第八話:2010年9月20日(後編)
「──まあつまりじゃ。T-メールは一度しか送れないものと考えて、これだと思うものを送るんじゃ。」
「そうだな……でも、どうしたものか……」
──ピンポーン……
「ん、なんじゃ。ちょっと待っておれ。」
「あ、ああ。」──
──「ごめん、お待たせ。」
「周さん!ちょうどよかった!ちょっと、かくかくしかじかで──」
「──なるほどね。たしかにT-メールが一度しか送れないとなると、もうちょっと情報が欲しいところではあるね。それに時間遡行なんて……とても信じられないよ。」
「しかし、理論を詰めていったらそうなったんじゃ。仕方ない。でも、焦ることは無い……時間はたっぷりあるんじゃ。」
「そうだな……ちなみに、T-メールを送る時、何か条件とかこんなことができるとかあるのか?」
「まあ、ワシが貰ったT-メールを参考に考えると、文字数は30字が最大、発信元のメアドは改変可能……例えばワシのケータイが本来の発信元でなくとも、ワシのケータイから送ったということができるんじゃ。」
「つまり、岩藤くんが僕が送ったことにしてT-メールを送ることもできるんだね。」
「そうじゃ。逆に裏返せば、このT-メールは未来のワシが送ったのではない可能性もあるんじゃ。」
「だったら、発信元が俺だと証明出来ることも文面に入れるべきだな……30字以内で。」
「まあ、それは出来たらにしようか。それで、他に何があるのかな?」
「次が最後じゃが、最も重要じゃ。T-メールは送る先の時間を指定できる。」
「……だろうな。じゃねえと困るぞ。」
「でも、これを知っているだけで大きく違うと思うよ。例えばその時、何を考えていたかT-メールで当てたりできるからね。それを知ってるだけでもメールの説得力は上がるはずだよ。」
「そうじゃ。ワシのT-メールはちょうど、○の数を減らして送っていけば字数制限がわかるかもしれないと考えた時に来たものじゃからな。」
「たしかに、普通はあんなメールで字数制限を計っているとは思わないもんな。」
「まあともかく、この情報が揃ったことで送るべき内容が形着いて来たんじゃないかな。」
……そうだな。現状、送りたい内容よりも送るべき内容の方が多い気がしてきたな。
「まあ、大体は。」
「それじゃあ何を送るんじゃ?」
「まずは俺のメアドで送るんだが、それだけじゃ説得力がない。だから、発信先を9月13日の6時55分に設定して、5分後にメールが来るという内容を入れるんです。」
「……待って。その5分後のメールって、事件当日に君が受け取ったT-メールのことかな?それを前提にするとおかしいよ。だって、あのメールで今僕たちがいる状態に時間遡行しているはずじゃないか。そうなると、あのメールは発信元がいないから送られないはずだよ。」
「まあ、因果律を考えたらそうじゃな。」
「いえ、送られます。だって、あのメールはT-メールじゃなく、ただのメールですから。」
「……なぜそう思うのかな?」
「単純です。沢登があのメールを俺に送ったって本人が言ってました。しかし、T-メールだと送った瞬間に時間遡行するんですよね。だったら、送ったことを覚えているはずないんですよ。」
「言われてみれば……そうだね。じゃあその文面は使えるね。ちゃんと未来からのメールという説得力が増すからね。」
「はい。それで、12時くらいに珠桜公園で紘海が自殺することを入れるんです。」
「しかし、角倉が自殺する原因も分からずに角倉の自殺を止めることはできるのか?」
「……それは分かりません。」
……なんてったって、紘海の自殺する動機が全く分からないんだからな。だから、これは賭けだ。だから……
「……とにかく、過去の俺が何とか止めてくれることを望むしかないです。」
「うん。苦しいけど、それしかないね。とりあえず、送る内容は大体そのくらいで30字になると思うから、一回作ってみようか。」
「はい。」──
──何とか30字までに抑え込めた。かなりギリだったな。
「どうやら出来上がったようだね。見せてくれないかな?」
「はい、これです。」
『5分後のメールだが今日12時珠桜公園の川で紘海の自殺を止めろ』
「……なんか内容がギチギチじゃな。」
「仕方ないだろ、30字って制約があるんだから。」
「まあ、僕はこれで異論は無いよ……強いて言えば送り主が誰かメアドでしか判断出来ないのが惜しいかな。」
「しかもそのメアドの主が受け取り手という……さぞこれを受け取ったら混乱するじゃろう。……まあでも安心しろ。一応、時間はたっぷり残されているからな。」
「そうだね。送り手の制限時間はないようなものだからね。だから、まだ調査して内容をより核心に迫るようにするのも手だね。さて、どうする?岩藤くん。」
……出来るとこ早くT-メールを送りたいと思っていたが、一応その手段があるのか。確かに、これで成功するとは思えない、仮初な内容だとは俺でも思う。だから……
「……そうですね。チャンスは一度きりかもしれない。そうなると、もっと調査した方がいいかも……」
──ピンポーン……
「……ん、誰じゃ?宅配なんてないし、勧誘も紙を貼って対策しているから、ここに用事があるやつなんぞそなたら二人しかおらんはずなのに……」
「……一応、用心した方がいいかもね。」
「だ、誰が出ますか?」
「とりあえずワシが出よう……」
……なんだ、この妙な胸騒ぎは。嫌な予感が……
「え、せ、先生……?」
グサッッ……
……!!何が起きた!?
「今宮さん!!大丈夫か……お、お前は……!!」
「周さん、何がおきたんで……」
……なんで……今宮さんの胸に包丁が刺さって……倒れて……血が……大量に……!!
「……岩藤くん。あれは、今かもしれないよ。だから、早くあそこへ……!」
……T-メールのことか!?
「……はい!!」
……もう時間はない!!この状況を変えるには、周さんが時間を稼いでる間にT-メールを送るしかない……!!
──「……T-メールは使ってはいけない、禁忌だ。邪魔するならお前たちも……」
「動くな!凶器を捨てて両手を上げろ!さもないとお前を撃つ!!」
「……刑事さん。なぜ私が角倉紘海を見つけられたと思う?」
「なぜって……一体!?」
「──執念だ。」
──必要なことは全て終わった。あとは送信するだけだが……
「ぐあッッ!!」
……!!周さん!!
「……ここか。お前が、岩藤昇だな。」
「そう言うお前は誰だ!!」
「答える必要などない。なぜなら、ここでお前を殺し、そこのT-メール送信機を破壊し、T-メールという存在を封印するからだ。」
「お前……T-メールを知っているのか!?何故だ!!」
「さっきから言っている、答える必要などないと。……まあいい。ここで──」
「……岩藤くん!!!今すぐT-メールを!!!」
周さん!!……クソッ!!
「──死ね。」
「くそがあああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!!!!」
そして俺は、送信ボタンを叩きつきた。
続く




