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第六話:2010年9月19日(後編)

「沢登が少年と角倉を知っていた理由、もう一つあるぞ。それは、T-メールじゃ。」

「たしかに……その場合もありえるね。じゃあ、誰かが沢登にT-メールを送って、計画を沢登に実行させた、ってこともあるのか。」

「まあ、あくまで可能性の一つじゃがな。……とにかく、ワシが言いたいことは一つだけじゃ、少年。」

「な、なんだよ。」

「沢登が角倉とどういう関係で、あるいはどこで知ったかについて断言できることは……少年、そなたにはこのことは関係ないということじゃ。」

「……つまり、どういうことだ。」

「そなたはここでT-メールを使い、角倉を救う、ただそのことについて考えればいいんじゃ。」

「……そうだね。岩藤君、迷うことはない。ここに来たのも君の意志だ。とにかく、角倉さんを救ってほしい。僕もできる限り協力するからね。」

 ……全く、ワケが分からなくなってきた。紘海が自殺なら、俺が救う意味があるのか?でも、そこに“あるいは”があるなら、俺はその可能性に縋ってみたい。そして、それが有り得るかどうかなんてどうでもいい。決めたじゃないか……紘海を救う、って。

「……迷ってなんかいません。計画なんて関係ない。紘海が自殺かどうかなんて関係ない。……ただ俺は、紘海を救いたい。

 ──そのために、T-メールを使います。周さん、今宮さん。ぜひ、協力してください。」

「……もちろんじゃ。困ってる少年を助ける、それがワシのモットーじゃからな。」

「はは、まあとにかく。ここには君の味方しかいない。みんなで、角倉さんを助けよう。」──


 ──あの後、少し話し合いして、そして結局内容はまだ決まらなかったため、話は来週に持ち越しとなった。そして今、周さんと二人で夕食で焼肉を食べている……周さんの奢りで。うれしい。

「あの、周さん。」

「どうしたの。困り事?」

「俺って、T-メールを誰かに送るかは、もちろん俺にって決まってるんですよ。でも、肝心の内容がさっぱり……」

「そうだよね。君はどうしたら角倉さんを救えるかの手立てが一切ない……それは、この事件のことをほとんど知らないからだ。」

「そうです。俺は紘海が沢登に殺された、そのことしか知らない。でも、だからといって一般人の俺に事件の詳細なんて教えてくれるんですか?」

「ま、やむを得ないから構わないよ……バレたらやばいけどね。……でも、これからする話は少し生々しいけど、覚悟はいいかな?」

「……覚悟ならとうに。」

「うん、それならいいよ……焼肉、吐かないでね。」

 俺をなんだと思ってるんだ。……あの日、吐いたけど。

「……努力します。」

「じゃあまず、何から聞きたい?」

 そう聞かれると困るな……まあとりあえず、

「紘海はどうやって殺されたんですか?」

「……じゃあまず死因について話そう。彼女は溺死だ。死亡推定時刻は14時くらい。外傷として後頭部に打撃痕があったけど、それは直接的に死因には繋がらなかったようなんだ。しかし、これによって気絶させ、そのまま発見現場の珠桜公園の川に遺棄させたっていう見方はできるらしい。……ここまででなにか質問はある?」

「……それじゃあ他殺、ということになりますね。」

「まあ、打撃は明らかに他人によるものらしいけど、必ずしもこの打撃痕と溺死が結びつくとは限らないからね……実は気絶してなくて、自分から川に飛び込んだとも考えられるからね。」

「たしかにそうですね……。それじゃあ次に、誰がいつ紘海の死体を見つけたんですか?」

「ええと、通報はたしか16時ちょっとで、通報したのは40代くらいの普通のおじさんだったよ。その時はたまたま散歩していたらしく、角倉さんのご遺体は正しく川で見かけたらしいんだ。」

「たまたまおっさんが死後4時間後に……それって、おかしくないですか?」

「え、どこが?」

「周さん、知ってますか?珠桜公園って、意外と平日でも人が来るんですよ。特に河川敷はキャンプ場として、今の時期でも人が割といます。子供連れも昼頃はよく見ますよ。」

「……つまり、君はこう言いたいのかな?──ご遺体を発見する時間が遅すぎる、って。」

「それ以上に、紘海が死ぬところを見た人がいないのはおかしくないですか?溺れた人がいたら、あるいは気絶した人を抱えて川に投げるようなことする人がいたら、普通誰か気付くはずです。」

「たしかに……。でも、それじゃあなぜ気付かなかったんだろうね。」

「多分、その逆なんじゃないんでしょうか。つまり、誰も紘海を川に棄てず、そして紘海は溺れた素振りを一切しなかった。」

「でも、それは不可解だよ。誰かが遺棄せずに川に溺れるなんて。事故だとしたら有り得るけど、それだと溺れる素振りをしていないとおかしい……たった一つの可能性を除いて。」

 ……そのたった一つの答えが、どれだけ認めたくないものでも……それが答えなんだろう。

「……やっぱり、紘海は“自殺”、なんでしょうね。」

「うん……そうなってしまうね。……それで、どう?T-メールの内容は考えた?」

 紘海の死因は自殺による溺死……クソッ、そんなこと、認めたくねえよ。……でも、だからこそ俺にはやるべきことがはっきりした。俺が、俺に送るT-メールの内容は……

「はい。俺は……紘海の自殺を止めてみせます。だから、俺は9月13日、事件当日の俺に紘海が自殺するぞ、というメールを送ります。だから止めろ、と俺は俺に説得してみせます。」

「……それが君の答えなんだね、岩藤くん。それじゃあ早いところ明日の夜、今宮さんのアパートに向かおう。それでいいかな?」

「……はい。覚悟は、できています。」


 ──チャンスは何度あるかは分からない……でも、明日に全てが決まる。必ず紘海をT-メールで救う……いや、止めてみせる……!!


続く

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