9.魔弾合戦
メアとバジルットの対決当日。
三週間前と同じようにノワール学院のグラウンドで魔弾合戦が行われる。
そこには二年A組の生徒と魔法実技のゴレイム、そして・・・
「なんで、お前らもいるんだ?」
ミレイにシュバルツ、それに理事長であるウォークロッドまでもがいた。
「マコト先生が関わっているってことは面白いことが起きるってことじゃないですか。僕は面白いところには関わっていたい性格なんです」
「これは決闘なんですよね?だったら担任である私には見る権利があります」
「生徒が元気にやっているかを確認するのが儂の数少ない楽しみでのう。そこに何やら面白そうな話が聞こえたので寄ってみたのじゃ」
「教師として生徒の問題を面白そうって言うのはどうなんだよ。あと、ミレイ先生。顔に楽しみって書いてんぞ」
面白半分で関わっている人が多数いた。
しかも、お菓子とジュースを持ち込んでいる。完全なる観戦者気分だ。
「おい、ポンコツ教師‼」
交換教師としてこちらにいる間にできたいつものやり取りを行っているとバジルットがやってきた。
「シュバルツ先生、言われてますよ」
「それは誤解だ、マコト先生。この美しい僕がポンコツなわけないだろ?言われているのは脳みそまで筋肉でできてそうなゴリ先生だよ」
「だから、俺の名前はゴリではない!」
「お前に言ってんだよ‼」
バジルットはマコトに指を指しながら文句を言ってくる。
マコトはその指を掴んで、曲げつつ答える。
「人を指で指してはダメって教わらなかったのか?それと俺はポンコツっていう名前じゃねぇし、そもそも先生に向かっての第一声がなってない。挨拶からやり直せ」
「痛い痛い!それ以上は指曲がらねぇからやめろ!」
涙目になりながら訴えてきたのでマコトが指を放してやる。
「こんなことして先生としていいのかよ!」
「言葉遣いがなってねぇな。もう一度曲げてやろうか?」
バジルットはサッと手を後ろに隠す。
よほどさっきのが痛かったのだろう。
「で?何の用だよ」
「ふん、お前がいくらあの女に手ほどきをしても俺様には一生敵わねぇことを証明してやるよ」
「お前・・・そのためだけに俺のところに来たのかよ。暇だな~」
「うるせぇ!せいぜいそこであいつがやられるところを見ているんだな!」
捨て台詞にそういうとバジルットは皆が集まっているところに向かった。
(てか、あいつ。理事長が隣にいるのに挨拶すらしないって大丈夫か?)
「元気がいいのう。ほっほっほ」
そんなこと思っていたが隣にいるウォークロッドは気にした風もなく笑っていた。
「先生~!」
今度はメアがこちらにやってくる。
「おはようございます!ミレイ先生にシュバルツ先生、ゴレイヌ先生に理事長も、おはようございます!」
さっきのバジルットとは違いメアはしっかりと挨拶してくる。
それも全員に対してだ。礼儀の良さがにじみ出ている。
「おはよう、体調は問題なさそうだな」
「はい、いつもよりも調子がいいです」
力こぶを作って元気のアピールをする。
「先生・・・先生は勝ち負けなんて気にしなくていいと言ってくれました」
「あぁ、言ったな」
「でも、やっぱり私、勝ちたいと思うんです。先生がかけてくれた時間が無駄じゃないことと先生が修行をつけてくれた生徒は一人前だってこと証明したいんです」
「・・・そうか。お前の気持ちはお前だけのものだ。自分の好きなようにすればいい」
「はい!そこで私の勝利を見ていてください!」
メアは失礼しますと言ってからマコトたちのところを離れた。
「メアさん、変わりましたね」
「あぁ、いい目つきになっていた」
「これもマコト先生のおかげかのう」
「別に俺のおかげってわけじゃねぇよ。あいつが自分の力で進んでいるだけだ」
離れていくメアを見ながらマコトは答えた。
「でも、実際問題どうなんですか?彼女に勝算はあるんですか?」
「さぁ、それは始まってみないとなんとも」
シュバルツの言葉に肩をすくめつつ答える。
そろそろ授業の時間になったのかゴレイヌは生徒たちのところに行き、前回と同じように二人一組にうように促す。
当然、メアはバジルットと対決になるわけだがどうなるのかは全くわからん。
そして、魔弾合戦は始まる。
先に他の子たちの試合を終わらしてから、メアの試合は行われるようなのでマコトは適当に見ている。
正直、メアの試合以外興味がないのでぼーっと見ていたがミレイやシュバルツはお菓子を食べながら見入っている。
そして、やっとメアの試合の番まで回ってきた。
「次の組、前へ」
メアは緊張した面持ちで、バジルットは不敵な笑みを浮かべて前に出る。
「この三週間、お前が何をしていたのか知らねぇし知りたくもないが、お前ごときじゃ俺には勝てないことを証明してやるよ」
「私はあなたに勝って先生が私にかけてくれた時間は無駄じゃないことを証明するからバジルット君に負けるわけにはいかない」
お互い、言葉を交わしあう。
二人の声はこちらには届いていないが概ね二人の表情と唇の動きで何を言っているかはわかる。
ちなみにこれは『識別』を使ったら、出来るようになった。
(本当に便利だな、俺のスキルって)
「試合開始!」
試合開始直後にメアは魔弾を打つために魔力を集中させ始める。
バジルットは前回同様、何もせずその場に立っているだけだ。
そして、メアの手から魔弾が放たれた。
その魔弾は真っ直ぐにバジルットに向かって飛んでいく。
バジルットは余裕の表情で待ち構えている。だが、距離が半分を切ったところで魔弾が進路を変えないことに焦りを覚えたのか横に飛ぶ。
魔弾はその横を通過していった。躱していなければ間違いなく当たっていただろう。
バジルットは魔弾が真っ直ぐに飛んできたことに驚きつつも魔弾を撃つ。
その試合は他の試合同様に魔弾が飛び交っていた。
「メアさんの魔弾がしっかりと飛んでいる・・・」
「ほう、これは驚いたね」
試合を終えた生徒たちもマコトの隣にいたミレイたちも驚きをあらわにしていた。
「どういうことだ、マコト先生。彼女は魔力コントロールに難があったはず、まさか本当にたった三週間で達成したのか」
「そのまさかだよ、いや本当にギリギリだった。出来るようになったのがつい昨日の話だったからな」
ゴレイムは詰め寄ってくる。
その顔には信じられないと書いてあった。
まぁ、この学院でメアの魔力コントロールのことを一番知っているのはこのゴレイムなのだし驚くのも当然だ。
「一つ訂正しておくことがある。メアは別に魔力コントロールに問題があったわけじゃねぇ。問題なのはあいつの潜在的な魔力量の方だ」
「魔力量?」
ミレイはマコトの言葉に疑問が出る。
「確かに彼女の魔力量は他の者に比べて高かったが、何が問題だ?」
「他の生徒たちの魔力量が百だとするとあいつの魔力量はざっと千。十倍近い量を持っている。魔力の総量だけで言えば上級魔法師に匹敵するレベルだ」
「上級魔法師に!?それはそれは、またすごいのう」
「だが、それらを操るための技術は他の生徒と同レベル。自分の莫大な魔力量に技術が追い付いてなかったせいで魔力コントロールが出来なかったわけだ」
実際、修行の最中もあいつは休憩をあまり挟まず、魔法を発動し続けた。
『識別』で魔力の総量は理解していたが、それでも驚いたものだ。
「なるほど、授業で習うのは簡単な魔力コントロールのみ。他の生徒よりも魔力量が多いせいで感覚がまるで違ったのか。それでマコト先生はどうやって身に付けさせたんだい?」
「ひたすら反復練習で魔弾合戦に必要な魔力量を体に覚えさせた」
最初に書いた魔法陣の大きさの適切な量は魔弾合戦においての直撃してもちょっと怪我をする程度しておいた。おかげでなぞり書きの修行を終えた後も多少の誤差はあれど大体同じ量の魔力を込めていた。
「今のあいつは莫大な魔力量から適切な量を取り出し魔法として発動する技術を身に付けた。勝負がどうなるかはわからねぇな」
バジルットはメアの魔弾を回避しきれず、魔弾の相殺しつつ攻撃している。それに対してメアは一発ずつしか魔弾を放てないが着実にバジルットを追いつめている。
メアは俺が術式魔法においての必要量以上の魔力を魔弾に込めてはいるがコントロールが出来ている。
そのためバジルットは相殺のために放つ魔弾の魔力量が多くなり、バテテきている。
そして、最終的にはバジルットの魔力が尽きたので戦いはメアの勝利となった。




