10.新たなる問題
この国では色々とあったが長かった視察も無事に終え、帰国の準備をしている。
「はぁ」
「どうしたの?ため息なんてついて」
馬車に荷物を運びながらマコトがため息をつくとクオリアが不思議そうな顔をしている。
「いやな、結局観光できなかったなぁって思ってよ」
「マコトは忙しかったものね」
またお節介焼いてたのよねとニコニコしながら言ってくる。
「マコト様は面倒ごとは勘弁と言っていますが自分から面倒ごとに関わり行っている気がします」
「いや、俺だって関わらずに済むならそうしたんだけどな。どうにも俺の周りは面倒ごとがたくさんある」
マコトとしては面倒ごとは極力避けていくのだが、大概面倒ごととは気づいた時にはもはや手遅れであり、逃げようにも逃げられない状態なのだ。
(まさか、異世界転生したせいで主人公体質とかが備わっているのではないだろうか。能力以外は平凡な俺にこれ以上面倒ごとを背負わせないでほしい)
「ご主人様はお優しい方ですから、ほっとけないんですよ」
「違うわよ、ティナさん。マコトは少し考えなしのところがあるのよ」
「つまり馬鹿なだけです」
「エリカ、そこまではっきり言われると少し傷つくんだが」
「準備は整いましたか?」
他愛ない掛け合いをしながら帰る準備を進めていくとマリネットがやってくる。
「えぇ、準備は出来たわ。お姉さまはどこにいらっしゃるの?」
「プロデス陛下がお呼びになっていたのでそちらに向かっています」
「私も向かった方がよろしいかしら?」
「いえ、ここで出立の準備をしておくようにとのことです」
「わかったわ、ありがとうマリネットさん」
マリネットと仲良さそうに話している。
マリネットからも笑顔が出ていることから今回の視察の間に距離を縮められたのだろう。
クオリアと言葉を交わした後、今度はこっちにやってくる。
「お久しぶりです。学院の方では大活躍だったそうで」
「そんな大したことはしてねぇけどな」
「ご謙遜を、先ほどウォークロッド殿がこちらにやってきて感謝の言葉を言っておりました」
「へぇ~、あの爺さんがね」
マコトは魔弾合戦後のことを思い出す。
「そんじゃあ、俺は国に帰るから。世話になったな」
「いえ、こちらこそ大変お世話になりました」
「また、僕の美しい顔を見たくなったらいつでもこの学院に来るといい」
相変わらずのウザさを発揮するシュバルツは置いとくとする。
「マコト先生、礼を申しあげる。自分が未熟だったばかりに才ある若者を無為にするところだった」
「礼を言われることじゃねぇし、頑張ったのは俺じゃなくメアだ」
「・・・感謝する」
ゴレイムは頭を下げ、俺に礼を言っているが強面の男がこう真っ直ぐに礼を言ってくると何かむず痒いものを感じる。
「ゴレイム先生は相変わらずの生真面目さですね。もう少しサラッとお別れできないんですか?」
「俺はいたって普通に挨拶している」
「それがダメなんですよ、ゴリ先生」
「だから俺はゴリではない!」
最後の時までいつも通りしている先生たち。俺が学校を楽しく過ごせたのはこの人たちのおかげだろ。
「先生!」
呼びかけられて向き直るとそこにはこの国で最も接してきた生徒が泣きそうな顔をしていた。
「おいおい、今生の別れじゃあるめぇしそんな泣きそうな顔すんなよ」
「泣いてません!別れの時は笑顔でするって決まってるんです!」
目元をゴシゴシこすりながら笑顔を向けてくる。
「今回はありがとうございました!このことは一生忘れません!」
「おう、俺もお前に教えるときはなかなか楽しかったぜ」
「・・・また会ったときは修行をつけてくれますか?」
「魔力なしの俺なんかでよければいつもでどうぞ」
その瞬間、今まで見た中で一番の笑顔を見せる。
「絶対に先生のところに行きますから!」
「その時があったら楽しみにしているよ」
その後、テンプレ的な別れの挨拶を他の生徒たちにも送る。
最後にウォークロッドに向き直る。
「お主のおかげで儂の目的である教員の質の向上は成された。礼を言いますぞ、マコト先生」
「俺なんかが役に立てたなら光栄だね」
「それではごきげんよう。この国に立ち寄る際はぜひこの学院に足を運んでくだされ」
マコトは手を振りながら別れつげ学院を出ていった。
まさか、この後にシェリーのところに向かっていたとは思ってもみなかった。
「次回の交換教師にもぜひ来てほしいとおっしゃてました」
「悪いが断る。それなりに楽しかったがああいうのは現役の」教員の人たちにやらせてくれ」
「そういえば、そのメアってどんな子なの?マコトが教えているってのは聞いたけどあまり詳しくは聞いてなかったわ」
そりゃ、お前さんは自分の話ばかりしていたからな。
聞いてもいないのに今日はお姉さまと買い物をしたとかティナとデートしてきたとか色々と喋っていたのでそっちが何をしていたのかはかなり詳細にわかる。
「ねぇねぇ、どんな子なの?」
「そうだな・・・」
マコトは少し考え笑みを浮かべながら答える。
「いずれ世界に名を轟かせる未来の魔法師だな」
「そんなにすごい子なの?」
「腕のいい師匠をつけて、努力を怠らなければそうなる」
あいつなら必ずそうなるだろうという確信があった。
「マコトが師匠になってあげればいいじゃない」
「魔法を使えない奴が師匠になってどうするんだよ」
「おい、クオリア。やけに楽しそうだが準備は整っているのだろうな」
クオリアがおかしなことを言っているとシェリーが来た。
「あ、お姉さま。えぇ、大丈夫よ」
「そうか、ならば戻るぞ。ラインハルトに」
行きと同じようにマコトとティナが御者台にクオリアたちは場所の中に乗り込み、ラインハルトに向けて出発する。
「お待ちください!ラインハルト御一行様!」
その時、一人の騎士が声をかける。
シェリーは窓から顔を出し、騎士に質問する。
「どうした、何かあったのか?」
「それが・・・」
騎士は少し間を置いた後、驚くべきことを口にした。
「イリウス殿下が攫われました!」




