それぞれの翌日2
「クソッ」
豪奢なソファに乱暴に座った王太子、アルフレッド・シェラリアは、手に触れたクッションを拳で殴りつけた。
アルフレッドは、昨日から自室で謹慎中だった。
魔道カメラによるデート生中継を知った国王により、他者との接触を禁止された。
最低限の身の回りの世話は、年配の侍従と侍女(アルフレッドの恋愛対象外な人物)が任されていた。
扉の向こう側と窓の下には、見張りまで置かれている。
「俺が何したっていうんだよっ」
アルフレッドには、同性との恋愛も複数の恋人をもつことも、許されるものではない、という認識はなかった。
我儘で傲慢、短気な、権力をかなり持つアルフレッドに注意する者がいなかった為、好きなら何でもOKな恋愛観になってしまったのだ。
「父上だって愛人、たくさんいるくせに。
たかが3人の恋人の、何がいけないんだよ」
いけない、のである。
たしかに父上=国王は、王妃、側室2人、愛妾5人、と一般的な国王より多くの女性がいる。
だが、国王の相手は「異性」なのだ。
そして、女性たちとの閨事は寝室で行なっている。私室の外では、エスコート以外で触れることはしない。
外でヤりたい放題な息子とは違う。
「一般人立ち入り禁止なら、俺のテリトリーじゃん。
勝手に覗き見して、騒ぐんじゃねえよ」
勝手ではない。
事前に通達があったのに、忘れきっていただけだ。
そもそも庭園での性行為がダメだという、一般的な常識がないアルフレッドが悪い。
「⋯⋯ったく、今日はキースと昼飯食いながら、いちゃつくつもりだったのに」
4人目の恋人とのデートが中止になってしまったのが悔しい。
学院の中の王室専用ルームは、現在「王太子の逢引部屋」になっていた。
現在、学院に所属する王族は王太子と王太子の妹の王女の2人だ。
だが、兄の行状を知った妹は、この部屋の使用を拒否した為、王太子専用になった。
現在、3人の学生、1人の教師とのデートの為の部屋になっている。
護衛が近づく者を止め、侍女が使用後の部屋を完璧に片付けていた為、王太子が友達と寛いでいるだけだと思われている。
「はぁー、明日はソラと会うのに」
手当たり次第にクッションを投げつける。
大きなソファに置かれた、たくさんのクッションが、全部床に散らばる。
見張りをどうにかして外に行けないか、いや無理だ。
あいつらは騎士だ。格闘術なんて俺には必要ないと、まともに講義を受けていなかったのが悔やまれる。
「側近すら側に置けないなんて、おかしいだろ」
イライラと爪を噛む。
ストレスが溜まる。性欲も溜まる。
閉じ込めるなら、娯楽の一つでも用意しろよ。
謹慎の意味が分からないおバカなのだが、本人に自覚はない。
叫びだしたくなる程、フラストレーションをためていると、ふいにノックの音が聞こえた。
「失礼致します」
国王が付けた侍従が入室して来る。
「陛下がお呼びです。至急、謁見室までお越し下さい」
無表情で用件を告げる。
「わかった」
部屋の外に出ると、何やら騒がしい。
王族の居室付近は、通常、静かだ。
この騒がしさは一体⋯⋯⋯、あ、そういえば⋯⋯。
「さっき大きな地震があったな。
大きな被害でもあったのか?」
見張りたちは揺れの後「確認して参ります」と言っていた。が、その後、結果の報告はなかった。
「地震⋯⋯、ですか?
いえ、あれは地震ではなく⋯⋯。
被害はそれなりにありますが。
来て頂ければ、お分かりになるかと」
歯切れの悪い侍従の言葉を怪訝に思いながらも、謁見室へと急ぐ。
震源地は、もう目の前ーーー。




