六十話
忙しさを言い訳にして書いていませんでしたごめんなさい
帝暦1286年の春。青の帝国の軍隊を統べる十人の大将軍は普段通り集合可能なメンバーのみでの会議を開いていた。集まったのは筆頭のツァオ、軍師の神虎、技術省長官のレンシ、海軍長官のダイダル、陸軍元帥のフェルゼンの五名である。
「して。連合軍の動きは依然読めないと来たものだ」
「そこに付いてだけどダイダル、なにか情報は掴んだかな?」
神虎はダイダルに話を振る。
「いいや。俺が復帰してから約半年間でコレと言った目立った動きは何もない。こと海の上に限って言えば静かな物だ。行方知れずのウォータイプ達の所在もまだつかめていない」
ダイダルとウォータイプ海賊連合は去年に桃海の大海原にて激突し海軍側の勝利で幕を閉じた。しかしダイダルは葬ったと言わずに行方知れずと表現したのを陸軍のフェルゼンは聞き逃さなかった。
「おい浅黒。お前新聞じゃ確かに海賊を打ち滅ぼしたって言ったじゃないか。なのにそいつらまだ生きてるように言ってるんだ」
「あらゆる可能性を考慮したうえで発言したまでだ。このご時世何が起こるかは誰にもわからないからな」
「ほおん」
「なんだフェルゼン、言いたい事でもあるのか」
「別に、筆頭。一年以上も陸軍はお預け喰らってそろそろ出番がほしいってのに来るのは会議の招集だけ。延々と浅黒と神達の話を聞くだけ。退屈でな。レンシよ、お前も退屈だよな」
「別に」
フェルゼンは翡翠色の頭髪を整えながらレンシに同意を求めるも空振りに終わった。レンシは厳密に言えば軍人で無い。『B3』のチープと同じ科学者である。十人の大将軍とは十人の軍人でなく二十年前のクーデターで青の帝国に貢献した十人の功労者とその跡継ぎたちなのである。
「大丈夫だよフェルゼン。今回の出兵は君が指揮を執るんだ」
「お、マジで?」
「標的は紫国、帝国からの協力要請を一年以上も無視し続けている以上はもう敵と見なして良い。存分に叩き潰して良いよ」
「ほう、面白い」
にわかにフェルゼンの表情が晴れたように見えた。ツァオは仕切りなおす。
「して今回の戦に際して皆に伝えたい事がある」
「ん?」
「我々はここ一年間で連合軍と幾度か刃を交えていずれも勝利して来た。今回も勝利するだろうが一つの不安要素が浮上した」
「ほう、なんだよ。言ってみろ」
ツァオを除く全員が本人に注がれる。
「今回の戦・・・裏切り者が出る」
男たちは武器を、拳を、旗を、あるいは喜びを掲げて勝鬨を上げる。軍を起こして約半年
、紫国の改革を志し屈強な若者を募って結成された革命軍は今日も又一つの砦を落とした。国の中心に位置し交通の便も良く、上から数えた方が早いと言われるほど重要な砦と言われる砦を攻め落とした、これは大きな戦果である。革命軍のリーダーのテンドウは刀を天に掲げて兵士を労う為の言葉を叫び戦いは幕を閉じた。
「これで戦いが有利に進められるなテンドウよ」
「ハイ、この隆盛の凋まぬうちに決着を着けたいですね叔父上」
「頼りにしているぞ、我が甥よ」
「ハイ」
激闘を経て誰かに「ここは廃墟です」と言っても「はいそうですか」と納得されてしまいそうなまでに傷ついた建物を掃除し、そして他ならぬ革命軍で殺したここを守っていた敵兵達を丁重に葬った時には既に日は西に沈んでいた。テンドウは仮設の兵舎で一人考え込んでいた。
「大きな戦果を得た一方で失ったものも多い・・・なにより兵士だ・・・攻め落とすのに多くの犠牲を払った・・・」
元々は武器では無く農具を手にしていたのが大半を占める軍勢であるが故に戦闘経験の浅さが実戦ででて予想よりも多くの被害を被っていた。挙兵した頃の三分の二の兵士を失っていた。
「俺の采配の甘さが拭いきれない内は無駄な被害が出続ける・・・由々しき事態だな・・・」
テンドウはバンダナを外して頭を抱えて考え込む。戦闘では無く頭脳戦が得意なテンドウにはコレしか出来ない。数えて二十六年前、テンドウは紫国の豪農の家に生を受けた。父親は浪費癖のある酒飲み、母親はそんな父親に見染められた芸者で幼い頃から遊び人の両親を見て育った反動か遊びや野蛮な行いは好まず学問に耽っていた。その優秀さを買われて国一の学校に進学し、国の貴族と机を並べて勉強に励み優秀な成績
を残し続けた。十八で卒業した後は一農家の優秀な息子から役人に身を立てた後は五年間官吏として働いた、実家では錦を飾ってくれたと大騒ぎだったが当の本人は対照的にそうでもなかった。十八のテンドウが見たのは賄賂を受け取り、汚職が蔓延する腐った政治舞台だった。幾ばくも無く官職を退き故郷に帰った後は詩人にでもなろうかと思いつつ何もせずに人生で二十六年目の春を迎えた時に転機を迎えた。
紫国の政治に不満を持っていた一部の有志の国民が挙兵したのだ。地方に住むテンドウは関係ないと無視を決め込むつもりだったがそうもいかなかった。『あなたの力を貸してほしい』とある武官が訪ねて来たのだ、その武官と言うのがテンドウの伯父のマサカリで、革命軍の参謀になってほしいと願いわざわざ挙兵地から何十キロと離れたテンドウの実家へと訪ねて来たのだ。過去に国の腐敗を目の当たりに政治に不満を抱えていたテンドウはコレに呼応して革命軍の参謀の地位に就いた。これを境に革命軍は勝利を重ねたのはもちろんテンドウの作戦が功を奏していた事は言うまでも無い。数々の戦いに勝利し今日やっと大きな砦を落とせた、これは大きな戦果と言えたが前述の悩みが拭いきれない。戦力の差は作戦で覆せても兵士の経験までは補えない。
「くっそお・・・どうすればいい・・・」
元々一人で色々と抱えやすい性格のテンドウは軍師としても波乱万丈の日々だった。なんて何時も通りお玉を抱えていると決まって来客がやって来る。
「テンドウ、邪魔するぞ?」
「あ、伯父上」
ある種占いの様な、大体下っ端の者がやって来る時は良くない報告、伯父のマサカリがやって来る時は大体良い知らせか相談に乗るためにやってくるのだ。
「また頭を抱えておるようだな。軍師はやはり多忙の様だ」
「ええ・・・まあ、連日戦続きじゃあ革命軍全員そうでしょう」
「がッはッは。そうかそうか! 疲れてるのは皆お互い様だな。あ、そうそう、実は知らせが・・・」
『良い知らせなんだろうな?』そう心の中で呟いたのとほぼ同時にマサカリは口を開いた。
「ちと表現が複雑なんだがな・・・うーむ・・・山で海賊が出たらしい」
「は?」
海賊




