それでも心配するの。」

イズナ

「ふふっ。」

ユイ

「それで。」

イズナ

「?」

ユイ

「昨日のこと。」

イズナ

「うん。」

ユイ

「ちゃんと教えて。」

イズナ

「…………。」

ユイ

「換装のことも。」

「うーちゃんの力のことも。」

そして――

ちらっ。

うーちゃんとコヨリを見る。

ユイ

「そもそも……。」

「この子たちって、

何なの?」

イズナ

「…………。」

少し間があって――

イズナ

「精霊だよ。」

ユイ

「…………。」

ユイ

「精霊?」

イズナ

「うん。」

イズナは、

コヨリを見る。

イズナ

「コヨリも。」

そして――

うーちゃんを見る。

イズナ

「うーちゃんも。」

ユイ

「…………。」

もう一度。

うーちゃんを見る。

うーちゃん

「?」

コヨリにくっついたまま、

きょとん。

ユイ

「…………。」

ユイ

「うーちゃんが……精霊。」

うーちゃん

「うー?」

ユイ

「……なんか思ってたのと違う。」

イズナ

「精霊にどんなイメージ持ってたの?」

ユイ

「っていうか!」

イズナ

「?」

ユイ

「そんな大事なこと、

聞いてないんだけど!」

イズナ

「聞かれてないし。」

ユイ

「出た!」

イズナ

「ふふっ。」

ユイ

「その返し禁止!」

その横で――

うーちゃん

「?」

コヨリ

「いつもの。」

うーちゃん

「いつもの♡」

ユイ

「いつものにしないで!」

イズナ

「それで。」

赤いペンダントを――

とん。

イズナ

「精霊には、

それぞれ力がある。」

ユイ

「力……。」

イズナ

「例えばコヨリなら――」

コヨリ

「ぽうっ。」

ふわっ。

小さな狐火。

うーちゃん

「きらきら♡」

イズナ

「狐火。」

ユイ

「じゃあ……。」

昨日のことを思い出します。

ユイ

「うーちゃんは――」

イズナ

「昨日のお姉ちゃんは、

傷を治した。」

ユイ

「うん。」

イズナ

「たぶん――」

うーちゃんを見ます。

イズナ

「それが、

うーちゃんの力。」

ユイ

「治す力……。」

二人で――

ちらっ。

うーちゃんを見る。

うーちゃん

「…………?」

おもちゃを持ったまま、

きょとん。

ユイ

「…………。」

ユイ

「なんか納得。」

イズナ

「でしょ。」

うーちゃん

「?」

ユイ

「じゃあ、換装は?」

イズナ

「精霊の力を借りるためのもの。」

ユイ

「…………。」

イズナ

「私がコヨリと換装すると、

コヨリの狐火が使える。」

ユイ

「それで昨日……。」

イズナ

「そう。」

ユイ

「私がうーちゃんと換装したから――」

自分の手を見る。

ユイ

「うーちゃんの治す力が

使えた……。」

イズナ

「たぶんね。」

ユイ

「たぶん?」

イズナ

「私だって全部知ってるわけじゃないよ。」

ユイ

「…………。」

ユイ

「じゃあ――」

すくっ。

イズナ

「?」

ユイ

「練習しよう!」

イズナ

「今から?」

ユイ

「昨日みたいになってからじゃ

遅いでしょ。」

イズナ

「それはそうだけど。」

ユイは、

うーちゃんを見る。

ユイ

「うーちゃん。」

うーちゃん

「?」

ユイ

「もう一回、

一緒にやってみよう。」

うーちゃん

「……いっしょ♡」

青いペンダントが――

きらっ。

うーちゃん

「ユイ♡」

ユイ

「うん。」

手を――

きゅっ。

ふわあっ――!

うーちゃんの小さな身体が、

淡い光へ。

長いたれ耳も。

小さな手も。

光の粒になって――

ユイの胸元へ。

そして。

光がユイを包みます。

制服の上に現れる――

アイボリーのパーカー。

大きなピンクリボン。

カンガルーポケット。

小さなにんじんマーク。

〈モデル・うーちゃん〉。

ユイ

「よし。」

イズナ

「で?」

ユイ

「え?」

イズナ

「何するの?」

ユイ

「…………。」

ユイ

「練習。」

イズナ

「何の?」

ユイ

「…………。」

しーん。

ユイ

「と、とりあえず――」

すっ。

構えます。

ユイ

「戦う練習!」

イズナ

「…………。」

コヨリ

「…………。」

ユイ

「なに、その顔。」

イズナ

「お姉ちゃん。」

ユイ

「なに?」

イズナ

「うーちゃん、

戦いたそうに見える?」

ユイ

「…………。」

ユイの頭の中。

ぽて。

うーちゃん

「すぅ……♡」

お昼寝。

次は――

ぱっ♡

うーちゃん

「だっこ♡」

そして――

にんじんを、

じーーーーーっ。

うーちゃん

「おなかすいた……。」

ユイ

「…………。」

現実へ。

ユイ

「……見えない。」

イズナ

「でしょ。」

ユイ

「でも、換装するなら

戦わないと。」

イズナ

「誰が決めたの?」

ユイ

「え?」

イズナ

「コヨリは狐火が得意。」

コヨリ

「うん。」

イズナ

「だから私は、

それを使って戦う。」

ユイ

「…………。」

イズナ

「でも――」

「うーちゃんは違う。」

イズナ

「敵を倒すだけが

力じゃないよ。」

ユイ

「…………。」

イズナ

「傷を治せるなら――」

昨日の夜。

イズナの腕を包んだ、

淡い青色の光。

イズナ

「誰かを助けられる。」

ユイ

「助ける……。」

イズナ

「それが――」

少し笑って。

イズナ

「うーちゃんの強さなんじゃない?」

ユイ

「…………。」

胸元の青い宝石が――

きらっ。

声ではないけれど。

なんとなく――

伝わってきます。

あったかい。

やさしい。

誰かが痛いのは、いや。

ユイ

「…………。」

ふふっ。

ユイ

「そっか。」

ユイはパーカーの

にんじんマークを――

そっ。

撫でました。

ユイ

「じゃあ、

治す練習をしよう。」

イズナ

「それはいいけど――」

ユイ

「?」

イズナ

「誰を治すの?」

ユイ

「…………。」

イズナ

「誰も怪我してないよ。」

ユイ

「…………。」

しーん。

ユイ

「…………。」

ちらっ。

イズナ

「…………。」

ユイ

「イズナ。」

イズナ

「やだよ。」

ユイ

「まだ何も言ってない!」

イズナ

「絶対ろくなこと考えてない。」

ユイ

「ちょっとだけ怪我――」

イズナ

「却下。」

ユイ

「ですよね。」

コヨリ

「当たり前。」

ユイ

「じゃあ、どうやって

練習すれば……。」

イズナ

「昨日、何を考えてた?」

ユイ

「え?」

イズナ

「力が出たとき。」

ユイ

「…………。」

傷ついたイズナ。

うーちゃんの――

『……いたい。』

ユイ

「……治したいって。」

イズナ

「それ。」

ユイ

「?」

イズナ

「たぶん、力だけ出そうとしても

ダメなんだと思う。」

「精霊と同じ気持ちになること。」

ユイ

「同じ気持ち……。」

イズナ

「昨日は、お姉ちゃんもうーちゃんも――」

イズナ

「私を助けたいって思ってた。」

ユイ

「…………。」

胸元が――

ぽかっ。

ユイ

「今日はここまでにしようか。」

青い宝石が――

きらっ。

パーカーが、

淡い光へ。

ふわ……。

光がユイから離れて――

ぽんっ。

ユイの前に。

ちょこん♡

うーちゃん

「…………。」

いつものうーちゃんが

戻ってきました。

ユイは、

うーちゃんの前にしゃがみます。

ユイ

「うーちゃん。」

うーちゃん

「?」

ユイ

「昨日、怖くなかった?」

うーちゃん

「…………。」

少し考えて――

うーちゃん

「イズナ……いたかった。」

ユイ

「うん。」

うーちゃん

「なおしたかった。」

ユイ

「…………。」

ユイ

「そっか。」

そっと――

ぎゅっ。

うーちゃん

「う〜♡」

ユイ

「じゃあ、これから

一緒に覚えていこう。」

うーちゃん

「いっしょ♡」

ユイ

「うん。」

なで。

なで。

ユイ

「うーちゃんの――」

「まもる力。」

うーちゃん

「……まもる?」

ユイ

「そう。」

うーちゃんは少し考えて――

にぱっ♡

うーちゃん

「まもる♡」

その横では――

コヨリ

「…………。」

イズナ

「どうしたの?」

コヨリ

「うーちゃん、嬉しそう。」

うーちゃん

「えへへ〜♡」

イズナ

「ほんとだ。」

ユイ

「よーし。」

すくっ。

ユイ

「私も頑張らないと!」

イズナ

「まずは換装に慣れるところからね。」

ユイ

「分かってるって。」

イズナ

「ほんとに?」

ユイ

「ほんと!」

うーちゃん

「がんばる♡」

コヨリ

「……うーちゃんが一番やる気ある。」

みんなの笑い声が、

朝の部屋に広がります。

うーちゃんとコヨリ。

姿も違う。

できることも違う。

だけど――

二人とも「精霊」。

そして。

その力を借りるのが――

「換装」。

ユイはまだ、

知らないことばかりです。

精霊とは、何なのか。

ペンダントは、なぜ光るのか。

そして――

フレイとは、いったい何なのか。

でも今は。

ユイの腕の中で笑う、

小さな精霊の女の子。

その子が持っている、

やさしい力を。

もう少しだけ――

知りたいと思いました。

青と赤。

二つのペンダントが――

きらっ。

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