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異世界だろうが教師の在り方は変わらない  作者: 物語 紡
5時間目 王子奪還
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41/160

1.誘拐事件

 ラインハルトに帰るために馬車を動かそうとしていたマコトたちに驚きの報告が飛び込んでくる。

「イリアス殿下が攫われたとはどういうことだ」

 シェリーは馬車から降りて騎士に話を聞く。



「詳しいことは私の口からは申し上げられません。しかし、殿下が攫われたので犯人を逃さないように国から出るのを規制しているのです」

「わかった、此度の事件に際しての隊の指揮を執っている者と話したい。どこにいる」

「それでしたら王城の方にいます!」

「マリネット、行くぞ」

「はっ!」

 騎士の言葉を聞いて王城の方へと向かう。

「私たちも行きましょう」

「へいへい、了解」

 それにマコトたちもついていく。



 城の前には以前出迎えに来ていた騎士が他の騎士たちに指示を出している。

「君は・・・確かホーフリームとか言ったな」

「はっ!名前を覚えてもらって光栄です、シェリー王女。今回の事件では隊の指揮を執っています」

「君が隊の指揮を執っているのか?キッシュ殿はどうした」

「将軍は今は遠征に出かけておりまして不在です。また、その遠征には第一・第二部隊も参加しているので私が指揮することになりました」

「そうか・・・私たちも今回の殿下誘拐事件に対して協力したいのだが構わないか?」

「はっ!問題ありません!」

 ホーフリームは勢いよく返事した後、王城の中へと案内する。



(いや、そんな簡単に了承していいのかよ・・・自国のメンツとかないのか?)

 そんなことを思いつつも、口に出したら色々と話がこじれそうなので黙っておく。



 前回来たときはそのまま学院の方に向かったので初めて入ったのだが、壁や床は赤やオレンジなどの明るい色ではなく白などのシンプルな色が使われていて、落ち着いた雰囲気を醸し出している。

 城ってのはてっきりきらびやかな装飾や派手な絨毯など豪勢な所かと思っていたので意外に思った。



 階段を上ったり角を曲がったりと長い廊下を進んだ先に一つの部屋にたどり着く。

「こちらが王太子殿下のお部屋になっておりまして、そして誘拐直後までこの部屋にいたと思われます」

「事件の状況などをお聞かせ願えますか?」

「事件が発覚したのは十二時つまりお昼頃ですね。その時に昼食のためメイドがドアの前で呼んだのですが返答がなくドアを開けてみると殿下はおりませんでした。部屋自体は争った形跡はなく、窓から出ていった形跡もなく手掛かりがない状態です」

「ちょっと待って。じゃあ、なんで誘拐なんてわかるの?」

 ホーフリームの説明にクオリアが質問する。

 確かに今の説明だとしたら王子がどっかに出かけた可能性がある。



「事件発覚の二時間前には部屋にいたことは確認されています。そこから殿下が外出されたところは誰も見ておらず部屋から姿を消したのです」

「たまたま誰にも気づかれずに外に出たのでは?」

「それはございません」

 エリカの疑問に突如背後から否定の言葉が飛んでくる。



「あなたは、イリウス殿下の・・・」

「執事のバトラーでございます。突然背後から申しわけございません。ですが殿下はどこに出かけるときも必ず私かメイド長のアリッサに声をかけてから出かけます。ですから殿下が急にいなくなるのでしたら攫われたとしか考えられません!」

「もし殿下がただ散歩に出かけられたのでしたら問題ありません。だが万が一にも何者かに誘拐されたのでしたら一刻を争う事態ですので調査しているのです」

「なるほど、話は理解した。私たちも部屋に入っても問題ないか?」

「えぇ、大丈夫です。すでに我が隊が部屋を捜索をしましたが特に何も出てきませんでした。現在は聞き込みなどを行いながら捜索しています」



 ホーフリームは敬礼すると元来た道を戻っていく。

 ファンタジーの世界だってのに急にミステリーが出てきてマコトは戸惑うしかなかった。

(つうか、聞き込みだとか誘拐事件だとか警察の会話かよって思うな。実際に警察の捜査を知っているわけじゃねぇけど)



 とりあえずマコトたちは部屋の中に入った。

 かなり広めの部屋だがその半分は魔道具が置かれていて狭く感じる。本棚がいくつも存在するがそのほとんどが魔導書だった。クオリアから魔法好きとは聞いていたがここまでとは。もはや魔法オタクと言っても差し支えないぐらいの魔導書と魔道具の数だ。

 部屋自体はきれいに整頓されていてざっと見た感じ争った形跡とかはない。



「・・・なんだか、この部屋のにおいは嫌いだわ」

「同感だな。なんだ、この部屋に漂っている甘ったるい匂いは」

「花の匂いでしょうか・・・?」

「にしてはきつすぎるかと思います」

 クオリア達は部屋に入るなり顔をしかめる。



「におい?俺にはよくわからねぇんだが」

「私も同じです。この部屋、そんなに臭いますか?」

 無事なのはマコトとティナだけのようだ。

 嗅いでみるが特に気にするような匂いはしない。



「ほんとに?なんでマコトたちは平気なの?こんなにきついのに・・・」

「んなこと言われてもなぁ」

 クオリアは恨めしそうにマコトを見ているが理由はわからんし、どうしようもないことなので無視をする。

 マリネットが窓を開けることによって部屋に充満していたにおいは多少薄れたようでしかめっ面が幾分か和らいでいるように見える。



「バトラー殿、イリウス殿下はお香の趣味でもおありだったのか?」

「いえ、私が知る限りそのようなことは・・・。それにこれだけきつい匂いでしたら衣服などに付着してすぐに気づくと思います」

「では、魔道具によるものでしょうか?」

「何かしらに害を及ぼすとみなされる物はこの城の地下に在る部屋に保管しているはずです。このような匂いのするものでしたら、まず間違いなく地下部屋行きでしょう」

 結局、においの原因はわからず後回しとなった。



「そんなにきついなら俺とティナで探すからお前らは部屋の外で待ってていいぞ」

「大丈夫よ、それよりも何か手掛かりとなりそうなものを見つけましょう」

 マコトたちは手分けして部屋の中を調べ始めた。

 部屋の隅、ベットの下、本棚にタンスの中など隅々まで調べてみたが結果としては何も見つからなかった。

 『識別』で見てみるが部屋にこれといった痕跡は存在しなかった。



「どうやら、手掛かりとなりそうな物はなさそうだな」

「一応、あの魔道具を調べてみますか?」

「・・・そうだな。何も出てこないだろうが一応調べてみるか」

 シェリーとマリネットは部屋の隅に置かれている魔道具の方へと向かい始める。

 マコトは部屋の扉から部屋全体を見る。

「この部屋、痕跡が何もねぇな」

「そうね、攫われた痕跡も争った痕跡もない。やっぱりイリウス殿下は自分からこの部屋を出たのかしら」

「ん?あぁ、いや、そうじゃなくてな・・・」

 マコトの否定の言葉に疑問符を浮かべる。



「この部屋、人がいた痕跡がねぇんだよ」

「え!?」

 その言葉にクオリアが驚く。

「人がいた痕跡がないってどういうこと?」

「どうもこうも言った通りの意味だ。この部屋にはおよそ人が出入りした痕跡がない」

「そんなことあるんですか?」

 こちらの会話が聞こえたのか他のメンツもマコトの言葉に耳を傾ける。



「あり得るわけねぇだろ。明らかにこの部屋は人が生活するための道具が置かれているし、そうでなくてもここには魔道具がある。誰かがここを使っていたことは明白。もっと言うならついさっきまで騎士団がここを調べていたはずなのに人が出入りした痕跡がない」

 マコトは窓側へと向かう。



 窓の横にあるタンスからわずかながら魔力の残滓を『識別』で確認した。

 そのタンスに入っている物を外に出し始める。

 はたから見たらいきなりタンスの物を出すという奇怪な行動をとっているせいで急いでバトラーが止めに入る。



「お止めください!いきなりタンスの物を出すとか非常識にもほどがありますよ!」

 マコトはその言葉を無視して次々と物を出していき、全部出した時には後ろに小さい山が出来ていた。



 タンスを横にずらすとそこには魔法陣が刻まれていた。

「これは・・・」

「術式魔法だな。効果は部屋を元の状態に見せる。つまり、幻術系の魔法だ」

 道理で部屋から人の痕跡が出ないわけだ。この魔法のせいですべての証拠を出さないようにしていたのだろう。



「クオリア、この魔法陣、壊せるか?」

「多分、いけると思う」

 クオリアは魔法陣が描かれていた壁に手を当て、何事か呟き始める。

 手から魔力が出て魔法陣へとのびていき魔法陣全体を覆い始めると徐々に崩れ始める。

 完全に魔法陣が壊れるのを見届けた後、もう一度部屋全体を『識別』で見る。



「見た目はあまり変わってねぇが、人の出入りの痕跡は見えるし生活の跡もある」

「どうしてわかった?」

 シェリーは驚きつつも理由を尋ねてきた。

「確証があったわけじゃねぇ。魔道具の置き場所、小物の配置、ベットの清潔さ。そういったところになんとなくだが違和感を感じた。それだけさ」



 嘘だった。

 マコトが分かったのは違和感を感じたわけではなく部屋を調べるときに『識別』を使い、部屋全体を見たときにも『識別』を使ってこの部屋での人の痕跡がないことが分かったからだ。

 『識別』は対象の性質を見抜く能力だが魔力濃度を見れることからその対象は物体でなくとも問題ない。そして、物に使えば種類・性質だけでなく誰の持ち物かも判断が可能であった。

(魔力なしでこんな能力を持っていたら今回の事件に関連性を疑われそうだし、何より俺の使える能力を完全に把握しきれてないのに明かすと色々と厄介ごとが起きそうだ)



 シェリーは疑わしそうな目で見てくる。

 マコトの言葉を信じていないのだろう。これ以上追及されるとボロが出そうなので話題を王子誘拐に戻すとしよう。

「まぁ、そんなことよりもこれではっきりした。イリウス殿下は何者かに誘拐された」

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