第十一話:2010年9月14日/二回目
……鳥の鳴き声が聞こえる。目覚ましより若干早く目が覚めてしまった。まあいいか。とにかく今日は学校に行って、17時に警察署に行って周とかいう刑事に会うんだったな……めんどくせぇ。俺には時を超えるメールを手にする、というやることがあるのに。──
──今日、学校では紘海の死がやはりみんなの話題を掻っ攫っていた。そりゃそうだ。俺だってまだ飲み込めてないんだから……。
「お、岩藤くん。こんばんは。」
まだ日は沈んでいない。こんばんはには早すぎるんじゃないか?
「……こんにちは。」
「……まあ、とりあえず中入ろっか。」──
──「それで、昨日の話の続きだけど、いいかな。」
「まあ、そのために来たわけですし。」
「そりゃそうだ。とにかく、今回僕が聞きたいことはざっくり二つ……君がどうして角倉さんに昨日会えたか、あと角倉さんの自殺を援助した人物についてかな。」
「……どっちから聞きたいですか?」
「うーん、じゃあ先に角倉さんと会えた経緯について聞こうかな。」
……この話をすると、未来から来たメールの話をせざるを得ない。しかし、どうせこいつに嘘は通じないだろうし……大人しく話してやるか。でも、こんなこと話して信じるのか?まあ、ちょっと様子見してみるか。
「……それじゃあ昨日の紘海の話からします。まずは今朝からなんですけど、たまたま紘海の家の前を通った時、ちょうど家から出ていた紘海の弟の弘土と会ったんです。それで、弘土いわく、日曜の夜に俺とオールするからって言って家を出たきり、帰ってきていなかったらしいんです。」
「ちなみに日曜の夜は、確かに角倉さんの宣告通り君と夜を共にしたのかな?」
言い方が癪に障るな。あくまであいつとはそういう関係じゃないからな。
「もちろん、日曜の夜に紘海斗は会っていません。まあ、多分夜中に外出する言い訳でしょうね。」
「まあ、そうなるだろうね。それで、弟くんと昨日の朝会って、どうしたの?」
「そりゃあ探しに行きましたよ。弘土もその気だったんですけど、ひとまず学校に行かせました。」
「つまり君一人で探しに行ったの?弟くんを学校に行かせたのもなぜか気になるけど、角倉さんのご両親は探しに行かなかったの?」
「その時8時だったんですけど、紘海の両親って、職務上結構早い時間に家を出るんですよ。なのでその時家にいたのは弘土だけです。だから、俺一人で探しました。」
「うーん……だからって、弟くんを学校に行かせたのはよく分からないな。なにか特別な理由があったのかな?」
ま、まずい……理由を話すとなるとメールのことになってしまう。それっぽい話でもでっち上げるか。
「ひ、弘土って中三で受験生なんで、内申とかに響くんですよ……。」
「……若干それっぽい言い訳だね。まあいいや。続きをお願いね。」
……嘘ついてるってわかってんなら直接言えばいいのに、性格悪いな。
「……ともかく、俺一人で探したんですけど、町中で思い当たる場所回ってもいなかったんです。それで学校の友人からも、紘海は学校に来てないって連絡が来てたんで……まあ、途方に暮れてました。」
「へえ。でも君は正午に角倉さんと会えたんだよね?」
「はい。ちょうど12時くらいに珠桜公園を探していると、川に向かっていく紘海を見つけたんです。」
「それからは昨日話した通りだね……まあつまり、君は昨日学校に行ってないと。」
「そ、そうですけど……」
「まあまあ、一旦ここまでにしておこうか。気になる点は色々あるけどね。それじゃあ次に、角倉さんの自殺を援助した人物の話をしよっか……とりあえず先に聞くけど、その人物に身に覚えとかあるかな?」
そもそも姿さえ見えていないんだからそれ以前なんだが……
「特にないです。紘海の周りの人で考えても覚えないですし……」
「そうなると手がかりなしか……まあいいか、ここまでにしよう。あとは調査するだけって感じっぽいからね。」
「……ちなみに、紘海は自殺なんですよ。そんなものに対して、何を調査するんですか?」
「協力者がいることを考えたら、一概に自殺とは言いきれないよ。むしろ、角倉さんはその協力者によって自殺したのかもしれない。だから、それを含めての調査だね。」
……紘海が自殺するようにほのめかされた?それは有り得るのか?でも、否定もできない……。
「そ、そうですか……。」
「……まあいいか。今日はもう帰っていいよ。また、聞きたいことができたら連絡するね。」
「はい……。」
俺からしたら極力会いたくはないがな。──
──しかし、あの刑事に会っているだけでメールのもとに辿り着けるのか?いまいちそんな気はしないから、早々に縁を切ってしまいたいが……
「ねえ、君。」
……俺か?後ろから話しかけてきたが、聞いたことない声だ。
「……はい、俺ですか?」
「うん。君が、岩藤くんだろ?」
……!!し、知らないヤツなのに……なんで俺の名前を知っているんだ!?
「だ、誰ですか?」
「ああ、悪かった。先に名乗るべきだったか……僕は沢登響太郎っていうんだ。よろしく。」
「よ、よろしくって……てかなんで俺の名前を!?」
「ああ、確かにそうだ。僕は、君の幼馴染、角倉紘海くんの協力者だ。君のことは角倉くんから聞いている。」
……紘海の協力者だと!?まさか……こいつが紘海の自殺を手伝ったっていうのか!?
「……お、お前が……紘海を……!!」
「ちょ、ちょっと待って!!誤解だ!!」
「……は?ご、誤解って……」
「まあ、おおそよ君の言いたいことは分かる……要するに、僕が角倉くんに自殺するようにしたって考えてるんだろう?」
「……そうですけど。」
「だから、それが誤解なんだ。むしろ、僕は彼女の自殺を止めようとしたんだ。」
「ほ、本当ですか!?……でもそうだとしたら、あなたは何の協力者なんですか?」
「……積もる話はあると思うけど、今日はここまでだ。時間も遅いからね。」
「べ、別に時間なんて……」
「僕が、嫌なんだ。遅い時間がね。」
「は、はあ……」
せっかくチャンスかも知れないのに……話の腰を折りやがって。
「ああ、そうだ。君に僕のメアドを教えるよ。」
「あ、ありがとうございます……?」
「じゃあ、話の続きは明日聞いてあげるよ……そうだな、明日の16時にそこの喫茶店で待ち合わせにしようか。」
そこの喫茶店……ボンジョルーノか。しかし16時か……また部活を休むことになるな。まあでも、背に腹はかえられん。
「わかりました。じゃあまた明日……。」
「ああ、ごめんね。」──
──しかし、沢登とかいうやつ……一体どんな秘密を抱えているんだ?クソ、妙に気になる。しかし、今メアドをもらったところで……待てよ、このメアド見覚えがあるぞ。まさか──
──
──や、やっぱり……昨日の朝7時ちょうどに送ってきたメールのメアドだ……!!あの沢登ってやつ、あいつも昨日に紘海が死ぬことを知っていたというのか!?……なんなんだ、あいつは一体何者なんだ……!!
続く




