六十二話
あぁ
幼い頃に様々な書物を読んだ、その中にはおとぎ話や古今東西の階段などを集めた本もあった。そんな類の本の中に巨人と言う山をも持ち上げる様な大男がいると言う記述を目にした記憶がある。幼さの割に現実を割りと把握していたテンドウはそんなものは嘘に決まっていると決めつけた。しかし成長した今目の前にその巨人がいた。流石に山を持ち上げるのは無理そうだが人間なら簡単に吹き飛ばせるくらいの怪力は持っていそうだった。
「総員戦闘準備!」
咄嗟に出た言葉は「逃げろ!」では無かった。恐らく逃げてもこの巨人は自分たちを逃がしてはくれないだろうと瞬時に判断したテンドウは思わずそう叫んだのだった。テンドウの言葉に反応した兵士たちの行動は早かった。直ぐに巨人の攻撃から距離を取り武器を構える、日頃から訓練を徹底していて良かったとテンドウは安堵する。
「こいつが山の海賊かは存ぜぬが此処で仕留める! 個人でかかるな! 必ず二人一組以上でかかれ!」
「了解!」
こういう時、テンドウは不思議と冷静になれる性格だった。即興で作戦と布陣を組み立てて部下に指示を出す。その指示通りに部下たちもジリジリと布陣につく。かくして物の三十秒もかからずに巨人包囲網のようなものが出来た。テンドウも大将としてククリナイフを構える。若干秒の膠着をきす結果となったがやがて一人の兵士が突っ込むとそれに続いて残りも勇ましく突撃していく。
「(お前さん、明らかに紫国の者じゃないな。大方もっと西方の生まれだ。その月光に照らされた金色の頭髪が物語っているよ。巨人と言われていた先入観で実物以上に見えてしまったが実際は230センチ程か・・・)」
兵士たちと交戦する巨人を観察しながらテンドウはそう分析する、そうしたところで戦況が好転する訳でも無く何の足しになるかは別として少なくともあの巨人が自分たちと同じ人間だと言う事が分かった気がした。あの巨人はかつてウォー・タイプ海賊連合と呼ばれた大海賊団の幹部、シュウである。
現実から失礼




