第十二話:2010年9月15日/二回目(前編)
……ピピピピピピッ
……ふぁあーー、今日はよく眠れた。まあ、さっさと学校に行くか。──
──
──それで学校も終わり、あとは部活のみって感じだが、あいにく今日は変なやつと予定があるのでな。というわけで、またサボらせてもらった。そんな訳だが、
「ええと……こっちだったっけな、ボンジョルーノは。」
ボンジョルーノ近くはあまり行かない地帯なわけで、少し迷ってしまった。だが、無事に着いた。
「……あの人、まだ着いてないのか?」
……〜〜♪
ん、なんかメールが来たぞ……
『もう先入ってるから。』
なんだこいつ。……まあ、外で待ち合わせるのもあれか。とはいえ分かりづらいが。──
──「……こんにちは、岩藤くん。」
「こ、こんにちは……。」
「さて、何を頼もうか。ちなみに、君は喫茶店に行ったことがあるか?」
「え、ほとんどないですけど。」
「ふーん……なるほど。」
……何が聞きたいんだよ!!
「──そんなことはさておき……さて、話でもしよう。」
「……普通、そんな話の始まり方ないですよ。」
「はは、それもそうか。じゃあ早速だが、角倉くんの話でもしよう。」
……ちょっと具体性が増しただけで、言っていることの中身は全く一緒だ。まあ、もういいか。
「……紘海の話ですか。それじゃあ沢登さんって、紘海についてなにか知ってるんですか?」
「まあ、僕は彼女の協力者だからね。角倉くんの“計画”については、僕も深く関わっているつもりだから、彼女についてはある程度は語れるはずだ。」
「……!?け、計画って、一体なんですか!!」
「角倉くんの計画……それはT-メールで命を救うことだ。」
「……T-メール?なんですか、それは……。」
「君も知っているはずだ……いや、今の君は知らないことになっているのか。」
「そうですよ、初耳です。」
「じゃあやっぱり、T-メールには時間遡行の役割もあって、完全にT-メール以外の世界を記憶ごと元に戻すのか……。」
「は……時間遡行?T-メールは時を戻すタイムマシーンのことですか?」
「……?メールがタイムマシーンなわけないだろ?」
……え、俺今バカにされた?でも、悔しいことに言い返せねぇな。
「そ、それじゃあT-メールって名前の通りメールのことなんですか?」
「ああ、そうだ。正式名称はTachyonic Mailという。その名の通り、通常は電子によって受送信されるメールのことをE-メールと呼ぶだろう。しかし、その代わりにタキオン粒子という光速を超越する速さを持つ粒子によって送受信されることで、従来のメールとは一線を画した効果を得られるんだ。」
「その効果って……?」
「──メールが時を超えることだ。」
……!!メールが時を超えるだと……!?そ、それってまさか……
「お、俺……もしかしたらそのT-メールを受け取っているのかもしれません。」
「……やっぱりな。よかったら、そのメールを僕に見せてもらえるかな。」
「はい──これです。」
「なになに──“5分後のメールだが今日12時珠桜公園の川で紘海の自殺を止めろ”、か。内容から察するに、一昨日の朝に届いたのかな?」
「はい、そうなんですが……そうだ!!この5分後に来たメールっていうのが、沢登さんのメアドから送られたメールなんですよ!!」
「……そうか。」
「そ、そうかじゃなくて!!なんで、沢登さんが──このメールを送ってるんですか!!」
「ええと──“岩藤昇、君の幼馴染角倉紘海は本日2010/9/13に死亡する”、と。たしかにこれは僕が君に送ったメールだ……まあ、保険のため、かな。」
「ほ、保険って……?」
「岩藤くんが計画に参戦するための保険だよ……万が一、岩藤くんがT-メールを受け取っていない場合を想定してのだ。」
「……それじゃあ、7時に送られたメールは沢登さんが送ったもので、6時55分に送られたメールは未来から来たT-メール、ってことですか?」
「まあ、そうなるはずだろう。しかしこのT-メール、やはり僕が君にメールを送ることを前提とした内容だ……これの送り主はもしかして、未来の君なんじゃないか?」
「……!!そ、それじゃあもしかして、俺にもT-メールを使うことができるんですか!?」
「まあ、元よりこの計画自体、君にT-メールを使わせることが目的ではあるけどね。」
「じゃあ早速、俺に使わせてください!!」
「いや、それは出来ない。なぜなら僕がその権限を持っている訳じゃないからね。」
「な……それじゃあ、誰がT-メールを送る権限を持っているんですか?」
「……そこが問題なんだよね。」
……?どこが問題なんだ?現に俺はT-メールを受け取っているわけだし……
「まあ、端的に言うと……今その権限を持っているやつは、僕達の敵にあたる人物だ。」
「て、敵……!!それじゃあ、俺が紘海と一昨日会った時に俺を殴ったやつも……」
「そうだ。その敵だ。」
「……!!それじゃあ……その敵って、一体誰なんですか!!」
「そいつの名は、舘岡暉。大学教員なんだが……僕の研究室の教授なんだ。」
「……ええ!!じ、じゃあ沢登さんが説得すればいいじゃないですか!!」
「それはね、ちょっと無理なんだ。いや、無理だった。」
「そんな、なんで……ですか?」
「理由は明白だ。今の僕らにとって舘岡は敵だから、それに尽きる。」
「そ、そんなの理由になってない!!じゃあ質問を変えます!なんで敵なんですか!!」
「現に君を殴っただろ?そこからも分かるだろうけど……」
……どうやら、言う気はないようだな。
「……じゃあ、それでいいです。」
「なんか不服そうだね。でも悪いけど、言えないんだ。だって、言う必要もないからね。」
「それってどういう……」
「力ずくでT-メールの権限を奪い取る。どんな手段を使ってもだ。君は、それの助太刀をしてくれるだけでいい。」
「……わかりました。とりあえずはそれでいいです。でも、力ずくってどういうことですか?」
「文字通りだ。T-メールを送信する機械、T-メール発信機は今現在も舘岡の手中にある。僕達はそれを奪うんだ。」
「……!!そ、そんなのダメに決まってるじゃないですか!!」
「ははは、全く道理だ。しかし、手段は選んでいられない……舘岡が僕達の敵である以上、奴から正攻法でT-メール発信機を頂くことはできない。」
「だから、俺に窃盗の助力をして欲しいと?」
「まあ、そうなるかな。」
……これは正真正銘、賭けだ。警察と関係を持ってしまった以上、俺自身が危険なことに手を出すのはいただけない。しかし……
「ちなみに、沢登さん一人でできないんですか?」
「それに対して、はいかいいえで言えば、はいだ。むしろ、本来はその予定だったからね。」
「……!!じ、じゃあ、」
「しかし、その方法だと何れ間もなく地に足が着いてしまう……だから、君の協力でより権限を磐石なものにしたいんだ。お願いだ。」
「……わかりました。──でも!!ちょっと諸事情があるので、犯罪になるようなことはやりませんから!!」
「ははは、わかったよ。でも、協力してくれるだけで違う。よろしく頼むよ。」
……まあ、ここまで来たらどう転んでもいいように覚悟するしかないか。
「はい。それで、いつに実行するんですか?」
「そうだね……計画上では、今からだね。」
「……へ?今から?」
「ああ。ということで早速向かおうか……発信機のもとへ。」
……心の準備が全くできてないが、本当にこれでいいのか?
続く




