六十四話
間が空きすぎた
「まずは私の監督不行き届きで貴方方の兵を悪戯に傷つけた事を詫びたい、この通り」
そう言ってシュウの兄と名乗るユウは深々と頭を垂れる。テンドウ達は戦闘の後に雑木林から過ごし離れた場所にある山がちな土地にある洞窟に案内された。そこは元ウォー・タイプ海賊連合の残党のたまり場だった。申し訳程度の物資と怪我人に埋め尽くされた洞窟の奥には整理の行き届いた小ぢんまりとした部屋があり、そこにテンドウとマサカリは通された。小さな机と椅子、あとは粗末な地図にほぼ尽きかけの蝋燭くらいでどうやら部屋の隅に惹かれた簡易の布団には誰から横たわっているらしい。
「貴方方はこの王国に戦を挑んでいると噂の革命軍とお見受けいたします。我々は半年前に青の帝国の海軍部隊に敗北したウォー・タイプ海賊連合の残党です」
「おい兄貴」
「黙れ、シュウ」
「・・・!」
シュウは『敗北』と『残党』と言う言葉に反応したようだった。口から出かけた言葉は兄によって諌められた。ユウは続ける。
「我々はご覧の通り手負いの身。橙連邦から桃海を経由して赤国の連合軍の本拠地に集合する途中奇襲を受けてこの有り様。勝てば官軍、負ければ賊軍とはよく言った物です。船を失ってからは各地を転々としてこの紫国に辿りつきました」
「ふむ、じゃあこの付近に巨人が現れると言う噂は」
マサカリのと問いにユウは答える。
「はい、私の弟の事でしょう。御覧の通りこの巨体で隠密行動には向きませんが兵士全体が手負いの今まともに動けるのはこいつだけで・・・」
「食糧の調達の為に山中駈けずりまわって山菜や薬草を集めてたんだ」
「なるほど、得心がいった」
「いやもう一つ疑問がある」
「なんだテンドウ」
「貴方方は言葉は悪いが見てくれだけならただの落ち武者、その姿を見て何故近隣の住民は海賊と判断したのだろうか」
「あ、たしかに」
「それは・・・」
「すまんな、俺が一回近くの村人に遭遇した時に口止め料に幾らか金を渡した時に『俺達は海賊だ』と少し脅しちまった、多分その噂が巡り巡ってアンタ等に届いたんだろうな」
「そうだったのか」
テンドウは脱力した。無論それは軍に対する脅威となり得る可能性がグッと減った事に対する物でもあるが、実際は自分自身がこの革命と言う戦争に際して気を張り詰めていたせいか目に見える簡単な形で一つの問題が解決したことによる精神の解放によるところが大きかった。自分はこんな事に悩まされていたのか・・・と安堵に着地したのとほぼ同じタイミングでユウが改まって再び口を開いた。
「さて、テンドウ軍師殿、マサカリ将軍殿、これまでの無礼は重々承知、しかしながら我々の頼みを武士の情けと思って聞いて頂きたい」
テンドウの脳内に数多の可能性が再び芽生えて逡巡した。多分自分とこのユウは思いを共有しているだろう。
「ほう、伺いましょう」
「貴方方、紫国革命軍もとい将来の紫国正規軍と我々、元ウォー・タイプ海賊連合もとい将来の連合軍水軍と・・・」
「(やはりか・・・)」
ユウの僅かな言葉と言葉の間がテンドウには何故か長く感ぜられた。
「同盟を結んで頂きたい」
また受験生になっちまった




