未来はいろいろ
それにしても。
ロビン様は、リグルド様をずいぶんお嫌いらしい。
ロビン様も婚約者のラディ姫様も、常識人ですもの。当然よね。
そうだわ。
今後の展望を尋ねられた時、アルフレッド殿下が国王になって国が滅亡するか、王弟殿下が国王になって国が繁栄すると答えたわ。(アルフレッド様は処刑か殺処分と言ったわー、私)
でも、ラディ様が女王になるという未来もありよね。
シェラリア王国は、女王を認めていないけれど、国法の改定を後押ししようかしら。男ばかりに任せることは危険だと、今なら通しやすいはずだ。
「ロビン様、王配に興味はありませんか?」
「は?」
突然の爆弾発言に、教室の中も外も、騒然となる。
「え⋯⋯と⋯、ユーリ様?」
女王が存在しない国には、王配も存在しない。
興味があるかという問いは、本来、何の意味もない。
ただし、今は王太子の地位が揺らいでいる。
ユーリは国政に強い影響力を持つ一族の一員だ。意味がないわけない。
「⋯⋯」
簡単に答えられない。
ロビンは答えることができなかった。
「次の王太子候補の1人として、ラディ様を入れてもいいんじゃないかと思っただけよ。
ラディ様もあなたも、5年も教育を受ければ、立派な女王と王配になれるわ。素質は充分よ。
王弟殿下たちとあなたたち、どちらが王位を継いでも国の為になるわ」
話しているうちに、ユーリの中では、女王容認の国法の改定は決定事項になっていた。
ラディ様がどうするかは分からないが、国法だけ変えておけば、将来役立つ時がくるかもしれない。
あそこまで酷いのは、そうはいないだろうけど、備えておいて損はない。
「ユーリ、とんでもない爆弾と混乱、置いてくのは止めてよ」
エリザベスは、そっとユーリに近づき、耳打ちした。
「フフフッ、何のことかしら?」
次の王太子を巡り、貴族たちはどう動くかしらね。
女王誕生を、我がカーティス家が望んでいる「らしい」となると、実績や経歴が足りないけれど、14歳のラディ様が有力候補になる。
でも、ラディ様は冷静に状況を見て、王弟殿下かご子息を推すかも知れない。
王弟殿下はすごく有能だし、ご子息はかなり優秀だから。ラディ様も、あの兄の妹とは思えないほど性格も成績も、すべて素晴らしい。
困ったわね。
あの愚物がいなくなったら、優秀な候補が複数いすぎて、選べないわ。
次の授業の開始を知らせるベルが鳴る。
「あらあら、ユーリちゃんたら。女王ねぇ、おもしろいわぁ」
カーティス家の広大な敷地の中に建っているガラス製の温室で公爵夫人は、ティータイムを楽しんでいた。
愛娘につけていた警備の者からの報告に、笑い声をあげた。
「我が国初の女王誕生なら、我が国初の女性宰相が誕生してもいいと思わない〜?」
「ユーリ様は、ロジャー国に嫁ぐ予定なのでは?
縁談も最終調整に入ったとお伺いしておりますが」
問いかけられた侍女は、疑問を返す。
「そうなのよぉ。ロジャー国在住のお姉様の仲介で、纏まりそうなのよ。ユーリちゃんとも面識あるし、相性も良いと思うのよねぇ」
「じゃあ無理ですね。
婿取りでなく嫁入りのお話ですよね」
長く公爵夫人に仕える侍女は、ユーリの縁談の相手に心当たりがあった。
あの方はロジャー国を離れられない。
アルフレッド殿下の性癖を知ったカーティス家の面々は、穏便な婚約の解消のチャンスがあることを信じ、密かに行動していた。
「密か」な為、家族以外には情報を隠していたが、腹心の者たちは、察していた。
「ユーリちゃんは、敏腕な宰相も難なくこなせるけれど、『初恋』の方の花嫁の方がずっと幸せになれるわ」
ユーリの新しい婚約の為、公爵夫人はロジャー国に嫁いでいる姉に相談した。
幼い頃に、ユーリはロジャー国に遊びに行ったことがある。
少し年上の男の子と親しくなり、別れの時は大泣きして大変だったのだ。
あの時の男の子が、まだ独身で婚約者もいないことは分かっていたから、姉に仲介を頼んだ。
もちろん、男の子の身辺調査も念入りによろしく、と。
「さすがユーリちゃんよねぇ。
最高な男が初恋相手なんて。
お姉様も全てにおいて完璧な方だって褒めていらっしゃったしぃ」
ユーリちゃんは心配いらない。
ユーリちゃんがこれから暮らすロジャー国も心配いらない。
でも、ここシェラリア王国はどうなるだろう。
愚かな跡取りは失脚したし、代わりの跡取り候補は優秀。一見、問題ないようだが⋯⋯。
うちのユーリちゃんも、お友達のエリザベスちゃんも、その他の優秀な子たちも何人か、王都を離れることが決まっている。
「ある意味、アルフレッド殿下はカリスマだったのよね」
負の。
アルフレッド殿下のせいで、優秀な文官、侍従が何人も辞めている。
アルフレッド殿下のせいで、親バカ国王の治世に陰りがでている。
「次代を支える者が少ないのよねぇ」
はぁぁー、ため息しか出ない。




