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君の笑顔が、本当になるまで  作者: 兎の毛


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3-11)告白したら心が折れる

昼休み。


体育館裏のベンチ――『隆中』。


冬真は一人で弁当を食べていた。風が気持ちいい。静かだ。


やっぱりここが落ち着く。


卵焼きを箸でつまんだ時だった。


視界の端に人影が映る。多分、あいつは二年B組の田中。


その後ろには七瀬。


「……」


冬真は察した。たぶん告白だ。同時に別の人影にも気付く。


少し離れた場所に校舎の陰。


黒田ひかり。


こちらも気付いたらしい。目が合う、数秒。


黒田は「あっ」という顔をした。


冬真も軽く会釈する。黒田も小さく頭を下げた。


それだけだった。お互い何も言わない。何となく事情は分かる。


七瀬が男子に呼び出された。


万が一のための待機役。そして冬真は元からここにいる。


ただそれだけ。二人は互いを見なかったことにした。


「七瀬さん」


田中の声。


緊張している。


七瀬は静かに立っていた。表情はいつも通り。綺麗な笑顔。


「俺、七瀬さんが好きなんだ」


田中が頭を下げる。


「付き合ってください」


沈黙、数秒。七瀬は柔らかく微笑んだ。


そして。


「ごめんなさい」


そう言った。


田中は顔を上げる。まだ希望があると思ったのかもしれない。


だが次の言葉は早かった。


「付き合えません」


「どうして?」


「好きじゃないからです」


即答、迷いは一切ない。


「でも俺たち、まだほとんど話したことないし」


「はい」


「だからこれから――」


「その予定もありません」


田中が固まる。七瀬は笑顔のままだった。怒ってもいない、困ってもいない。


ただ事実を伝えているだけ。


そんな顔。


「ごめんなさい」


「……」


「期待させる方が失礼なので」


静かな声だった。綺麗な声だった。


でも、冷たかった。


まるでガラスみたいに、触れられないし近付けない、そんな冷たさ。


田中は何か言おうとして、結局何も言えなかった。


「失礼します」


七瀬は軽く頭を下げる。それで終わりだった。振り返りもしない。


校舎へ向かう少し遅れて、黒田も後を追う。


去り際、黒田がちらりとこちらを見た。


冬真も見返す、また目が合う。黒田は困ったように苦笑した。


冬真も苦笑する。言葉はない。たぶん同じことを思っていた。


あれは無理だ。


告白したら心が折れる。そんな振り方だった。




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