王女は悩む
「はい?」
今の私は、生まれた時から受けてきた淑女教育を忘れきった忘れきった顔をしているだろう。
私、ラディ・シェラリアは、大きくもなく小さくもないシェラリア王国の第一王女として生を受け14年、それなりに充実した日々を過ごしていた。
王女として恥じない自分でいようと、努力してきた。
私付きの侍女たちや親しい友達、優しく頼もしい婚約者と共に、日常を楽しんできた。
婚約者のロビン・チェインズは、国で最大手の商会を経営するな伯爵家の嫡男だ。
王女の降嫁に伴い、侯爵になることが決まっている。
このまま学院を卒業して、婚約者と結婚し侯爵夫人となる。
そうなる未来を疑ったことはない。
なかったのに。
「女王って何?」
先ほど、たった10分の会議で女性にも王位継承を認める法案が可決された。
よって、国王の子供である私にも王位継承権が生じた。しかも、兄が除籍されることが決まったらしいので、継承順位1位だ。
どうやらユーリ様が提案し、カーティス公爵が緊急議会を開き、決定したそうだ。
カーティス公爵家は、私の継承を望んでいる。
これが、現在の貴族たちの認識だ。
ユーリ様ーーーっ。
いや、分かってるわよ。
悪いのはアホ男な兄だってことは。兄さえしっかりしていれば、こんなことにはならなかった、と分かっている。
兄さえ、普通なら。
カーティス家は、兄を傀儡の王にして、ユーリ様が国を運営することになったかもしれない。
でも、何で叔父の継承を邪魔するようなこと、するんですかーーー?
いいじゃない。王弟殿下が次の王太子でも。
国王と年齢が近すぎるなら、王弟子息でもいいじゃない。
2人とも、すごく有能よ。
なんなら、お父様、国王より優秀よ。
「次の王太子はいつ決めるの?」
議会の決定を伝えに来た国王府の役人に問う。
身内の不祥事の余波で、私は学院を休み、王城で待機していた。
そして、受けた報告は想像の斜め上を行くものだった。
「近いうち、としか申し上げられません。
なにせ、国王陛下が腑抜けて⋯⋯失礼、少し体調を崩されていまして。
正式に何か決まり次第お知らせ致します」
「そう。分かったわ」
お父様、腑抜けてるのね。
可愛い可愛いお兄様が幽閉されてしまって。
お母様が、お父様の分までお仕事なさってるのかしら。
うちの男共は、本当にダメなんだから。
報告を終えた役人が退室した後、ラディは窓の外を眺めながら考え事をしていた。
王太子、ね。
「マリエ、ユーリ様に手紙を書くから届けてくれる?」
悩んでいても仕方ない。
本人に聞くのが一番だわ。
「お茶会の招待状ですか?」
「いいえ。ただの手紙よ」
たぶん、ユーリ様は王家と完全に縁を切るために、近いうち出国する。邪魔はしたくない。
「さて、どんな内容にしようかしら?」
まずは。
婚約が無効になったことのお祝いかしらね。




