第9話 西山の山賊 ― Bandits of the Western Hills
オズワルドが城を訪れてから二日後、夜明け前の執務室には、まだ朝というより夜の名残が濃く残っていた。窓の外には薄い霧が漂い、山側から流れ込む湿った空気が石壁を冷やしている。暖炉へ新しい薪を入れたばかりで火の勢いはまだ弱く、焦げた樹皮の匂いと湿った外套の匂いが混ざる中、セレナは机いっぱいに広げられた西部山地の地図を見下ろしていた。
向かいにはガレスとローヴェル、少し離れたところにはハロルドがいる。
「現場には八人」
ローヴェルが地図の一点を指した。
「昨日まで確認できた人数です。岩を掘っているのが四人、道具と荷を扱うのが一人、見張りが二人。残り一人が全体を見ています」
「監督役?」
「そう見えます。ただ、誰の部下かはまだ」
「ヴァルツ側から物が来てることは?」
「そこまでは確かです」
セレナは頷いた。
ヴァルツ子爵領から物資と金が流れている。しかし、それだけだった。ヴァルツ子爵本人の命令書があるわけでもなければ、現場の人間がヴァルツ家の紋章を身につけているわけでもない。
「退路は?」
ガレスが尋ねると、ローヴェルの指が地図の上をゆっくり滑った。
「三つです。南東へ下れば街道、西へ抜ければ領境、北側は沢。昨日の雨で水が増えていますから、北へ逃げる可能性は低いでしょう。エドガーは西側を見ています」
ガレスはしばらく地図を見つめたあと、太い指で三方向を順番に押さえた。
「二十人あれば十分です」
「多すぎない?」
「殺すだけなら十人でも足ります」
ガレスは淡々と答えた。
「ですが、逃がさず、生け捕りを優先するなら二十は欲しい」
その言葉を聞き、セレナは顔を上げた。
以前なら、ガレスが兵を出すと言えばまず理由を問い、人数を削ろうとしただろう。しかし今回は、地図に記された小さな点の向こう側に、自分の領地へ無断で入り込み、武装したまま山を掘っている者たちがいる。
「分かったわ」
ガレスの眉がわずかに動いた。
「……よろしいので?」
「何が?」
「兵を出します」
「ええ」
「止められないのですな」
セレナは少しだけ口元を緩めた。
「うちの山に武装した山賊がいるんでしょう?」
今度はローヴェルがセレナを見る。
その視線に気づき、セレナは肩をすくめた。
「所属が分からない。領内に入る許可もない。武器を持って山の中に潜んで、勝手に石を掘ってる。違う?」
「……事実だけを並べれば、その通りです」
「じゃあ、今のところ山賊ね」
ハロルドが小さく息を吐いた。
「なるほど」
「何?」
「いえ、何も」
明らかに何かを察した顔だったが、セレナは追及しなかった。
「ただし、殺しに行くんじゃないわ」
声から冗談めいた響きを消し、ガレスをまっすぐ見た。
「逃げ道を塞いで、まず降伏させて。抵抗しない者まで傷つける必要はない」
「承知しました」
「そして、私も……」
「ダメです」
ハロルドがセレナが最後まで言う前に却下して、セレナが睨めつけようがすました顔で無視しているハロルド。
「はぁ……。こちらの兵も、できるだけ傷つけないで」
ガレスは一瞬だけ黙り、それから頷いた。
「そのための二十人です」
◇
山の朝は、城よりさらに遅かった。
東の空が白み始めても谷間には夜の冷気が溜まり、兵たちが濡れた落ち葉を踏むたびに、靴底の下から湿った音が小さく上がる。土の匂いは濃く、昨日までの雨を吸った木々からは青臭い葉と濡れた樹皮の匂いが漂っていた。
ガレスは声を出さず、前方で片手を上げた。
兵たちが止まる。
ローヴェルが木の陰から姿を現し、二本の指を立ててから西側を示した。
見張りが二人。
まだこちらには気づいていない。
ガレスは兵を三つに分け、一隊を街道側、一隊を西への退路へ回し、残りを自分の手元へ置いた。弓を持つ兵には矢をつがえさせたが、まだ弦を引かせない。
セレナの命令は明確だった。
先に殺すな。
やがて岩を叩く乾いた音が、木々の間から聞こえてきた。何度か槌の音が続き、途切れ、また始まる。さらに近づくと木の隙間から削られた岩肌が見え、その前で数人の男が作業しているのが分かった。
傍らには麻袋と木箱。
短槍。
弓。
小盾。
そして道具を持たず、周囲ばかり見ている男が一人。
ガレスは配置を確認すると、木陰から一歩前へ出た。
「動くな!」
突然響いた声に、岩を掘っていた男たちが一斉に振り返った。
「武器を捨てろ! ここはアルヴェイン男爵領だ!」
作業員たちは動きを止めた。
だが、監督役らしい男だけは違った。
「武器を取れ!」
叫ぶと同時に腰の剣を抜く。
見張りの二人も短槍と弓へ手を伸ばした。
「やめろ!」
ガレスの警告と、弓弦が鳴る音はほとんど同時だった。
護衛の一人が放った矢がアルヴェイン兵の肩口へ突き刺さり、兵が呻き声を上げて後ろへよろめき、もう一人の護衛は短槍を掴むと斜面を駆け下り、立ちはだかった兵へ突きかかった。
槍と槍が激しくぶつかる。
湿った山林に、木と鉄がぶつかる乾いた音が響いた。
「降伏しろ!」
ガレスが再び叫んだ。
しかし護衛は止まらなかった。
短槍を払い、踏み込もうとしたところへ、横からアルヴェイン兵の槍が突き出された。
穂先が胸へ突き刺さって、男の身体が大きく揺れ、手から短槍が落ちる。膝をつき、そのまま濡れた地面へ倒れ込んだ。
もう一人の護衛は弓を捨てて剣を抜いたが、西側から回り込んだ兵とぶつかり、斬り合いの中で腿を深く切られた。それでも剣を振るおうとしたところを盾で押し倒され、数人がかりで取り押さえられる。
監督役も逃げようとしていたところを、木々の間へ駆け込んだところでローヴェルに進路を塞がれ、方向を変えた先にアルヴェイン兵が現れる。剣を振るって突破しようとしたが、腕を浅く斬られ、最後には地面へ押さえつけられた。
作業員たちは動けなかった。
武器を取ろうともせず、岩壁の前で両手を上げている。
「俺たちは戦わない!」
一人が叫んだ。
「雇われただけだ!」
ガレスはすぐに兵へ手を上げた。
「そこまでだ!」
戦いは、ほんの短い時間で終わった。
地面には一人の護衛が動かず倒れ、もう一人は腿から流れる血を兵が布で強く縛っている。監督役は腕を押さえたまま座らされ、アルヴェイン側でも肩を射抜かれた兵と、剣で前腕を切られた兵が治療を受けていた。
死者は、相手側に一人。
アルヴェイン側にはいなかった。
◇
報告を受けたセレナが西山へ到着したのは、昼近くになってからだった。
馬を降りた瞬間、最初に鼻へ届いたのは湿った土の匂いだった。しかし数歩進むと、その中に今までここでは嗅いだことのない、鉄に似た生臭い匂いが混じっていることに気づいた。
血の匂いだった。
セレナの歩みが、ほんのわずかに遅くなる。
「閣下」
ガレスが迎えに来た。
その上着にも、乾き始めた血が少し付いている。
「ガレス、それ……」
「私の血ではありません」
セレナは息を吐いたが、安堵したのは一瞬だけだった。
「こちらは?」
「死者なし。負傷二名。一名は肩を矢で射られましたが骨には当たっておりません。もう一名は腕を斬られました。どちらも命に別状はないと」
「……そう」
声が思ったより小さくなった。
「向こうは?」
「護衛一名死亡。もう一名は重傷ですが、生きています。監督役は腕に軽傷。作業員五人は降伏しました」
一人死んだ。
セレナの視線が無意識に動き、少し離れた場所へ置かれた遺体で止まった。
布が掛けられていた。
顔は見えない。
それでも、その布の下に今朝まで生きていた人間がいることは分かった。
胸の奥が急に重くなる。
「……死んだのね」
「はい」
自分が兵を出せと言った。
捕まえろ、と。
殺すなとも言った。
だが、戦いになればそうならないことくらい、分かっていたはずだった。
頭では。
実際に目の前で血の跡を見るのとは違った。
指先が冷えていることに気づき、セレナは無意識に拳を握った。爪が掌へ当たり、そのわずかな痛みが妙にはっきり感じられる。
「私が……兵を出したから」
口から出た言葉に、ガレスがすぐ答えた。
「違います」
セレナは顔を上げた。
「でも、命令したのは私よ」
「それは事実です」
ガレスは否定しなかった。
「ですが、抵抗したのはあちらです。こちらは降伏を勧告しました」
「それでも一人死んだ」
「はい」
また、否定しない。
そのことがむしろセレナにはありがたかった。
「閣下が殺すなと命じたから、作業員五人は無傷で捕らえられました。ただ、兵も二名が負傷しました」
「そうね……」
「軽いとは申しません」
ガレスの声が少しだけ低くなる。
「ですが、戦う可能性のある相手へ兵を出す以上、誰も傷つかないと約束することはできません」
セレナは何も言えなかった。
「だからこそ、出すかどうかを決めるのが領主です」
以前、怒りに任せて兵を出そうとした自分へ、ガレスが言った言葉を思い出した。
自分が怒れば、領全体が動く。
その意味が、今日は血の匂いを伴っていた。
「……負傷した二人に会える?」
「もちろんです」
セレナは最初に捕虜ではなく、自分の兵のところへ向かった。
肩を射られた若い兵は、木にもたれながら包帯を巻かれていた。セレナを見ると慌てて立とうとしたので、すぐに手で止める。
「そのままでいい」
「ですが、閣下」
「いいから」
セレナはしゃがみ、血の滲んだ包帯を見た。
「痛む?」
「少しだけです」
「嘘」
兵が困ったように笑った。
「……かなりです」
「でしょうね」
セレナもほんの少し笑ったが、胸の奥はまだ重かった。
「ごめんなさい」
思わずそう言うと、兵は目を丸くした。
「閣下が謝られることでは」
「でも、私の命令でここへ来たでしょう?」
「俺たちは兵ですから」
それは当たり前の答えだった。
だからこそ、セレナには重かった。
「ちゃんと治して。無理して戻らなくていいから」
「はい」
もう一人にも同じように声をかけてから、セレナはようやく捕虜の方へ向かった。
◇
押収品は岩壁の前へ並べられていた。
つるはし、槌、鑿、鉄楔、綱、釘、予備の鉄材。それに短槍、弓、小盾と、小さな木箱へ選り分けて入れられた鉱石がある。
セレナは一本の鉄楔を持ち上げた。
冷えた鉄の感触が掌へ重く食い込み、先端には岩を叩いた新しい傷が残っている。
「所属を示す物は?」
「ありません」
ガレスが答えた。
「ヴァルツの紋章も?」
「なしです」
セレナは鉄楔を元へ戻し、腕へ布を巻かれた監督役の前へ歩いた。
「名前は?」
男はしばらく黙ったが、やがて吐き捨てるように答えた。
「ベルト」
「誰の命令でここを掘ってたの?」
「言えない」
「どこの領地の人?」
また沈黙した。
先ほど遺体を見たせいか、セレナの中にはまだ震えるような感覚が残っていた。しかし、それを声には出さなかった。
「困ったわね」
「……何がだ」
「あなた、自分が誰なのか証明できないでしょう?」
男の表情がわずかに強張る。
「領内へ入った許可もない。武器を持ってる。山の中に隠れてた。うちの石を勝手に掘って、それで兵が来たら剣まで抜いた」
セレナは静かに続けた。
「これで私に、あなたたちを普通の旅人だと思えっていうの?」
「俺たちは賊じゃない」
「なら、誰?」
男は答えなかった。
「そういうこと」
セレナはそれ以上追及せず、少し離れて座っている作業員たちへ向かった。
五人は戦いには加わらず、最初の降伏勧告で武器を取らなかった者たちだった。
一人ずつ聞いていくと、そのうち二人には試掘や鉱山で働いた経験があり、残る三人は日当で雇われた人夫だった。
「あなたたちは戦ってないのね?」
「……はい」
「誰かが武器を取れって言ってたでしょう?」
年上の男が俯いた。
「言われました。でも……俺たちは石を掘りに来ただけです……」
セレナはしばらく男の顔を見てから頷いた。
「分かったわ」
ガレスへ振り返る。
「監督と生きてる護衛は拘束を続けて。作業員は別にして」
「全員ではなく?」
「同じ場所にいたからって、同じことをしたわけじゃないでしょう」
それから試掘経験がある二人へ向き直る。
「あなたたち、今ほかに仕事はある?」
二人が顔を見合わせた。
「……ありません」
「なら、ここで働く?」
「は?」
「今度はちゃんと、領主の許可を取って」
二人とも言葉を失った。
「給金は払う。仕事として雇うわ。もちろん、嫌なら無理には言わない」
「俺たちは捕まったんですよ?」
「知ってる」
セレナは平然と答えた。
「でも、石を掘る技術があることとは別でしょう?」
ガレスが横から口を挟んだ。
「閣下。先ほどまで盗掘をしていた者です」
「だから新しい鉱夫を探す?」
「……」
「どこにいるかも分からない人を探して、一からこの山を調べてもらう方がいい?」
「理屈は分かります」
「ならいいわ」
セレナは再び二人へ向いた。
「家族は?」
年上の男が戸惑った。
「妻と娘がいます」
「どこに?」
「ヴァルツ領の南の村です」
もう一人にも妻と幼い息子がいるという。
セレナは少し考えた。
「ここで働くなら、家族を呼んでもいいわ」
二人が同時に顔を上げた。
「家族ごと?」
「あなた一人だけここへ置いて、ずっと家族と離れて働けとは言わないわ」
「でも……」
「私の配下の者に手紙を持たせましょう」
セレナはハロルドを見る。
「本人が書けないなら代筆を。本人しか知らないことも書かせて」
「本人からのものと確認できるように、でございますな」
「それと、家族が見て分かる持ち物を一つ預けてもらって」
年上の男が、押収された私物の中へ目を向けた。
「……木札があります。娘が削ったものです」
「それならいい」
「家族には、こちらへ来いと?」
「違う」
セレナはそこだけは明確に否定した。
「本人が生きていて、アルヴェイン領で働くことになったと伝えるだけ。移ってくるかどうかは、家族に決めてもらう」
自分たちが人を奪う側になってはいけない。
その線だけは越えたくなかった。
「来たいなら知らせてもらって。迎えを出すし、最初の住む場所も領で用意する」
男はしばらくセレナを見つめていた。
「……本当に?」
「家族を呼んで、寝る場所がありませんじゃ働けないでしょう?」
ガレスが小さく息を吐いた。
今度は呆れたというより、諦めたような顔だった。
◇
その日の午後、現場の警備について話が移った。
「ここには兵を置くべきです」
岩場を見上げながらガレスが言った。
「それは私もそう思う」
「なら、小さくても砦を」
「砦は駄目」
即答され、ガレスが振り返る。
「なぜです?」
セレナは山道を少し下り、木々の隙間から遠くに見える街道を指した。
「あそこに砦を造ったら、どう見える?」
「街道を守っているように見えます」
「ヴァルツからは?」
ガレスが黙った。
「……領境に向けた砦とも見えますな」
ハロルドが代わりに答えた。
「でしょう?」
セレナは周囲を見回した。
「だから街道から少し入る。あの枝道と山への道、両方を見られるところ」
「何を造るので?」
「警邏の待機所」
「……待機所」
「街道と山林を警邏する兵が休む場所よ」
「兵は?」
「八人か十人」
「柵は?」
「必要ね」
「見張り台は?」
「一つ欲しいわ」
「武器と食料を置く倉庫も?」
「ないと困るでしょう?」
ガレスはしばらく無言でセレナを見た。
「閣下」
「何?」
「それを砦と申すのでは?」
「……警邏の待機所よ」
セレナは真顔で答えた。
ハロルドが横で咳払いをした。
◇
三日後、ヴァルツ子爵領へ向かう使者が城門に立っていた。
セレナが持たせた書状は、先日の弔問への礼から丁寧に始まっている。
そして、その後に続く。
――先日、我が領西部山地において武装した山賊の一団を発見し、これを捕縛いたしました。
――捕縛の際には抵抗がありましたが、幸いにも貴領へ逃亡した者はなく、ヴァルツ子爵領へご迷惑をおかけすることなく事態を収めることができ、安堵しております。
――先日オズワルド殿からも街道の治安についてご懸念をいただきましたので、念のためお知らせ申し上げます。
ハロルドが最後まで読み、静かに書状を机へ置いた。
「……極めて丁寧な書状でございます」
「でしょう?」
「はい。実に」
「何、その言い方」
「……何も申しておりません」
その書状の横には、二通の私信が置かれていた。
試掘職人たちが家族へ宛てた手紙で、一通には娘が削った小さな木札、もう一通には長年使っていた革の腕輪が添えられている。
「家族には、必ず本人の手紙を先に見せて」
セレナは伝達の者へ言った。
「こちらで生きて働いていることと、本人が家族を呼びたがっていることを伝える。でも、移住するよう迫っては駄目よ」
「承知しました」
「来たいと言うなら一緒に連れて帰るか、連絡を。迎えを手配するから」
使者が書状を鞄へ収め、同時に出立する伝達者も手紙を収めていた。
その姿を見ながら、セレナはふと自分の手を見た。
あの日、西山で嗅いだ血の匂いを、まだ完全には忘れられない。
負傷した二人の兵は回復に向かっている。
けれど、一人の護衛は死んだ。
自分が出した命令の先には、これからもそういう結果が起こり得るのだろう。
その重さは、以前よりずっとはっきり分かる。
それでも、何もしないわけにはいかない。
数日前まで他人の命令で振るわれていた槌は、今ではアルヴェイン領の許可を得て岩を叩いている。その少し下では兵と領民が木を運び、「警邏の待機所」の柱を立て始めていた。
「……考えてみたら」
セレナが呟くと、ハロルドが振り返った。
「はい?」
「場所を探す手間も、最初に掘る手間も、向こうがやってくれたのよね」
「左様でございますな」
「道具まで置いていったし」
「山賊からの押収品でございます」
「人まで残してくれた」
「本人たちが残ると決めたのであれば、ですが」
セレナは少しだけ考え、それから口元を緩めた。
「……少し得した気がしてきた」
ハロルドもわずかに笑った。
「先日、西山から戻られた時には、とてもそのようなお顔ではありませんでしたが」
「それとこれとは別よ」
城門が開き、使者の馬と伝達者がゆっくり北への街道へ出ていく。
その鞄の中には、ヴァルツ子爵への丁寧すぎる報告と、二人の職人から家族へ宛てた手紙が入っていた。
西山では、今後、槌の音が響いていく。
その音を聞くたび、セレナはきっとあの日の血を少しだけ思い出すだろう。
それでも今度の槌は、アルヴェイン男爵の許しを得て振るわれていた。




