第九話:2010年9月13日/二回目(前編)
……〜〜♪
……はァ、朝っぱらから……誰が俺なんかにメール送るんだよ。おかげで目が覚めてしまったじゃないか。
まあ、とりあえず見てみるか……あれ?このメアド……俺の!?内容は……?!
『5分後のメールだが今日12時珠桜公園の川で紘海の自殺を止めろ』
……ま、まるで意味が分からない。5分後って、今……6時56分、4分後に来るのか!?しかし、なんで俺のメアドから送られているんだ?
……いや、それにしても紘海が自殺するってなんだよ……!そんなわけ──
……〜〜♪
……!!メールだ、しかもちょうど7時!!メアドは……俺のじゃない、知らないやつだ。内容は……
──『岩藤昇、君の幼馴染角倉紘海は本日2010/9/13に死亡する』
こ、ここでも紘海が死ぬって……なんだよ、さっきのメールは未来予知でもしてるってのかよ……!!じゃあ、マジで紘海は今日、自殺するのか!?
初めのメールは俺のメアドから送られてきたヤツだから、実質俺のケータイから送ったもののはずだよな……?でも、俺は送信した記憶なんてもちろんないし、第一なんで未来予知してる内容が書かれてんだよ……まるで意味がわからない。
……でもなんとなく、このメールを信じて見ようと思ってしまう。なんでだろう、こんな正体不明のものなのに。……とにかく、今日は学校なんてすっぽかして、このメールにしたがってみるか──
──でも、普通に紘海も学校に行くかもしれないし、一応紘海の家に来てみたが……
「あれ、昇くん。うちに何か用ですか?」
……!?ぼーっとつっ立ってたら、家から弘土が出てきた。
「え!?い、いやー……なんでもねえよ。」
「そうですよね。だって、昇くんがうちに用があるとしても、姉だけですもんね。」
「!?ひ、紘海にも用はねえよ!」
「はは。まあ用も何も、昇くんと昨夜は過ごしたらしいですもんね。」
……は?ひ、紘海が俺と……?
「え……な、何を言ってるんだ?そんなわけ……」
「はい?だって姉が昨日に家出る前に言ってましたよ、昇くんとオールしに遊び行くって。土曜にも遊びに行ったって言ってたのに、これは相当仲良いなとか思ってましたけど……」
「……俺は昨日、紘海と会ってないぞ。」
「……え?じ、じゃあ紘海ねえは、今どこなんですか!!?」
な、なんだ!?まさかだが、それってつまり……
「……紘海、昨日から家に帰って来てないのか?」
「……はい。そんな、じゃあ今どこに……」
……!!弟に嘘ついてまで一夜外出して帰ってきてないなんて……じゃあ、マジで紘海は今日、自殺するのか……!?
「お、おい。これはやばいかもしれないぞ。」
「……そうですね、探しましょう!」──
──結局、確証もないメールで弘土を不安にさせるわけにも行かないから、弘土にはなんとかして学校に行かせて、勝手に俺だけで3時間以上紘海を探したが……
「はあ、はあ……全然見つかんねぇ。」
本当に、どこいっちまったんだ?友斗からも、なんか俺と紘海が抜け駆けしてるんじゃねえかとか根も葉もないこと言うメールが来たが、つまり紘海は学校にもいねえってことだろ。……じゃあ、あのメールにしたがって、12時に珠桜公園の川に行くしかないのか……クソッ!!──
──現在、11時55分。今、俺は珠桜公園の河原にいるが、紘海の姿はない。しかし、平日なのに割と人、というか大学生っぽいやつらが多い……大学生って年中暇なのか?
そういえば、仮にこのメールが本当に未来予知したものだとしたら、誰が何の目的でこのメールを俺に送ったんだ?まさかこのメールが未来予知なんかじゃなく、未来から来たものだとして……そうだとしたら、未来の俺は紘海の自殺を止められなかったのか?じゃあ俺も……あ、あれは……
……紘海が一人で川に向かって歩いている。静かに、穏やかに……それでいて、今から消えて無くなるかのように……。
「ま、待て!!!!!紘海!!!!!」
走れ、手を伸ばせ。俺の意思が紘海に届くように……!!
「ハア、ハア……紘海!!!!!!」
「……昇。」
俺の声に応じるように、紘海はそう返事した。その返事をすると共に、紘海は微笑んだ……一昨日までのように。
「ひ、紘海……お前はこんなとこで、何やってんだよ!!」
「何って……なんだと思う?」
「……自殺か?」
「ふふ、よくわかってんじゃん。正解。」
やっぱりかよ……じゃあ、なんで、そんなに、笑ってられるんだよ……!!なんで、なんで……
「なんでだよ!!お前がそんなことする意味が……」
「意味?それはね、私の後悔のため、かな。」
「は……後悔?お前にそんなのあるなんて……」
「あるんだよ。」
……紘海の後悔?そんなのあるなんて、俺は知らなかった。なんでだよ……そんな、じゃあ……
「なんで……俺には教えてくれなかったんだ。」
「教えなかったんじゃない、教えられなかったの。教えても、昇だけじゃどうしようもないことだから……それに、昇にだけは隠し通したかったから。」
「……なんでだよ、俺たちは昔からいつも一緒だったじゃねえか!!悩みも喜びも……全て分け合ってきただろ!!だから、そんなお前だから、あの時俺はお前に……」
「だから、昇には知られたくなかったの。聞いたら、きっと昇も後悔してしまうから。それに、計画……いや、私の野望を果たすためにも、昇に教える訳にはいかなかったの。」
「野望、って……」
「さっき言ったでしょ?私には後悔があるの。それを果たすための、野望。」
「だから、その後悔って……!!」
「ふふ、どうやらもうタイムリミットかもね。」
「え……タイムリミットってなんだよ……」
「それと、最後にヒント。実は、今日の時点でもう遅かったの。だから、次はもうちょっと早く、ね……そうね、一週間前とか。」
……どういうことだ?今日ですでに遅かったって……それに、一週間前ってなんだ……って、紘海、どこへ歩いてるだよ……
「おい……紘海!!川に向かって、どこ行くんだ!!」
「……昇、」
「……?」
「君を巻き込んで、ごめんね。」
え……泣いて、いる……?
……ガンッッ!!!!──
──
──い、いてえ……なんだよ、俺。頭を誰かに殴られて気絶してたのか?ハァ……誰だか知らねえけど、人の後頭部殴っておきながら呑気にベンチにほっぽときやがって……いや、それより紘海は!!──
──はあ、はあ……急いで川に戻ったはいいけど、紘海は一体どこへ……いや、なんだよ、あれは……川のど真ん中に浮かんでいるのって……
「……紘海だ、紘海じゃねえかよ!!」
なんで……俺には何も言わずに……すぐどっか行って……
「……クソ、クソ、クソオオオォォォォォォォォ!!!!」──
──
──現在およそ17時。誰かが通報したようで、次第に警察が集まってきた。けど、警察が来たところで意味なんてない……こんな茶番に、事件性なんてないから。
「あれ……こんなとこで何をしているのかな?一般人は立ち退いてもらったはずなんだけど……」
頼りなさそうな刑事が話しかけてきた……まあ、適当に返事するか。
「……すみません。」
「返答になってないよ……まあいいか。じゃあ一般人は立ち退いてもらって……」
……あれ?クソ、なんで涙が……
「え、ごめん……!!ど、どうしたのかな?急に泣き出して。」
「……俺は、紘海を救えたはずなんです。」
「あれ、もしかして、角倉紘海さんと知人なの!?」
知人だなんて……勝手にどっか行っちゃうようなやつは……
「……俺の、ただの幼馴染です。」
ちょっと考えて出た答えが、それだった。
続く




